堺北民主商工会

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未来志向

2008年02月22日 09時28分05秒 | 世間の話
フランスは現在、人口6000万人の国。先進資本主義国の1つであるが、1昨年(2006年)の出生数が83万人、出生率 2.0%を突破し、少子化傾向に歯止めを掛けた(因みに昨年(2007年)は出生数81万人、出生率1.98%でアイルランドと並び、高位)。しかし、この事を実現する事が出来たのも単に小手先だけの取組みでは決してない。10年以上に亘る国全体の取組み(努力)があって実現出来たものである。
 少子化傾向にストップを掛けられた要因の1つが政府・自治体などによる手厚い育児支援策にある。例えば第2子目を出産すると乳幼児手当や育児手当、教育手当などが国から支給され、3人の子供を養っている家族の場合その合計額は1ヶ月135,000円にもなる。更に、「大家族カード」が国から発行され、遊園地・映画館・美術館などの入場料が格安になる。家族5人(両親と子供3人)で映画を観ても日本円で1,100円程度のもの。又、税金面でも優遇措置があり、子育てを支援する仕組みが出来ている。これらの育児支援に国が注ぎ込んでいる予算は日本の3.7倍にも上り、もしフランス並みの育児支援策を日本が実施するとしたら10兆円6,000億円を要する。
 更にフランスでは社会で働く環境や制度が整っている。例えば若い夫婦が共働きをする場合、フランスには「保育ママ」と言う制度がある。保育ママは保育士の資格を持っていなくても政府による60時間程度の研修と適格かどうかの面接をパスすれば誰でもがその職業に付く事が出来る。保育は主に保育ママの自宅を使う事が多く、それ故、家庭的な環境で我が子同然のそれでいて他人の子供を預かるがために注意深く保育が成される。だから、仕事帰りのお父さんが我が子を連れ帰るために迎えに来ても保育ママから別れるのが嫌だと園児は泣きじゃくる有様だ。
 又、「親保育園」と言う保育所も有り、ここでは幼児を預かる親たちが週1回は保育士と一緒に保育を手伝う。その訳は「子供(子育て)は親の生き甲斐、子育てに責任を持つ」と言う考えの下、子育てを地域で支えるためだ。しかも保育士が毎日、どのような保育をしているかを両親が観察でき、自宅以外での我が子の様子も見て取る事が出来ると言う一石二鳥の制度である。
 しかし、以上のような育児制度が実現出来ているのもフランスでは働く労働者の勤務条件が整っているからに他ならない。世界的石油会社の1つであるトタル(TOTAL)のパリ本社には8000人の会社員が働いているが、その内25%は女性である。この会社には保育園が備わっていて朝7時から夜8時まで子供を保育している。しかも、保育料は公立並みで非常に安い。それは保育園の運営費の60%をこの会社が負担しているからだ。日本でも企業内保育園は増えつつあるが、このような保育園はフランス企業の戦略でもある。つまり、女性が大いに社会進出を果たし、その力を最大限に発揮出来るように育児に要する時間を企業が出来る限り保障する。企業にとっては女性が欠かせない労働力商品なのである。
 週35時間労働制度のフランスでは労働者の権利を保障する労働政策が他の資本主義国と比べ、優れているのも事実である。それ故、フランスは子育てに要する費用の60%を企業が負担し、21%を国が支払っていると言う他の資本主義国には類を見ない国である。だから、フランスでは子育てに携わる父親が多い。
 企業の声…「こんなに負担が大きいフランスでは企業経営が難しい」と苦言が出ているのも事実である。
 国の声…「週35時間しか働かない国では国際競争力に勝ち抜けない」と公言する。
 昨年、フランスの大統領となったサルコジは「福祉制度の見直しと労働者の働く権利を制限する」ような発言をし始めた。
 今、フランスの若い夫婦の間では「子育て」が苦しいとは誰も言わない。反対に「子育て」が楽しい、生き甲斐があると口を揃えて言う。このフランスの若い夫婦の子育て姿は必ず、次世代にも受け伝えられるに違いない!
 未来志向で考えるのであればフランスの育児制度は維持、発展させるべきではあるまいか。