ファイナンシャル・タイムズによると、最近JPモルガンチェース、US Bancorp、ゴールドマンザックス、モルガンスタンレーなど大手米銀が大量の社債発行に動いている。例えばミネアポリスを拠点とするUS Bancorpは金利2.45%で10億ドルの社債を発行した。5年の米国債の流通利回りは1.7%程度なので、スプレッド75BP程度での起債だが、金利の絶対水準で見ると銀行が発行した債券としては史上最低レベルだ。
米銀は歴史的な低金利を利用して、固定金利で資金調達することができた訳だが、FTは「最近の債券発行はファンドマネージャーからの非公式なreverse inquiriesが引き金になった」という証券業界の幹部のコメントを紹介している。Reverse inquiries逆紹介とは、投資家が資金運用のため発行体に起債を促す行為を指す。米国の投資家が大手銀行の社債に投資意欲を示したことは幾つかのことを示唆している。
第一に投資家が米国経済の低成長と低金利がかなり持続すると判断していることだ。次に金融改革法の成立と銀行の堅調な業績発表により、投資家が金融セクターに自信深めてきたということだ。次に低金利の資金調達が可能になったことで米銀の業績回復が更に進むと考えられる。
ムーディーズのアナリストは米銀は今年満期を迎える3,720億ドルの債務の内2,000億ドルをすでにリファイナンスしていると推定している。一方欧州では今年期日を迎える4,500億ユーロの内、4割しかリファイナンスが進んでいないとアナリストは見ている。
もっとも欧州でも銀行のストレステストの結果、改善の兆しは見えている。スペイン第二の銀行BBVAは今年4月以降始めて社債を発行した。
☆ ☆ ☆
FTはモルガンスタンレーのグレゴリー・ピーター氏の「資金を必要としない銀行は起債することができる。しかし資金を必要とするより小さな銀行は恐らく起債することができないだろう」という言葉を紹介して記事を結んでいる。
毒舌と機知で人気があったコメディアンBob HopeはA bank is a place that will lend you money if yo can prove that you don't need itと言っている。「銀行とはあなたがお金を必要としないことを証明できるならお金を貸してくれる場所である。
度重なる金融危機を経て今では銀行もまたお金が必要でないことを証明しないと資金を調達できなくなったということだろうか?
これでは中々信用収縮は回復しないだろう。我々も低成長が更に続くことを前提に生活設計と投資戦略を立てるべきということだろうか?