堺北民主商工会

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独裁者

2006年11月17日 12時52分56秒 | 平和運動
 今から66年前の1940年、「独裁者(原題=The Great Dictator)」という映画が作られた。この映画の製作者は世界の喜劇王と言われるチャールズ・チャップリンである。彼は脚本家であり、主演者であり、監督でもあるオールラウンドプレーヤー。当時、ドイツ帝国の独裁者であったアドルフ・ヒットラーは武力によってオーストリアを併合し、隣国のフランスの首都パリも陥落させた。そして第2次世界大戦で野蛮な独裁者はユダヤ人を何百万人も残虐に殺害した。この独裁者ヒットラーに対し、チャップリンは猛然と映画によって抗議した-その映画こそが「独裁者」である。
 映画はヒットラーを演ずるヒンケルとユダヤ人の理髪師との物語。ひょんな事から独裁者ヒンケルと理髪師が入れ替わる。そして、入れ替わった独裁者(ヒンケル)が大広場に集まった軍隊を前にして高台から熱狂的な演説を始める。チャップリンはこのシーンを初めは大広場で兵隊同士が仲良く、手を取り合ってダンスを踊り出す演出で「平和」を描き出そうとした。しかし、熟慮に熟慮を重ね、最後のこの場面を6分間にも及ぶ独裁者ヒンケルの演説とした。「世界平和」と「人類愛」を呼び掛けたこの有名な演説は今、聞いても心にジーンと響くセリフである。セリフの最後、愛するハンナに優しく、包み込むように平和を切々と呼び掛け、戦争の終結を告げる。あの狂気的な独裁者ヒットラーが全く、正反対の「平和アピール」演説を演じると言うチャップリンならではの見事な最後のシーンである。
 当時、この映画の製作、上演において当事国アメリカは元より全世界から激しい攻撃をチャップリンは受けた。右翼からは「共産主義者」のレッテルを貼られ、左翼からも「センチメンタルすぎる」とか「きれいにまとめ過ぎ」だとか言われ、悪評であった。しかし、彼が「反共法」を口実にアメリカから国外追放された後、彼の映画が見直され、その真価が評価された。この「独裁者」という作品こそ、チャップリンが全世界の人々に最も訴えたかった映画ではなかろうか。
 歴史は繰り返すと言われる事がある。「教育基本法」が改悪され、「愛国心」を上(国)から強要され、「平和憲法の9条も改憲」され、軍事力を増大していく日本が危惧される。こんなシナリオが進行したら、「美しい国・日本」がどんどんと遠ざかる。
 チャップリンは決して「戦争の世界」は喜ばない!
現在を生きる私達は平和を愛する彼の遺志を絶対に忘れる事なく、引き継いでいく責任を負っているのではないだろうか。
それにしてもチャップリンの名作「独裁者」を今、一見する価値はある。