パレスホテル東京に泊まった翌朝、皇居東御苑に足を運んだ。
その日は日曜だったせいか、ジョギングやサイクリングを楽しむ人も多く、切れ目を待って門に行く。
お濠の白鳥が愛らしい。
入場は無料だが、券の代わりに札を渡される。
退園時には、これを返すシステムになっているらしい。
園内には警官の姿も目立ち、普通の庭園ではないことがわかる。
入口からすぐのところに、宮内庁三の丸尚蔵館があった。どうやら、「珍品ものがたり」という展示をしているようだ。「入場無料」の文字が目につく。
ちょっと覗いてみるかという程度の気持ちで、何の期待もせずに入ってみた。ところが、この展示、仰天するような作品ばかりだったのだ。
「ねえ、お母さん。あの絵、社会の教科書に載ってたよ」
娘が吸い寄せられるように、鎌倉時代の作品に近づく。作品名を見た。
「蒙古襲来絵詞」
※館内は写真撮影禁止のため、リーフレットからの写真です。
「あっ、載ってたかも! 見たおぼえがあるよ!!」
なぜ、こんなに著名なものが、ここにあるのだろう?
どうやら、尚蔵館を見くびっていたとわかり、展示への見方が一変した。
他にも、豊臣秀吉が禁裏の所蔵品を模した伝承がある「蔦細道蒔絵文台硯箱(つたのほそみちまきえぶんだいすずりばこ)」、大坂城の備蓄金ともいわれた「黄金分銅」、開国後に初めて使節がアメリカ合衆国に渡ったさい、ブキャナン大統領から贈られたメダルなどを見ることができる。
中でも、度肝を抜かれた作品は、「象墜(しょうつい)」という象牙の根付である。
これは、手のひらに載るくらいの小さなサイズなのに、いくつもの楼閣、880人もの人々、鳥や動物などが彫り込まれ、人間離れした精密さに言葉を失う作品である。まったく、見事としか言いようがない。
私が一番気に入ったのは、真珠王と呼ばれた御木本幸吉の「瑞鳳扇」だ。
写真がなくて残念だが、相撲の行司が持つ「軍配」を丸くしたような団扇の輪郭に、純白の真珠が並んでいて、たいそう美しい。ぜひ、ご覧になっていただきたい。
思わぬ場所で目の保養をし、館を出る。
次の見どころは、天守閣跡だ。
昔は、この上に江戸城があった。1607年に完成したというが、1657年の大火で焼失してしまった。わずか50年の命だったわけだ。
出口に向かって歩くと、「殿中でござる」でおなじみの「松の大廊下跡」があった。
何の名残もないところに、時の移り変わりを実感する。
御苑の背後には、無数の高層ビルが立ち並ぶ時代になったのだから。
「お母さん、ホテルに戻ろうよ」
「そうだね」
散歩が終わり、ホテルに到着する。
フロントに続く通路の外壁を見て、私は思わず笑ってしまった。
「天守閣跡とおんなじ~!」
「ホントだ、おんなじ~!」
ここは、現代の江戸パレスなのである。
わずか一泊、都内の小旅行だったが、前日の花火見物に引き続き、皇居東御苑を散策し、とても充実した時間となった。
夏の旅行は、これですませてしまいたい。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
その日は日曜だったせいか、ジョギングやサイクリングを楽しむ人も多く、切れ目を待って門に行く。
お濠の白鳥が愛らしい。
入場は無料だが、券の代わりに札を渡される。
退園時には、これを返すシステムになっているらしい。
園内には警官の姿も目立ち、普通の庭園ではないことがわかる。
入口からすぐのところに、宮内庁三の丸尚蔵館があった。どうやら、「珍品ものがたり」という展示をしているようだ。「入場無料」の文字が目につく。
ちょっと覗いてみるかという程度の気持ちで、何の期待もせずに入ってみた。ところが、この展示、仰天するような作品ばかりだったのだ。
「ねえ、お母さん。あの絵、社会の教科書に載ってたよ」
娘が吸い寄せられるように、鎌倉時代の作品に近づく。作品名を見た。
「蒙古襲来絵詞」
※館内は写真撮影禁止のため、リーフレットからの写真です。
「あっ、載ってたかも! 見たおぼえがあるよ!!」
なぜ、こんなに著名なものが、ここにあるのだろう?
どうやら、尚蔵館を見くびっていたとわかり、展示への見方が一変した。
他にも、豊臣秀吉が禁裏の所蔵品を模した伝承がある「蔦細道蒔絵文台硯箱(つたのほそみちまきえぶんだいすずりばこ)」、大坂城の備蓄金ともいわれた「黄金分銅」、開国後に初めて使節がアメリカ合衆国に渡ったさい、ブキャナン大統領から贈られたメダルなどを見ることができる。
中でも、度肝を抜かれた作品は、「象墜(しょうつい)」という象牙の根付である。
これは、手のひらに載るくらいの小さなサイズなのに、いくつもの楼閣、880人もの人々、鳥や動物などが彫り込まれ、人間離れした精密さに言葉を失う作品である。まったく、見事としか言いようがない。
私が一番気に入ったのは、真珠王と呼ばれた御木本幸吉の「瑞鳳扇」だ。
写真がなくて残念だが、相撲の行司が持つ「軍配」を丸くしたような団扇の輪郭に、純白の真珠が並んでいて、たいそう美しい。ぜひ、ご覧になっていただきたい。
思わぬ場所で目の保養をし、館を出る。
次の見どころは、天守閣跡だ。
昔は、この上に江戸城があった。1607年に完成したというが、1657年の大火で焼失してしまった。わずか50年の命だったわけだ。
出口に向かって歩くと、「殿中でござる」でおなじみの「松の大廊下跡」があった。
何の名残もないところに、時の移り変わりを実感する。
御苑の背後には、無数の高層ビルが立ち並ぶ時代になったのだから。
「お母さん、ホテルに戻ろうよ」
「そうだね」
散歩が終わり、ホテルに到着する。
フロントに続く通路の外壁を見て、私は思わず笑ってしまった。
「天守閣跡とおんなじ~!」
「ホントだ、おんなじ~!」
ここは、現代の江戸パレスなのである。
わずか一泊、都内の小旅行だったが、前日の花火見物に引き続き、皇居東御苑を散策し、とても充実した時間となった。
夏の旅行は、これですませてしまいたい。
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)