信玄公と娯楽の場!?

2023-03-11 12:58:58 | 紹介
今年も3月11日を迎えました。
東日本大震災から12年の月日が経ちます。
亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、心より哀悼の意を表します。

多くの尊い命が失われ、多くの方々の人生を変えた大震災。
その爪痕も完全に癒えたわけではありません。
甚大な被害を被った方々の苦しみや悲しみ、心身への負担もどれほどだったか。
被災された皆さまには、悲しい記憶を呼び起こす辛い一日だと思いますが、
震災の記憶は語り継ぎ、記録は一つでも多く保存することで、
将来再び起こるであろう大地震の被害軽減にもつながっていきます。

よくお子さんから、なぜ歴史を勉強するの?勉強して何か役に立つの?
と質問をいただきます。
時に子どもの屈託ない質問には困ってしまうこともありますが、
歴史は過去からつながっているもので、人々が積み重ねてきた営みの結果です。
ですので、立場や住む場所も異なる一人ひとりが学ぶ理由や意味は違うと
思っています。
悲劇を繰り返さないために過去から学ぶ、という側面もあれば、
生活や社会がなぜそうなっているのか、その原因や理由を学ぶ、
そして、難しい理屈抜きに、趣味や嗜好として純粋の自分の目標になる人物、
かっこいい、強い人物への憧れから学んでも良いと思います。
本当に歴史を学ぶ目的や理由は人それぞれ。活かし方も人それぞれ。
ですが、一つ言えることは、過去に学んだこと、成功や失敗を未来に活かすこと。
将来のために歴史を学ぶ、ことはどんな場合でも共通するのかな、と思っています。

信玄ミュージアムは、訪れる方が武田氏館跡という場の歴史にふれる、楽しむ、
歴史を学ぶための扉を開ける、歴史との出会いの場になればと。
午前中も武田信玄大好き、と声をかけてくれた小学生がいました。
まだ、難しいことはわからなくても、子どもたちが何かを感じ、興味を持ってくれて
将来、何かの役に立つことがあれば、そう願うばかりです。

さて、大震災のような経験してみなければわからない・・
まさにそのとおりではありますが、不自由な避難生活や苦難の復興作業、
そんな切羽詰まった状況下、だからこそ、
トランプや歌といった娯楽、ちょっとした楽しみ事が、
心を楽にしてくれたという話を耳にされたこと、あるかと思います。
「娯楽がないと人間でいられない」という言葉は、
北海道の地震で避難所生活を経験された、ある方の言葉です。

状況や次元は違うかもしれませんが、
日本の歴史において、儀式的な作法や形式よりも、人間的な結びつきが重視され、
娯楽性がひとつのキーポイントになった時代がありました。
それが中世という時代。
帝や朝廷から、国の統治が武家政権へと変わっていった、過渡期であり変革期です。
公家、寺社、武家がそれぞれに力を持ったため、
従来の一元的なヒエラルキーがゆらぎ、
幕府将軍職の権力基盤が弱体化し、やがて戦国の下剋上を誘発していきます。

時代を象徴する現象のひとつが「寄合(よりあい)」でした。
寄合と聞くと、自治的・地縁的に結びついた「惣村」の
村民会議のようなものをイメージしますが、
もともとは、鎌倉幕府の政に関する”私的”な会談のこと。
村に限ったことではなく、朝廷や幕府でもそういった場が持たれました。
”私的”ゆえに、遊びや娯楽性が加わったのかもしれません。
当初、専用の建物はなく、内裏の泉殿といった納涼の場などが使用されましたが、
会場は、ところ狭しと唐物で中国風に飾られ、
闘茶、連歌会、月見、雪見、花見、猿楽舞、七夕などが楽しまれたとか。
厩(うまや)や風呂までも会場になったと言いますから、
寄合の場所は、私たちの固定観念を超えています。

武田氏館跡にも庭園や厩、風呂があったことが絵図で描かれていますので、
そこでは果たして、どのような行事が行われていたのでしょうか。
「信玄公屋形之図」
そして、館の南東には広場があり、的場がありました。
その脇の庭園には鞠掛と記されていますので、蹴鞠を行っていたこともわかります。
いずれも大名としての嗜みではありますが、
そうした娯楽を通じて参加者との交流を深め、
厳しい戦国の世を生き抜こうとしたのかもしれません。



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (武田出羽守)
2023-03-13 12:53:01
こんにちは。
被災地へのお心遣い、東北に居を構える者として感謝申し上げます。

来週火曜、信玄ミュージアムへ参ります。
返信する
Unknown (武田出羽守)
2023-03-13 12:56:47
こんにちは。
被災地へのお心遣い、東北に居を構える者として感謝申し上げます。

来週火曜、信玄ミュージアムへ参ります。
返信する
ありがとうございます (ミュージアムスタッフ)
2023-03-16 16:13:56
武田出羽守様、いつも応援いただき、ありがとうございます。
東海や南海の大震災もあり、決して他人事ではないので、東日本大震災の教訓を忘れず、一人ひとりが防災意識を高め、災害時は助け合いと支え合いで困難に立ち向かえるよう備えておかなければと思うばかりです。

山梨までの道中、くれぐれも気をつけてご来館ください。
21日は、かわらけ君も出勤予定ですので、お会いできることを楽しみにしています。
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