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4.教会

2005年06月11日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



一、出会い

4.教会







 日曜日、雄二はジョンさんとカトリックの教会へ行く。池山は金儲けをすると話していた。きっと、空き瓶を拾いに行ったのだろう。幸江は家族とデパートに行った。
 教会はテレビドラマに出てきそうな建物だった。

 外国人の神父さんが礼拝堂の前に立ち、来る人ごとに挨拶をしていた。
「こんにちは、よく来てくれはりました」
 ジョンさんと神父さんは握手していた。

「この子、雄二くんと申します。私と同じアパートの住人です」
「そうでっか、宜しくね」
 神父さんは、雄二の手を握りしめた。大きなガサガサの手で、強く握りしめるので少し痛かった。

 神父さんの手は白人らしく、まさに白という感じであった。それに、くらべて雄二の手は黄色く見える。ふだん、自分が黄色人種だなんて感じなかったのが不思議だ。いや、普段は自分の手の色が黄色なんて、思ったこともなかった。雄二が特に黄色というのではなく、それだけ白人の手は白いのだ。

「礼拝に来ることいいことです。善男善女です」
 雄二は神父さんが神主さんと同じことを言っていると思い、少し愉快な気分になった。

 神父さんから、別れて礼拝堂に進む。
「あの神父さんはフランス人です。大学の先生しておられます。何十年も日本にいるのですが、日本語の発音が変です」

 礼拝堂の中はステンド・ガラスがうすぼんやりと輝き、まるでセロファンでつくられた影絵のように美しい。赤ちゃんのイエズスを抱いた聖母マリアの像が祭壇の中央にあり、その上に十字架につけられた大人のイエズスの像があった。

 シスターが今日の式のためのプリントを渡してくれた。
「雄二、前の席に行きましょう。日本人、前の席きらいます。聖書ではうしろの席にすわりなさいと書いてありますが、ここでは関係ありません」
 ジョンさんと雄二は、真ん中よりやや前の席に座る。

 おごそかに、ミサがはじまる。
 まわりの人が立つ、ジョンさんは雄二にも立つように手でしめして、自らも起立した。座るときは、ジョンさんにあわせて雄二は座った。神社の祝詞をうけるときのように、おごそかな雰囲気である。

 そんな厳粛なミサのなかでも、やっぱり神父さんの日本語はへたくそだ。キリストが“けれすと”に聞こえる。雄二はおかしくってたまらない。

 しかし、その様子に関係なく、まわりの大人たちは熱心に話をきいており、また賛美歌を歌っていた。雄二は、知らない歌であるから、歌おうとしてもわからない。歌詞は渡してもらっても、歌うことはできない。

 そんな雄二をジョンさんは気にして、ときどき雄二の顔を見ている。
 学校の音楽の授業とちがって、歌が下手な人でも、楽しそうに歌ってもいる。音楽を習うところではなく、音楽を楽しんでいるように雄二には思えた。

 賛美歌の繰り返しの部分は歌えると思った。雄二も歌えるところは歌った。
すると、ジョンさんはうれしそうな顔をしていた。
 神社で雅楽をきくのは気持ちがいいが、みんなで歌うのは楽しい。

 雄二も神社で祝詞を受けているときのように、まじめな気持ちでいようとする。しかし、神父さんは“ケレスト!”と自信満々に話している。だれも、その神父さんにどうしてキリストと教えてあげないのだろうかと疑問に思った。

 おかしくって、たまらない。我慢していると腹が痛いくらいだ。
 でも、まわりの人が真剣な顔をしているし、この厳かな雰囲気をこわしてならないと、雄二は我慢した。

 気分を紛らわそうと思い、雄二は教会の中をながめた。何人か外国人がいた。後ろの席に日本人の男の子がいた。
 雄二とちがって蝶ネクタイで値段が高そうな服を着ていた。その男の子も笑いを堪えているようだった。雄二もおかしいので、目があったとき、お愛想笑いをした。

 ジョンさんはそんな雄二と少年を見つめて、少し微笑んだ。しかし、雄二はそのことには気がつかなかった。

 お金持ちの子はすまし顔で雄二を見て、いやな目つきで雄二の服をじろじろと見た。そして、蝶ネクタイを両手でもって、動かした。

 その子は見たこともない子で、雄二と校区も違うのだろうと思った。雄二は自分の服を見た。スーパーで買った漫画のついたティーシャツだった。蝶ネクタイの男の子は鼻をつまんで、雄二のほうに風を送る手ぶりをした。

「教会のなかでは、貧しい者も、豊かな者もありません。神様の前では、すべての人が等しいのです」
雄二には、神父さんの声がそらぞらしく聞こえた。

 聖餐式がはじまり、ジョンさんは祭壇の前に行った。雄二は信者ではないので、席に残るように言われた。

 黒人の男の人がいた。雄二と同様の服を着ていた。雄二は自分の仲間のような気がした。ジョンさんが戻ってきた。ジョンさんもやっぱり雄二の仲間だと思った。そう、思っていると、神父さんの派手な服が七五三のようにも思えた。

 ミサは終わった。礼拝堂の前にまた神父さんが立っていた。一人ひとりに握手をしていた。
「雄二くんでしたね。また、遊びに来てくだはい」と微笑んでいた。
 神父は生真面目な表情をくずさず話していた。笑わそうとはしていないようで、雄二はまた笑ってはいけないと思い堪えた。

 雄二は心の中で、これが遊びとしたら、こんなに退屈な遊びはないだろうと思った。ジョンさんと神父さんは外国語でペラペラと話していた。雄二にはさっぱりわからない。まだ、外国語のような日本語のほうがわかると思った。

 雄二とジョンさんは教会から出ていく。
「ジョンさん、なに語で話していたの」
「英語でした。神父さん、英語は上手ですよ」
 雄二は、下手であるとはいえ日本語も含めて、三カ国語をあやつる神父さんはすごいと思った。
 国語だけでも大変な雄二であった。




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