せまるママチャリ

　夕方、暗くなりかけた帰り道の狭い一方通行を、自転車で帰宅する。

　仕事中に足を痛め、うまく自転車の速度制御ができないので、タラーリタラーリと走っていく。

　大通りの交差点付近に近づくと、車や歩行者や自転車がウジャウジャと有象無象にたくさんいる。

　自転車で一通の右側を走っていたら、前方からママチャリに乗った、若い主婦が走ってきた。
　主婦は邪魔そうに、歩いている老婆をよけこちらに向かって来る。
　俺は前方に電柱があったので、その電柱をよけたら、ちょうどママチャリ主婦の真ん前に出てしまった。このままだと主婦の進路を妨害する事になる。
　とっさに前方から来る主婦をよけようと思うが、だが、内側によけると老婆の進路妨害になる。外側によけると、一方通行を数珠つなぎにたえまなく走って来る自動車の前に飛び出してしまう。足が言う事を聞かないので無茶はしたくない。

　わぁ、どうしようかと迷っているうちに、ママチャリの若い主婦は電柱と俺のあいだギリギリにすりぬけて行った。

　ちっ！

　主婦はトロい俺に対して忌々しそうに舌打ちして去っていった。

　最近は男に対して平気で舌打ちする主婦が多いなと思った。
　ま、男女同権だからいいんだけどさ、なんか嫌な感じだけど、自転車で右側通行していた俺が根本的に悪いのだ。
　この主婦に非は全く無い。

　だけど、危険な男もいるから、見知らぬ男相手に舌打ちするのは危険だと思う。逆恨みして暴力をふるうような男もいるしね。
　あと、舌打ちするのが癖みたいだけど、自分の子供に舌打ちするのはやめましょう。などと、今さらのように負け惜しみで偉そうな事を書いてみる。