<東京新聞報道記事>
他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案に関する衆院特別委員会は六日、地方では初めての参考人質疑を那覇市、さいたま市でそれぞれ行った。那覇市では与党推薦の参考人二人が法案に賛成する一方、国民の理解が深まっていないとして慎重な審議を求めた。さいたま市でも、与党推薦の二人が法案は分かりにくいと指摘。来週中にも法案の衆院通過を目指す政府・与党の姿勢に対し、賛同者からも丁寧な説明を尽くすよう注文が付いた。
参考人は両市で五人ずつ出席した。那覇市では、与党推薦の中山義隆石垣市長が市内にある尖閣諸島沖で中国公船による領海侵入が繰り返されている現状を説明し、離島防衛強化の必要性を訴えた。同時に「法案に対する国民の理解が深まっていない。慎重にも慎重を期した議論をし、成立させることを求める」と述べた。
もう一人の与党推薦の古謝景春(こじゃけいしゅん)・南城(なんじょう)市長は、政府が集団的自衛権の行使は自国防衛目的に限ると説明していることに賛意を表明。時の政権が拡大解釈する懸念も指摘し、十分な国会審議を通じて国民の不安を払拭(ふっしょく)するよう要請した。
野党推薦の稲嶺進名護市長、大田昌秀元沖縄県知事、地元紙・琉球新報の高嶺朝一(たかみねともかず)前社長は、いずれも廃案を要求。多くの犠牲者を出した沖縄戦や、基地負担を強いられてきた戦後の沖縄の歴史を踏まえ、周辺国との関係改善に向け外交努力の優先を訴えた。
与党の国会運営は「世論をけむに巻いて、知らず知らずのうちに(成立を)狙っているのではないか」(稲嶺氏)と批判した。
さいたま市の質疑では、いずれも与党推薦の佐伯鋼兵埼玉県商工会議所連合会長、細谷雄一慶応大教授が安保法案の必要性を強調。その上で、両氏とも法案を「分かりにくい」と述べ、政府に一層の説明を求めた。
野党が推薦した弁護士三人は、集団的自衛権の行使容認を含む法案は違憲だとそろって批判した。
沖縄での参考人質疑は、野党が米軍基地が集中し、安保法案と関係が深いとして提案。与党は東日本での開催を求め、さいたま市での質疑が決まった。