5月27日日曜日、快晴これ以上ない程の晴天が見込まれる一日。4時45分に起床して朝食。キャンプ場から車を戸隠牧場入口回して登山開始。5時50分スタート地点の標高は1,192mだ。
清々しい牧場の中の登山道を歩く。
午前7時2分滑滝到着。
滑滝の手前は右手の谷からのデブリ(雪崩による雪の残骸)が沢を埋めていた。
滑滝は左岸(上流から見て左側)の鎖をつかんで登る。
約20分で「帯岩」と呼ばれている大きな岩壁に到着。ルートは写真左下辺りのステップが切ってある岩を登り、岩壁中程のバンドを左から右にトラバースするというものだ。ここは高妻山登山の一つのハイライトで、色々な登山記録を見ても「大変だった」というコメントが多い。トラバースするバンドの幅は広く岩場に慣れた人であれば、岩壁にぶら下がった鎖を頼ることなくスタスタと歩けるだろう。
ただし高度感は十分ある。岩壁をトラバースした先には小滝がありその左側を鎖を掴んで強引に登ると帯岩は終わりだ。
8時5分、一不動到着。高妻山と戸隠山を結ぶ稜線の鞍部だ。ここには避難小屋が建っているが内部は汚れているというので覗かなかった。
一不動からは起伏のある尾根を登っていく。途中の小ピークには「二釈迦」「三文殊」「四普賢」という名前がついている。左手には高妻山がキリリと引き締まった姿を見せ気持ちが良いがアップダウンの多い尾根歩きには疲れた。
9時13分 「五地蔵」到着。標高は二千メートルに2m足りない1998mだ。
次の「六弥勒」までの距離は短い。約5分だ。弥勒の頂上からは東側に向かって踏み跡がある。「弥勒新道」と呼ばれる新しい登山道だ。こちらを通るとかなり時間が短縮できるので下山にはここを通ることにしている。
弥勒付近で近付いても飛び去ろうとしないシジュウガラを見つけた。小さな羽根のようなものを加えている。高妻山には野鳥が多い。ウグイスの「ホーホケキョ」の鳴き声に時々「ピーチク」という声が混じる。
弥勒で尾根は大きく左に曲がり、ほぼ西を向く。弥勒を下りきった付近から残雪が出てきた。残雪は尾根の右側つまり北斜面に残っている。
10時17分「九勢至」到着。アイゼンの装着等に時間がかかりいま一つピッチが上がらない。景色は素晴らしい。左手には鋭い岩峰を連ねる戸隠連峰が見える。
正面はこれから登ろうとする高妻山だ。夏道は正面から右に降る尾根上についているが、雪に埋もれているところが多く今回のルートは尾根の右手をたどっていった。
私はまだアイゼンは着けないもののここでストックをピッケルに持ち替えた。これが良かった。後でアクシデントを防ぐことになった。
雪の斜面は傾斜を増してきた。私はそれまで先頭か二番手で歩いていたが、メンバーのスリップが気になったのでここで最後尾に回った。そしてほぼその直後H君がスリップして滑り落ちてきた。私はH君の下に駆け寄り、体でブロックしながらピッケルのH君の足の間に突き刺して滑落を止めた。ここは雪の急斜面はまっすぐに氷沢川まで落ちている中々危険な場所だ。傾斜は35度位だが滑り方によっては数百メートルの滑落をしそうだ。特に降りが危険なので今回の高妻山登山はここで中止とした。
時刻は11時17分。標高は2,176m。高度差170mを残しての撤退だ。写真上部が下から見た撤退地点だ。
下っていく先に観音や弥勒の小ピークが連なる。
12時5分。弥勒新道分岐点(標高1990m)。ここから急な尾根をひたすら下降。
午後2時18分牧場脇の小川を渡る(登山終了。標高1230m)。標高差760mを2時間(休憩時間を除いた正味の歩行時間)で下ったことになる。
駐車場に向かって牧場を歩いて行くと小雨がパラパラと降ってきた(すぐあがったが)。高妻山のピークを踏むことはできなかったが、中々充実した登山だった。長い尾根のアップダウンが連続する高妻山は手強い。恐らく日本百名山の中でも数本の指に入る体力を要する山である。
残雪期の山は雪の状態により、難度が大きく変わる。登山ブログの記録などと較べると今回の雪の状態は平常年のGW並みの雪が残っていたのではないか?と思っている。
来年はGWの頃にピッケル・アイゼンのフル装備で再挑戦してみたいものだ。