超清潔社会・衛生反仮説・共存

2011年11月23日 | 生物共存農法
2003年、東京の国立成育医療センターが、都内の企業に勤務する350人を対象にスギ花粉、家ダニなどに対してアレルギー体質かどうかの調査を行った。調査結果は、驚くべきものであった。
昭和10年代から20年代に生まれた人では、アレルギー体質の割合がおよそ40%なのに昭和30年以降に生まれた人は、アレルギー体質の人が70%から80%近くまで増えています。昭和30年頃を境に、アレルギー体質の人が倍増しているのです。

国立成育医療センターの斉藤博久博士は、ダニやスギ花粉などのアレルゲンが増えたことによって、アレルギー体質の人が全般的に増えたことは、説明できます。ただ、世代間で大きなぎゃぷが見られたことは、アレルゲンの増加だけでは、説明できないと言っています。
花粉症激増の原因は、杉の大規模植林が関係していると言われている。しかし、長い期間にわたって、似たような環境で生活していたにもかかわらず、なぜ昭和20年以前に生まれた人と30年以降に生まれた人で、これほどまでに差が出るのでしょうか。同じアレルゲンと接しても、アレルギーになりにくい人となりやすい人とがいる。いったいどこに違いがあるのでしょうか。

1989年、デヴィド・ストランカ博士らは同年同月に生まれたイギリス人1万7414名を追跡調査して花粉症発症と関係あるのは、どんな環境かについて探った。その結果、「衛生環境が良くなって乳児期に感染症が低下していることが、花粉症の増加につながっている」という驚くべき「衛生反仮説」を発表した。
解りやすく言えば、「過度に薬剤で殺菌した清潔な社会が実現したことによって乳幼児期の細菌に触れる機会が減少、その結果、免疫のバランスが崩れて、花粉症を発症する人が増えた」というものです。
アレルギーのない子の家から見つかった「エンドトキシン」と呼ばれる成分は、グラム陰性菌の細胞壁の成分であり、積極的に分泌されない毒素です。アレルギーを防ぐ可能性のある物質、エンドトキシンをたくさん浴びれば、アレルギーにならないかと言うと、そうではなく。高濃度のエンドトキシンが血液中に入ると、高熱やショック症状を引き起こすことがあるからです。

赤ちゃんの時、免疫細胞は、未熟な状態で、細菌やアレルゲンに接触していくうちに、細菌を撃退する「細菌型免疫」、アレルゲンを捕まえる「IgE型免疫」へ変化していく。この2種類の免疫細胞は、役割の違いから勢力争いを行い。乳幼児期に大量の細菌に接触すると細菌を攻撃する「細菌型免疫」が増え「IgE型免疫」が増えにくくなる。その結果大人になってダニやスギ花粉をたくさん浴びてもアレルギー反応は起こりにくくなる。
逆に、細菌が少ない清潔な環境で育つと「細菌型免疫」が少なく、「IgE型免疫」が多い状態で大人になり、ちょとした刺激にも「IgE型免疫」が過剰反応を起こしてしまう。
エンドトキシンに関しても同じことが起こります。

乳幼児期に起こる2つの免疫細胞のバランスが、アレルギーのなりやすさを決めているようです。

病院や薬局で購入したものを薬剤と考えがちですが、身の回りには、殺菌、除菌や腐敗防止を目的とした商品や添加された商品があふれ、気づかないまま使用しているのが現状です。
例えば、台所の生ごみは、腐らないのです。
多くの薬剤が使用されていても、私たちは、超が付くほど清潔な社会で生活しているという認識はありません。
人は、清潔を求め、人以外のあらゆる生物、細菌を薬剤で殺菌、殺虫、除菌、排除をしています。
農業も化学合成農薬は危険で、天然由来の農薬は安全などというわけのわからない基準を奨励したりしています。

過度の薬剤使用は、生物相、生物の共存バランスを破壊してしまいます。
薬剤の使用を禁止することは、できませんが、過度の薬剤使用をこのまま続けていいのでしょうか。
そこから問い直さなければならないと思います。


参考文献;NHKスペシャル病の起源。
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