夕刊配達の途中で奇妙な死に方をしていたカラスの死体を見つけたので繊細を報告しよう。
1月4日。
今日から夕刊がある。これが今年の仕事始めだ。
夕刊の配達区域は玉川上水沿い、小平の住宅地。
新聞配達用の原付にまたがり夕刊を配達していると、道の隅に黒い物が落ちているのを見つけた。
あっ、カラスだ。
カラスは力なくグニャリと横たわっている。死んでいるようだ。
原付を降りて、良く見てみると、このカラスの死体にはクチバシがない。
最初からクチバシがなかったわけではない、クチバシの根元が4分の1ほど残っている。クチバシの根元はボロボロで、一部は割れており、まるで弾けとんだかのように見える。クチバシ以外には、特に他の外傷は見当たらない。
カラスは目を閉じて死んでいた。死体は新しく、死んで間もないように思われる。目を閉じ死んでいるカラスの死に顔は、安らかで美しく見えた。
このカラスは何らかの爆発によってクチバシを失ったようだ。死因もその爆発が原因だろう。でも、何によって、どうやってカラスのクチバシは爆発したのか。
もっと良く観察しよう。カラスのもとに座り込んだ。
カラスの周囲には血の跡も、壊れたクチバシの破片も見当たらない。爆発の破片が無いという事は、この上空で爆発して落下したという事なのだろうか。
今度はクチバシの中を良く観察してみる。破壊されたクチバシの中に白い物体が見える。どうやらこれが爆発してカラスのクチバシと命を奪ったらしい。白く見えるのは炸裂した時に炭化したからだろう。カラスのクチバシが破壊されたのは、クチバシの中でこの白い物体が爆発したからだ。
しかし、カラスのクチバシを破壊するほどの力を持ったこの白い物体の正体はなんだったのだろうか。
引き抜いて調べてみるか。白い物体に手をのばす。指の背がわずかに残ったカラスのクチバシに触る。消し炭の触感がした。
白い物体はサインペンほどの太さで固かった。材質はまるでわからない。かなり力を入れて引いてみるが、どういう具合になっているのか容易には抜けそうも無い。なんだかノドを貫いてカラスの頭に突き刺さっている感じだ。けっこう長い物なのだろうか。
引っ張っているうちに透明な液体がカラスの頭から漏れだしてきた。片手じゃ無理だ。カラスの頭を押さえつけて、もっと強引に引き抜かなければ。
グゥワッ~!
グゥワッ~!
いやにカラスがやかましく鳴いている。ふと周囲を見渡すと、近所の家や電柱などに数え切れないほどのカラスがとまっていた。頭の上にもカラスが数十匹ほど旋回している。
カラスに監視されていた。
カラスの死体に気をとられていて、カラスがこんなにも群れ集まっている事にまったく気がつかなかったのだ。
そのとたん、急に恐ろしくなる。
自分がカラスに監視されている中で行った行為に恐怖を感じた。
住宅街の中で、仕事中に、道路に座り込んでカラスの死体と格闘していた自分。そして、その一部始終を監視していたカラスの群。
非日常的で、忌むような光景。
なんだか悪夢の中にでもいるような気分になる。死んでいるのは本当にこのカラスなのか。本当は死んでいるのは俺のほうなんじゃなかろうか。俺はもうこれ以上はカラスの死体に触れる事が出来なくなり、その場を後にした。
残りの配達を続けるうちに、小平市の4時半のテーマ、児童に帰宅をうながす「七つの子」の曲が流れ出す、配達が終わる頃には日が暮れて真っ暗になった。携帯でカラスの写真を撮っておけば良かったかなとも思ったが、もう暗すぎて写らないだろう。あきらめて販売店に帰る。
1月4日。
今日から夕刊がある。これが今年の仕事始めだ。
夕刊の配達区域は玉川上水沿い、小平の住宅地。
新聞配達用の原付にまたがり夕刊を配達していると、道の隅に黒い物が落ちているのを見つけた。
あっ、カラスだ。
カラスは力なくグニャリと横たわっている。死んでいるようだ。
原付を降りて、良く見てみると、このカラスの死体にはクチバシがない。
最初からクチバシがなかったわけではない、クチバシの根元が4分の1ほど残っている。クチバシの根元はボロボロで、一部は割れており、まるで弾けとんだかのように見える。クチバシ以外には、特に他の外傷は見当たらない。
カラスは目を閉じて死んでいた。死体は新しく、死んで間もないように思われる。目を閉じ死んでいるカラスの死に顔は、安らかで美しく見えた。
このカラスは何らかの爆発によってクチバシを失ったようだ。死因もその爆発が原因だろう。でも、何によって、どうやってカラスのクチバシは爆発したのか。
もっと良く観察しよう。カラスのもとに座り込んだ。
カラスの周囲には血の跡も、壊れたクチバシの破片も見当たらない。爆発の破片が無いという事は、この上空で爆発して落下したという事なのだろうか。
今度はクチバシの中を良く観察してみる。破壊されたクチバシの中に白い物体が見える。どうやらこれが爆発してカラスのクチバシと命を奪ったらしい。白く見えるのは炸裂した時に炭化したからだろう。カラスのクチバシが破壊されたのは、クチバシの中でこの白い物体が爆発したからだ。
しかし、カラスのクチバシを破壊するほどの力を持ったこの白い物体の正体はなんだったのだろうか。
引き抜いて調べてみるか。白い物体に手をのばす。指の背がわずかに残ったカラスのクチバシに触る。消し炭の触感がした。
白い物体はサインペンほどの太さで固かった。材質はまるでわからない。かなり力を入れて引いてみるが、どういう具合になっているのか容易には抜けそうも無い。なんだかノドを貫いてカラスの頭に突き刺さっている感じだ。けっこう長い物なのだろうか。
引っ張っているうちに透明な液体がカラスの頭から漏れだしてきた。片手じゃ無理だ。カラスの頭を押さえつけて、もっと強引に引き抜かなければ。
グゥワッ~!
グゥワッ~!
いやにカラスがやかましく鳴いている。ふと周囲を見渡すと、近所の家や電柱などに数え切れないほどのカラスがとまっていた。頭の上にもカラスが数十匹ほど旋回している。
カラスに監視されていた。
カラスの死体に気をとられていて、カラスがこんなにも群れ集まっている事にまったく気がつかなかったのだ。
そのとたん、急に恐ろしくなる。
自分がカラスに監視されている中で行った行為に恐怖を感じた。
住宅街の中で、仕事中に、道路に座り込んでカラスの死体と格闘していた自分。そして、その一部始終を監視していたカラスの群。
非日常的で、忌むような光景。
なんだか悪夢の中にでもいるような気分になる。死んでいるのは本当にこのカラスなのか。本当は死んでいるのは俺のほうなんじゃなかろうか。俺はもうこれ以上はカラスの死体に触れる事が出来なくなり、その場を後にした。
残りの配達を続けるうちに、小平市の4時半のテーマ、児童に帰宅をうながす「七つの子」の曲が流れ出す、配達が終わる頃には日が暮れて真っ暗になった。携帯でカラスの写真を撮っておけば良かったかなとも思ったが、もう暗すぎて写らないだろう。あきらめて販売店に帰る。
よく触れますね?僕はカラスの死体は見たことないのですが日記を読んで考えると、そのカラスは恐らくボウガンか何かに撃たれたのではないでしょうか。
カラスに対して疎ましく思うのは都市部に住む
人間なら誰しもいえる事だと思いますので。
僕の家の近くにもカラスはいます。昔はよく集団で
ゴミを漁ったりしてたものですが最近はめっきり
見なくなりました。
ボウガンですか。確かにクチバシを吹き飛ばすだけの威力はありそうですが、俺の見たカラスの死骸はあきらかにクチバシが焦げていました。クチバシの中でなにかが爆発したとしか考えられません。
ところで、なんでカラスの群が仲間の死体に群れていたのか考え、その答えを得る為に検索してみたら、カラスは仲間の死体を食う習性があるという事でした。本当かどうかは知りませんが、あり得なくもないなとは思います。
なんにしろ、方法はともかく推測どおりに人間によるカラスの虐殺の線は否めません。