家に帰ると誰もいない。親父すらいない。
風呂場からザバババーンと音がする。親父は入浴中か。
ピンポーン。
呼び鈴が鳴る。俺が出なければならないようだ。玄関の扉を開けると、若い女性と男の子が立っていた。
「こんばんわ。307の木村です」
あー。どうやら隣の部屋の木村さんの奥さんとその子供らしい。5年ばかりここに住んでたが、今日はじめて見た。子供が突然、俺に尋ねる。
「ねこきてない?」
「ごめんなさい。ベランダから逃げ出して行方不明なんです。もしかしてお宅のベランダにと思いまして」
さっき、ベランダに植木の水やりに出たけどネコはいなかったなー。
「どんなネコなの?」
俺は子供に尋ねる。
「角が三本あって足が六本あるの」
はぁー?どんなネコだよ!
「いえ。あの、カブトムシなんです。子供の飼ってる。それがベランダから逃げ出しまして」
「カブトムシじゃ駄目だよ。ヘラクレスって言うんだよ!」
俺は子供にさらに尋ねる。
「カブトムシなんだよね!なんでネコなの?」
「名前がねこなんだよ」
「なんで名前がねこなの?」
子供は突然に口をつぐんだ。お母さんがかわりに答える。
「うちの主人がきまぐれでねことつけたんです」
「あー。なんで旦那さんはカブトムシにねこと名づけたんですか?」
そのとたん、お母さんも口をつぐむ。
どうやら深く突っ込みすぎたようだ。
「じゃあ、ベランダにカブトムシがいないか見てきます」
「あー。お願いします」
お母さんが安心したように言う。そのとたん。
「あっ!」
子供が何かを直感したようにうしろを振り向く。
夕日の中、キラキラと輝きながら、東の空に飛び去る三本角のカブトムシ。
あれがねこらしい。俺はもうベランダに行く必要がなくなった。母子は呆然とカブトムシの行方をながめる。俺はもう用がないらしい。静かに扉を閉めて部屋に戻る。
風呂場からザバババーンと音がする。親父は入浴中か。
ピンポーン。
呼び鈴が鳴る。俺が出なければならないようだ。玄関の扉を開けると、若い女性と男の子が立っていた。
「こんばんわ。307の木村です」
あー。どうやら隣の部屋の木村さんの奥さんとその子供らしい。5年ばかりここに住んでたが、今日はじめて見た。子供が突然、俺に尋ねる。
「ねこきてない?」
「ごめんなさい。ベランダから逃げ出して行方不明なんです。もしかしてお宅のベランダにと思いまして」
さっき、ベランダに植木の水やりに出たけどネコはいなかったなー。
「どんなネコなの?」
俺は子供に尋ねる。
「角が三本あって足が六本あるの」
はぁー?どんなネコだよ!
「いえ。あの、カブトムシなんです。子供の飼ってる。それがベランダから逃げ出しまして」
「カブトムシじゃ駄目だよ。ヘラクレスって言うんだよ!」
俺は子供にさらに尋ねる。
「カブトムシなんだよね!なんでネコなの?」
「名前がねこなんだよ」
「なんで名前がねこなの?」
子供は突然に口をつぐんだ。お母さんがかわりに答える。
「うちの主人がきまぐれでねことつけたんです」
「あー。なんで旦那さんはカブトムシにねこと名づけたんですか?」
そのとたん、お母さんも口をつぐむ。
どうやら深く突っ込みすぎたようだ。
「じゃあ、ベランダにカブトムシがいないか見てきます」
「あー。お願いします」
お母さんが安心したように言う。そのとたん。
「あっ!」
子供が何かを直感したようにうしろを振り向く。
夕日の中、キラキラと輝きながら、東の空に飛び去る三本角のカブトムシ。
あれがねこらしい。俺はもうベランダに行く必要がなくなった。母子は呆然とカブトムシの行方をながめる。俺はもう用がないらしい。静かに扉を閉めて部屋に戻る。
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