VIII.黄色の部屋(虹の世界) D112.サーカスの大スター・セール ![]() 「大ダコ・セールは海の正義の味方さ」 カールは大ダコ・セールの物まねをした。結構、カールとユリカはいいコンビになっている。同じ目的を持つといいコンビになれるものなのだろうかと、カールは思った。 風船は、よく売れた。大ダコのセールは子供たちに人気があるからだ。 大ダコ・セールの水晶の剣(クリスタル・ソード)というのもよく売れた。 親に買ってもらって、それを受け取ると、 「海の正義の味方、大ダコ・セール様だぞ」 子供たちは大威張りである。 「おじょうちゃん、風船売りはもういいよ。みんな、ショーをみるだろうからね。さあさあ、ショーをみなよ」 猛獣使いのピエロは、10ポイントをわたしてくれた。 「ありがとう」 二人は駆けだして行った。 「こっちこそ、風船まで売ってくれて、すまんな」 猛獣使いのピエロは手をあげた。Vサインをしていた。 ユリカは、振り返って、 「どういたしまして。わたしこそ助かったわ」 と大人じみた口調で言った。 「わぁ、サーカスが二百年ぶりに見られる」 カールは、うれしそうだった。 ユリカは二百年ぶりなんて、大袈裟なことを言うと思った。でも、本当はカールは魔法使いディスカールであるから、その通りなのである。 ユリカは、ヤスやチャボもこんな大袈裟なことを言うのが好きだったと思い出していた。100円のオツリを100万円だなんていうのである。景気がよくって楽しいことだって、ヤスは話していた。 「さきに、着替えるわよ」 ユリカは言い更衣室に入った。 カールは更衣室の前でユリカを待っていてくれた。 「もう、はじまっているよ」 カールはあわてて、大きなテントの中に入って行った。 ユリカもあとに続いた。熱帯魚たちがダンスを踊っていた。よくみれば、魚たちのマス体操だった。大ダコのセールがいて、水晶の剣を振り回して、魚たちをカラフルにしていた。赤だの黄色だの、さまざまな色が鮮やかに見える。魚たちはマス体操で、宇宙に行くスペースシャトルや恐竜のチラノザウルスをつくりだしていた。 黄色しかしらない世界の人たちは、驚きでいっぱいだった。これなら、セールが大スターになるのは当然だわとユリカは思った。 「本当の海でも、小さな魚たちは群れをつくり、大きな生き物のように見せかけているんだよ。でも、これほど、見事じゃないがね」 とカールは感激している。 次はスナメリの火の輪くぐりだった。青色の世界でユリカたちを助けてくれたスナメリくんだとユリカたちは思った。スナメリはさまざまな曲芸を見せてくれた。でも、水のなかでどうして火が燃えているのかしらとユリカは悩んだ。でも、この世界では、水の中でも息ができるんだから、火も水中で燃えても当然のように思えた。 サーカスの最後のだしもの、それはサーカスの最大のスターである大ダコのセールであった。セールは、いろんな楽器をひとりだけで演奏していた。それもそのはず、セールには手足が合わせて八本もあるのである。あまりにも見事な演奏である。
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