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改正少年法 「更生」の理念を見失うな

2008年06月18日 | スクラップ


 少年を更生させ、再び犯罪へと走らせないようにする少年法の理念はゆがめられないだろうか。懸念がぬぐえない。

 原則非公開となっていた少年審判の傍聴を被害者や遺族に認めるという改正少年法が今国会で成立した。「審判廷が被害者側の報復の場となる恐れがある」と法曹界から批判が出ていた法改正である。

 改正少年法は終盤国会の五月下旬から自民、公明の与党と野党民主党の歩み寄りで一気に合意した。「ねじれ国会」の対決で審議が滞る中、「少しでも実績を作りたい」と、各党の思惑が一致したとみられる。

 非行少年の処遇を決めるデリケートな法律である。国会での論議は十分だったのだろうか。法案に反対してきた日弁連は改正法成立後、「短期間の国会審議で傍聴制度が導入されたことは遺憾だ」との談話を発表した。

 駆け込み成立は傍聴を認める際の要件にあいまいさを残した。改正法では、傍聴は家庭裁判所の裁判官が少年の弁護士(付添人)に意見を聞いてから許可するとした。その際、「少年の健全育成を妨げる恐れがない」ことを要件としているが、これでは少年や被害者が具体的にどのような状況なら傍聴が許可されるのかが明確でない。

 過去に審判廷で意見陳述を認められた一部の被害者遺族が少年をののしったり、物を投げたりするケースが報告されている。こうした事例をよく踏まえて、傍聴の許可は慎重の上にも慎重を期すべきだ。審判廷で少年を目の前にした被害者が気持ちを高ぶらせ、少年を傷つけるようなトラブルを起こしては取り返しが付かない。

 審判廷では加害少年の心を開かせるために「和やかさ」が求められる。裁判官は優しく語り掛けることを旨としてきた。被害者らの傍聴で廷内の雰囲気は大きく変わるだろう。傍聴者を前に裁判官に掛かるプレッシャーも相当なものになる。

 民主党が「加害少年への配慮」を重視したため、十二歳未満の場合、傍聴はできないことを改正法に盛り込んだ。しかし実際に十二歳未満の少年が重大事件を起こすケースは少ない。修正は限定的といえる。

 少年を更生させようという理念が変質するのではないかとの根本的な疑問は残されたままだ。「事件で何があったのか事実を知りたい」という被害者の思いは尊重しなければならない。これまでおざなりにされてきた問題だった。ただ、少年が更生できる環境の確保が大前提だ。傍聴にこだわるあまり、少年法の理念をなし崩しにしてはならない。





[新潟日報6月14日(土)]
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