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心の闇なお解明されず/宮崎死刑囚

2008年06月19日 | スクラップ
2008年6月18日(水)



 一九八八年から八九年にかけて、埼玉県と東京都で、四歳から七歳の女児四人を次々に誘拐し殺害した、宮崎勤死刑囚の死刑が十七日、執行された。

 宮崎死刑囚は女児を殺害後、遺体を切断したり、骨を焼くなど、猟奇的な行動を繰り返していた。また遺族宅に骨を入れた段ボール箱を置いたり、新聞社に「今田勇子」名で、挑発的な犯行声明を送り付けるなどの異常な行動は、社会を震撼(しんかん)させた。

 異常な犯行のため、東京地裁は二度にわたって精神鑑定を実施。完全責任能力を認める「人格障害」、責任能力を一部否定する「統合失調症」「解離性同一性障害(多重人格)」と、異なった三通りの鑑定書が提出され、最終的には最高裁が責任能力を認め、死刑判決を言い渡した。

 宮崎死刑囚の部屋にはアニメやホラーなどのビデオが山のように積まれ、「オタク」の言葉が一般的になったのも、この事件からだ。

 公判でも宮崎死刑囚は、「覚めない夢の中でやったような感じだ」と淡々と殺意を否認。「女の子が泣きだすとネズミ人間が出てきた」と意味不明な言葉を繰り返した。

 最高裁の死刑判決には「そのうち無罪になりますよ」と答え、判決が大きく報道されたことに対しては「やっぱり私は人気者」と語った。事件について「良いことができてよかったです」と振り返るなど、異常な言辞を繰り返した。しかし事件に対しての反省や謝罪の言葉はなかった。

 死刑の執行とともに、宮崎死刑囚の心の闇が解明されないままに、事件が終わるのは残念だ。

 宮崎死刑囚の裁判は、精神鑑定を繰り返すなど、刑事責任能力が争われ約十六年に及んだが、死刑執行は刑の確定からわずか二年四カ月後だった。これまで死刑執行までは平均で八年とされてきたのと比べると、執行が早い気もする。

 鳩山邦夫法相は会見で「慎重のうえにも慎重に検討した結果、絶対に誤りがないと自信を持って執行できる人を選んだ」と、何度か慎重という言葉を繰り返したが、鳩山法相が就任以来、九カ月で四回、十三人の死刑を執行しており、回数も増えている。

 世界的には死刑を廃止する動きが強まる中で、被害者感情や凶悪犯罪の抑止力として、死刑の実施を支持する意見も根強く、法相の死刑執行の判断も、これに基づくものだろう。

 また来年から裁判員制度が始まると、裁判員となった一般市民も死刑の判決を出すことがありうる。死刑執行が増えることで、死刑判決への抵抗感を薄めようという狙いがあるのではと批判する意見もある。

 宮崎死刑囚の幼女連続誘拐殺人事件から、神戸の連続児童殺傷事件、池田小児童殺傷事件と、動機のよく分からない無差別殺人事件が増えている。加藤智大容疑者による秋葉原の無差別殺傷事件も動機はやや異なるものの、延長線上にあるといえよう。

 インターネットの普及によって、現実と仮想の区別がつかないような事件も珍しくない。宮崎死刑囚の犯罪を、異常な人間の異常な行動と片付けるだけでは、問題は解決しない。




東奥日報
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