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雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

地獄変・偸盗/芥川 龍之介

2009-11-07 | 小説
≪王朝もの≫第二集。これもまた、サラッといってみよう。手前勝手に。


【偸盗(ちゅうとう)】
 この作品、芥川自身が自分の一番の悪作だと評しているようだ。「安い絵双紙」のようなもので、「いろんなトンマな嘘がある」し「性格なんぞ支離滅裂だ」とかなりの自嘲を吐いている。それにしてもこの一々のセリフがなんともグッとくるではないか。こういう作品外のところでの言い様も天才的作家ならではだと思える。
 自分としてはこの作品、かなり好きなんだけどな。兄弟愛が窺える秀作。


【地獄変】
 これも芥川文学の主軸を成す代表作ではなかろうか? 絵師「良秀」の芸術的狂気は真に空恐ろしさを感ぜざるを得ない。
 ちなみに伊坂幸太郎著『重力ピエロ』にて、この地獄変の良秀についての言葉がある。
≪実際に見ないと描けない画家なんて、想像力が足りないだけだろ≫
 と。
 たしかにな……。


【竜】
 これの面白いところは、ラストに自身を文壇に押し上げた作品【鼻】に続いてゆくところだろう。もちろん、この【竜】自体も寓話的で実に面白い。


【往生絵巻】
 戯曲的で短い作品。仏神とは縁遠い自分には少し理解しがたかった。


【藪の中】
 当時にしては意欲的な作品ではなかろうか? ある意味、現在でも充分通用するミステリだと思う。殺人事件、犯人の自白、被害者の告白、とミステリの要素たっぷりだ。しかしそこはやはり、文学作品。すべての真実は藪の中なのである。


【六の宮の姫君】
 かなり悲劇的な物語。これはほぼ原作通りに書かれたらしく芥川の手はあまり加えられていないようだ。しかし、ラストのオチは秀逸だなと思っていたら、やっぱりそこは芥川の創作だった。流石だ。


 以上、前巻よりも慣れてきたみたいで、この本はスラスラと読めた。まあ、わりと解かり易い話ばかりだったからだろうが、「芥川ファンタジー」とでもいった要素に取り込まれてきたのも事実であろう。

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