奥州市周辺では、長男のことを「かどぐ」「かどぐ息子」といいます。語源は、(家督)ですね。戦前の長子相続の時代では、長男がすべての財産を相続したので、そう呼ばれます。その名残で、今でも長男のことを「かどぐ」と呼ぶようです。
「おらえのあんや はっぱりほでねども かどぐにはちげねーがらなー」
(家の長男は、全然優秀じゃないけど家を継ぐ人ですからね)
では、長男が東京などに行ってしまって、次男とかが家を継いだ場合には言わないのかという疑問が生じますが、次男でも家を継げばやはり「かどぐ」です。
「おらえの二番目息子、おやがだ東京さではってしまったがら、かどぐにしたもや」
(家の次男は、長男が東京へ行ってしまったから家を相続させることにしました。)
また子供のいない家で、養子を迎えて嫁や婿を取った場合には「寄せかどぐ」と表現します。今の朝ドラの「あんぱん」で、お医者さんの家で甥を養子にしていますが、大人になったらお嫁さんを取って家を継がせれば「寄せかどぐ」に該当します。
「あそごのえ 子供いねがら 甥っ子もらって 寄せかどぐにしたのだっけ」
(あそこのいえは、子供がいないから甥を養子にして家を継がせたのでした。)

核家族の現代では、ほぼ死語に近いですね。
ちなみに長男の呼び方としては、「いへもぢ」(位牌持ち)もあります。これは、葬列で位牌を持つのが長男だったからです。
「おらえで やっとご いへもじうまれで いがったやー」
(家では、やっと長男が生まれてよかったです。)