昨年、12月に相談があった茶白君のことをご紹介しようと思います。
以前から地域の野良猫の手術や子猫の里親探しに
積極的に関わっているIさんからの相談でした。
相談内容は、疥癬(カイセン)でガリガリで、
痒がっててなかなか体重が増えない猫を保護しましたが
何かできることはないでしょうかというものでした。
すでに病院は受診済みで、先生からアドバイスももらっていました。
このところ皮膚病の相談がとても多くてびっくりします。
疥癬は、ヒゼンダニの寄生による皮膚病で、相当な痒みを伴います。
早く治してあげないと、掻きむしったりして傷が化膿しますし
相当なストレスも伴いますから、いずれ命を落とすことになります。
ただ、お薬をつければすぐに治るものではなく、時間は必要です。
痒みのあるうちは、食欲も落ちるかもしれません。
どこで保護したのかも聞いてみたところ
近くのお寺の裏にこの猫と子猫がいたそうです。
見つけたご友人は子猫だけを保護し、
誰がつけたのかわからないノミ取り首輪が
首にめりこんだ茶白君は捕まえられずにそのままに。
確認してきてほしいと頼まれたIさんは、その場所に行ってみたそうです。
病気と怪我、痩せ細った茶白君を探し出し
運よく保護できたそうです。
すぐにかかりつけの獣医さんに連れて行き、事情を説明したところ、
めりこんだ首輪を切断し、首の皮を縫う手術を
してくださったそうです。
去勢手術と、疥癬の治療も同時にしてくださっています。
あとは時間をかけてゆっくり回復を待つ以外ありません。
他の飼い猫たちもいるので、退院後はケージの中で
安静、隔離を目的として過ごさせてくれていました。
ひと月過ぎて、体重も1キロも増えて毛も生えてきましたと
嬉しいご報告をいただきました。
お名前は【天くん】。
自宅に迎え入れることを最初に少しだけ渋っていたご主人が
つけてくれたそうです。
元々Iさんは友人に頼まれて探しに行った経緯もありますから
すんなり納得はできないご主人の気持ちもわかります。
怪我の治療、疥癬の治療が必要なはげた猫。
それを見て、うちには入れたくないと考える人もいます。
これじゃ保護してあげるしかないよねと思う人もいます。
ご主人は後者、Iさんの気持ちを汲み取ってくれる方だったようで
7匹目の家の子だねと言ってくれたんだそうです。
実はこの話になる前に、Iさんご夫妻には保護を考えていた別の猫がいました。
ご主人の仕事場に現れるさび猫です。
やはり疥癬に苦しんでいて、体ははげはげだったようです。
名前も、仕事場で【葵ちゃん】と呼んでいたそうですが、
保護をためらった・・・・そうです。
ご主人がやっとその気になり、
まさにIさんが捕まえに行くはずの日の朝
冷たくなった姿で発見されたそうです。
葵ちゃんのことがあった翌日だったため、
Iさんは疥癬で苦しむ天くんを、どうしても助けたかったそうです。
亡くなっていた葵ちゃんも疥癬猫。
『自分の代わりに助けてあげて』と
Iさん夫婦にメッセージを送っていたのかもしれません。
逝ってしまった命はどうすることもできません。
人はそんなとき、後悔したり哀しんだり
様々な想いを抱くものです。
葵ちゃんにやってあげられなかった分も、
おふたりは天くんのために心を砕いていくのだと思います。
天くんを家で迎える決心をするのは、簡単ではなかったと思います。
でも葵ちゃんがいてくれたから、繫がりました。
天くん、本当に良かったね。
おめでとう。
末永くしあわせにね。
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疥癬治療は、添付するタイプのお薬と、
触れない野良猫気質の厳しい猫には
飲み薬で治療する方法があります。
その時々の状況にもよりますが、できることなら
ぜひ治療してあげてもらいたいと思います。
近隣で暮らす、他の動物たち(人間も含みます)にも
うつってしまうことがあります。
罹患した猫たちは痒みが厳しくつらい状態で過ごしています。