小林真 ブログ―カロンタンのいない部屋から since 2006

2006年開設の雑記ブログを2022年1月に市議当選でタイトル更新しました。カロンタンは40歳の時に飼い始めたねこです

#8y Dream

2012-08-18 11:03:02 | ねこ

かなしい話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、少し前のことだけど、いちばん仲よくしていたねこのティーが死んでしまった。
出てこないなと思って探していたら、やつがいつも遊んでいた庭の真ん中あたり、葉っぱが重なった涼しいところで動かなくなっていた。しかたがないので、「ねこが死んだら三叉路に埋める」という祖父母の言から、畑に出る道と畑の道がぶつかるあたりに大きな穴を掘って埋めた。

いつかはと「覚悟」していた気になっていたが、いざそうなると「不在」はどんどん広がっていく。
車で帰った時にはよくやつが待ってた裏の道、おめえ、こんなところにいるとあぶねえぞ、と腹を抱えて庭に戻したその感触を思い出したり。塾舎でパソコンの前にいる時には、かつんかつんと入口の金具を爪ではじいて入れてくれという合図に、わかったわかったとドアを開けに行く、面倒でうれしい机とドアの間の五歩くらいをなつかしんだりしている。
「かなしい」や「さびしい」はやつといっしょに見送った時間が心地よかったほど大きくなる「代価」だから、「貨幣にまみれた人間社会のルール」と違って期間や利率が自由な「風の音や空気の温度で成り立つ生き物の世界のおきて」の中で支払っていこう。ならば、すぐに終わって額の大きな「一括」でなく、ゆっくりでおだやかな「分割」にしたい。

蔵が休みで庭にいて、ほかのねことは特別に「ティーさま」と呼んでいた、その朝の一部始終をみていた妻が、畑の野花を手向け、ともに手を合わせて「ありがとう、ティー、バイバイ」と告げた後でいう、「何か植えようよ」。
夏の暮れのホームセンターで探すうち、目に止まったのは「クライミング・ハイブリッドティー」というバラ。翌朝、蔵に出る前の妻と植えた。
やつは正式名を「クライミング・ペーパー・ティー」という。
ほかのきょうだいと違って食べ物に興味を持たず、ひとの脚に登ったりティッシュをかんだりしている。そんな小さい時の様子からそう名づけたのだ。
八歳ともなるとティッシュでは動じなかったが、ひとのひざや高いところの座布団や箱の上にはついこの間まで登っていた。真ん中が柔らかいチリ紙からエコ時代のエンジンみたいになった同じ名前の花の樹は、近いうちに立てるつもりの支柱をゆっくりと登るだろう。

二〇〇四年四月生まれだから八年間。
私の四八年にとっても六分の一、やつにとっては一分の一だけど、やつはねこでほとんど寝て過ごしたから、八年間の時間割はだいたい同じに思える。それはいっしょにみた、うつつでうつらで、うつしくうつろいがちな夢だった。 
「ありがとう、ティー、バイバイ」 
 

(8月10日 09:17)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする