磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

鱧男の小説などをUP。環境問題に戦争・原発を!環境問題解決に民主主義は不可欠!

16.下駄隠し

2005年06月23日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



二、漢方薬

16.下駄隠し





 アパートの本館の西側で子どもたちは集まって、それぞれ話を楽しんでいる。
「あっ、雄二、新品の靴はいっているやん」
「そうや、もっと早く新しいのにしたかったんやけど、雨ふっとたからなあー」
「雨ふってきたら、靴抱いて裸足で歩いたらよかったのに」
「そんなアホなあー。なんのために靴はくかわからへんやん」

「ひさしぶりに、地面濡れてへんから、下駄隠しせえへんか」
 幸江がみんなに呼びかけた。
「うん、するする」
 幸江が鬼を決めることになる。
 参加する者は靴を片方、幸江の前に並べる。

 そして、幸江は左端の靴の上に指をおき歌いはじめる。
「♪下駄かくし、ちゅうねんぼう。
はしりの下のねずみは草履をくわえてちゅちゅくちゅう。
ちゅくちゅく饅頭はだれがくた。
だれも食わない、わしがくた。
表の看板、三味線屋うらからまわて三軒目」

 歌詞を一文字歌うごとに、指をひとつ動かす。
 おしまいの言葉でとまった靴の持ち主には靴が手元に戻される。
 最後まで残った靴の持ち主が鬼になる。

 鬼を決めるためには、この歌を何回も歌うこととなる。
 鉄ちゃんや吉坊は楽しそうに聴いている。そして一緒に歌いだす。

 また、普通は一回で鬼を決める。その時は、最初に選ばれた靴の人が鬼になるのである。
 雄二らはこの歌が好きで、歌いたいからと、最後まで残った靴の持ち主が鬼となった。

 鬼は幸江になった。
 ほかの子どもたちは、靴をかくし終わるとけんけんをして幸江を待つ。

 池山は靴底の泥を、ぽんぽんと叩いて、ズボンの後ろのポケットにはさんだ。
 雄二は、池山はいい隠し場所を見つけたなとうらやましく思った。

「百!」
 幸江の声だった。

 雄二は、隠せなかったけど、見つかってはたいへんと思い、けんけんをした。
 でも、両方の足に靴をはいているのは、やっぱり雄二だけだった。

 幸江は、この中で最上級生だけあって、雄二と池山の靴以外はすぐに見つけた。
 池山が見つからないのは仕方ないけど、隠すのを忘れたぼくが見つからないのは、吹き出しそうになるほどおかしかった。

 恭子が池山の靴の隠し場所を見つけ、吉坊に教えている。
 二人も笑いを押し殺している。

「なぁ、二人とも、隠す場所の範囲、ちゃんと守っている? 遠い所は」
「わかっているって、アパートの敷地内だよ」
 池山はドングリみたいな顔を揺らした。みんなも笑った。

「雄二も、そうか」
「そんなもんや」

「ものすごく近くよ」
 恭子は幸江にヒントを出した。
「いらんこと言うな」
 池山はすかさず注意する。

「ほんま。隠せるような所、みんな探したと思うけど」
「すぐ近くだよ」
 と他の子どもたちはヒントを出す。

「いらんこと言わなくてもええのに」
 池山は迷惑そうな顔をした。
「あー、あー。わからん、わからん」
 幸江は何回もおなじ場所を調べる。

「幸江ちゃん、もう降参した方がええで」
「いやよ。なんか、おかしいな。みんな、変に笑うし」

「そうか」
 と言いながら、池山は幸江に背中を見られないように、ピョンピョンと跳びはねて方向をかえる。
 鬼の幸江に靴を見つけられないようにしているのである。

 だいぶ幸江は歩いて、本館の共同炊事場の所まで来た。雄二らも幸江の後ろについて行く。でも、けんけんなので、なかなか追いつかない。

「恭子ちゃん、やっぱり、ここから遠いところ」
 幸江は恭子にヒントを求めた。
「近く、ものすごく近く」
「いらんこと言うなよ」
 池山はむくれている。

 幸江は顎に手をおいて考えこんだ。
「さっきも、近く、今も近く、これは……」
 顎から手が離れると、幸江は大きな声で、
「池山! 後ろ、見せてみいー」
 と命令した。

「知らんな」
 池山は必死に跳びはねる。
「わかった。背中に隠しているな」
 そう言うと全速力で池山の背中側に回った。

「池山、見つけた」
 幸江の足は、雄二よりも早い。池山は発見されて、悔しそうであるが、これだけ手こずらせたので、満足そうでもあった。

「雄二もそうやろ」
 幸江は雄二の後ろに行く。
 池田の肩をもち、雄二は右足を前に出した。池田は雄二の顔を見て、表情がくずれた。
「背中にないな」
 幸江は不思議そうだ。

 みんなが笑った。腕組みをして考える幸江。それから幸江は手を打って、お腹をかかえて笑った。
「ああー、雄二、靴はいたまんまやないの」
「灯台もと暗しや」
 池山も大笑いした。





↓1日1回クリックお願いいたします。

ありがとうございます。





もくじ[メリー!地蔵盆]


さがしていたHp発見(^^)

2005年06月23日 | 読書日記など
昨年あれほど捜しても発見できなかった、
『京都路地裏かわら版』を発見。

ぼくが小さなころいた京都を感じることが
できるホームページです。
場所も京都市左京区を中心にしておられます。



古い茶箱のプレゼントもあるようです。
宅配便で集配というのを頼んだら、
けっこう観光でいかれた方も、
何とかできるかもしれませんね。
問題は梱包と、サイズだと思います。
茶箱は着物を保存するのにもええと聞いたことがあります。

渋い京都もなかなかいいものです。


何かジョン・レノンのことも書きたくなってきました。
ジョン・レノンは、小野洋子さんに歌舞伎につれられて
いきました。
派手な演目には興味を示さず、地唄舞で感涙したそうです。
また、これは後日。

ジョン・レノンも京都好きでしたが、
彼も渋い京都が好きだったのでしょうね。