「今年後半のリスクは投資家が欧州から米国地方債へ注意を振り向けることだ」とクレディ・スイス証券のRobert Parkerシニア・アドバイザーは述べたとファイナンシャル・タイムズは報じている。
動揺が一番激しいのはBuild America Bonds (Babs)と呼ばれる1千億ドル規模の課税債券だ。米国の地方公共団体は伝統的に免税債券により、資金調達を行ってきた。しかし今回のリセッションで免税債券による資金調達が困難になってきたので、2009年に政府はアメリカ復興・再投資法の一環としてBabsを導入した。これは利払いの35%に相当する金額を政府が補助するというもので、このスキームにより、事業債の投資家を地方公共債マーケットに引き込むというものだ。
だが事業債の投資家は伝統的な免税債券の投資家とは異なり、デフォルトリスクに対して敏感である。その結果財政状況が悪化している米国地方債の利回りが上昇し始めている。バークレイズ・キャピタルのインデックスによると、5月始めに米国債比161bpだったスプレッドは228bpに上昇している。
National Conference of State Legislatureによると、7月1日から始まる新しい会計年度で米国州政府の財政赤字は890億ドルになると予想される。欧州各国が抱える財政赤字と年金赤字という問題を米国州政府も抱えるから投資家の注目がこのセクターに向かう訳だ。
米国の地方公共団体がデフォルトを起こした例はほとんどないとはいえ、投資家は神経質になっている。
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街を歩いていると参院選で走り回る候補者の連呼が耳に入る。中には声高に「消費税引き上げ反対」を叫ぶ声もある。「引き上げる消費税の使い道をはっきりさせろ」という声も聞こえる。
だが小難しい理屈やお題目のような増税反対を唱える前に、常識的でかつ直感的な判断が必要な時期だろうと私は考えている。
まず「世界の先進国が高い消費税を課している時代にどうして日本だけ5%の消費税でやっていけるのか?」という常識的直感が必要だ。今まで5%でやってこれたのは単に借金をして収支を合わせてきたに過ぎないのだ。その結果GDPの2倍まで借金は膨れ上がってしまった。この借金は政府の冗費の削減で追いつく規模ではない(無論冗費は削減しなければならないが)。
「消費税の使い道をはっきりさせろ」という主張はどうだろうか?これは家計に例えると債務過剰に陥っている家で、新しい収入の道が見つけた時、それを何に使おうか?と議論するようなものだ。無論「入るを図って出るを制する」家計と「出るを図って入りを制する」国家の財政を同一レベルで論じることはできないことは承知しているが、国の借金もここまで膨らむと「借金削減」を第一に考えるべきなのだろう。
さもないと後世の経済史家は「欧州で始まった国家の財政破綻騒動は米国の地方公共団体に飛び火し最後は日本の国債問題に火をつけた」と述べるかもしれないと私は懸念している。