あかねさんシリーズ002 男が女de女が男 091 マインド・ウイルス 「マインド・コントロールという考え方を一歩すすめたものに、マインド・ウイルスという考え方がござるよ。マインド・ウイルスとは、病原菌のように考えが入ってきて、その心を病巣にしてしまうのでござるよ」 「つまり、ここの世界の女性は悪性の感冒にかかっているというわけかなあー」 「いいえ、それは男性の方でござるよ」 「そうなのか? どういうことだ」 「つまり、男も女も人間であるということでござるよ。それを忘れた人が病気だと拙者は思うのでござるよ」 「その通りだろうなあー。男にも女にもそういう人物がいるだろう。そして、この世界では男性のほうが多いというわけだね」 「進化論のなかに、おもしろいことをいう学者がいるでござるよ。キリンの首が長くなったのは、キリンの首を長くする病気がはやったというんでござる。つまり、ウイルスによって、キリンは病気になって、長い首になったというでござる。そう考えるのは、キリンの首は長いものか、それ以前の短いのかであって、中間がいないことから、そう考えている学者がいるんでござるよ」 「そうか、つまり、オカネスキーはマインド・ウイルスによって、それが人間の精神世界で広がった。マインド・ウイルスによるってことを言いたいわけだね」 「そうでござるよ。ウイルスはインフルエンザなどの肉体だけとは限らぬでござる。困ったことに心の世界では身勝手な思い込みで、好き勝手ができると思ってしまうこと……。キリンの首のように、現実には何一つもかわってもいないのに、変わったと思えるのでござる……」 「マインド・ウイルスか。まったく、心にも病気があるってことを、われわれは考えなさすぎたというわけだね」 「そうかもしれませぬ」 「あはは……、かたじけない」 男らしい茜はそういって笑った。 「いじめというのが、子供たちの間ではやっているのもマインド・ウイルスでござるよ」 「大人にも重態の患者がいると思うよ」 「そうでござるなあー。あはは……」 オカネスキーもまるで侍のように笑った。 「ところで、オカネスキーは、日本の武士が好きで、日本に来たんだろう」 茜の世界のオカネスキーは違うが……。 「そうでござるよ。立派な武士は人生についても考えてござるよ。禅は素晴らしい精神修養でござるよ。日本人はこんないいものを忘れてしまって、物質文明にすっかり、犯されているでござるよ。外国人で、カトリックの僧侶でさえも、日本の禅を学んでいるという時代に日本人は日本の素晴らしい伝統の一つをすっかり忘れているでござるよ、悲しいことでござるよ」 「そうか、日本人、今の日本人はこちらの世界でも、物質文明というマインド・ウイルスに犯されているというわけだね。うんざりだね、まったく」
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