昨年7月に拉致、いや、採集してきたクロベンケイガニを、本羽田干潟に返すことにした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/34/7f1ce070cc8802e04f67e7aab0a1c8fb.jpg)
「由里子ちゃん主演の『美丘』見てたらさ、自由にしてあげないと可哀想だってわかった」
絶対返さないと主張していた娘も、テレビドラマの影響で、放す気になったらしい。このチャンスを逃す手はないだろう。
実に、13カ月もの間、クロベンケイガニは我が家にいたわけだが、興味深い生態がわかって面白かった。脱皮すること、ハサミでエサをつまんで食べること、ハサミは再生されること、穴を掘ることなどだ。元気なうちに、生まれ育った場所に戻してやらねば。
電車で1時間ちょっと、京浜急行線の大鳥居駅から徒歩10分ほどの場所に、ベンケイちゃんのいた干潟がある。その日、東京の干潮は、12:29であった。干潮時刻の前後2時間以内であれば、干潟に立ち入ることができる。私と娘はベンケイちゃんを連れて、正午過ぎに干潟に着いた。
思ったとおり、見渡す限りの干潟である。素晴らしい!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/a6/b1fab3a767bcea89ffafd5986aa899b0.jpg)
しかし、ゴミの多さには閉口するばかりだ。まったく、なげかわしい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/5d/e80ceda2bf42b86e00c0a908efed690a.jpg)
風が強くて日傘は差せない。日差しは強いが、干潟は涼しい場所であった。
ベンケイちゃんをつかまえたところに行き、ケースから出してやったが、長旅で疲れたせいか、はたまた警戒しているためか、固まったまま動かない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/5d/48d46609a83580c1afe08f4c88af85b4.jpg)
「干潟の他のカニを見に行こう」
「うん、そうしよう」
ベンケイちゃんは置いておいて、私と娘は干潟の中ほどまで歩いていった。ここにはおびただしい数のカニがいて、楽しそうに生活している。人の足音に反応し、すばやく巣穴に潜っても、しばらくすればひょっこり足元に出てくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/8b/fcd1cffaea30aa55f746a6b12ac77c94.jpg)
とりわけ、私が好きなのは、カニのダンスだ。ヤマトオサガニなどが、ハサミを合わせて拍手するように動かす仕草が可愛い。あっちでもこっちでも、こぞってダンスを競っているように見える。
「面白かったね。ベンケイちゃんの様子を見てみようか」
私は娘に声をかけ、ベンケイちゃんを放した場所に戻った。
「あっ!」
そこには、クロベンケイガニが10匹近く集まっていて、どれがウチのベンケイちゃんなのかわからない。大中小と、さまざまな大きさのクロベンケイガニが姿を見せていた。だが、人の気配を察し、一斉にガササササッと藪の中に逃げこんでしまった。
「ベンケイちゃん、馴染めたみたいだね」
娘が安心したようにつぶやく。
「そうだね」
さっきまで、固まっていた様子が嘘のようだ。広い場所で思い切り駆け回っているに違いない。
さよなら、ベンケイちゃん!
元気でね。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/18/b2b19eb2db2595e3407c99e2498c999f.png)
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
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「由里子ちゃん主演の『美丘』見てたらさ、自由にしてあげないと可哀想だってわかった」
絶対返さないと主張していた娘も、テレビドラマの影響で、放す気になったらしい。このチャンスを逃す手はないだろう。
実に、13カ月もの間、クロベンケイガニは我が家にいたわけだが、興味深い生態がわかって面白かった。脱皮すること、ハサミでエサをつまんで食べること、ハサミは再生されること、穴を掘ることなどだ。元気なうちに、生まれ育った場所に戻してやらねば。
電車で1時間ちょっと、京浜急行線の大鳥居駅から徒歩10分ほどの場所に、ベンケイちゃんのいた干潟がある。その日、東京の干潮は、12:29であった。干潮時刻の前後2時間以内であれば、干潟に立ち入ることができる。私と娘はベンケイちゃんを連れて、正午過ぎに干潟に着いた。
思ったとおり、見渡す限りの干潟である。素晴らしい!
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しかし、ゴミの多さには閉口するばかりだ。まったく、なげかわしい。
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風が強くて日傘は差せない。日差しは強いが、干潟は涼しい場所であった。
ベンケイちゃんをつかまえたところに行き、ケースから出してやったが、長旅で疲れたせいか、はたまた警戒しているためか、固まったまま動かない。
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「干潟の他のカニを見に行こう」
「うん、そうしよう」
ベンケイちゃんは置いておいて、私と娘は干潟の中ほどまで歩いていった。ここにはおびただしい数のカニがいて、楽しそうに生活している。人の足音に反応し、すばやく巣穴に潜っても、しばらくすればひょっこり足元に出てくる。
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とりわけ、私が好きなのは、カニのダンスだ。ヤマトオサガニなどが、ハサミを合わせて拍手するように動かす仕草が可愛い。あっちでもこっちでも、こぞってダンスを競っているように見える。
「面白かったね。ベンケイちゃんの様子を見てみようか」
私は娘に声をかけ、ベンケイちゃんを放した場所に戻った。
「あっ!」
そこには、クロベンケイガニが10匹近く集まっていて、どれがウチのベンケイちゃんなのかわからない。大中小と、さまざまな大きさのクロベンケイガニが姿を見せていた。だが、人の気配を察し、一斉にガササササッと藪の中に逃げこんでしまった。
「ベンケイちゃん、馴染めたみたいだね」
娘が安心したようにつぶやく。
「そうだね」
さっきまで、固まっていた様子が嘘のようだ。広い場所で思い切り駆け回っているに違いない。
さよなら、ベンケイちゃん!
元気でね。
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