バレエ・メソッド アンサンブル・ド・ミューズ スタイル

クラシック・バレエの実際のレッスンをモデルとして、正確に無理なく美しく動き踊るためのヒントやアドバイスをお伝えします。

頭部の動き、顔の向き

2013-04-30 11:20:24 | 日記
前回はプリエとポール・ドゥ・ブラそして頭部の連携について練習してみました。
今回はプリエ以外のバー・レッスンのときの頭部について練習しましょう。
もっとも基本のアームスをア・ラ・スゴンドに置いている場合です。ポール・ドゥ・ブラが様々に変化する場合は頭部もそれに応じたポジシオンに変化します。
では、はじめましょう。
左手バーで1番ポジシオン、アームスはプレパラシオンでアン・バからア・ラ・スゴンドへ。
ポワン・タンジュ・ドゥヴァンに右脚を伸ばしながら、顔は右肩の方にエポールマン。1番ポジシオンに動作脚を戻しながら顔も正面(=ドゥ・ファス)に戻します。
ア・ラ・スゴンドにポワン・タンジュをするときはドゥ・ファスのまま。
デリエールにポワン・タンジュするときにはエポールマンの顔を少し前に傾けて、ア・ラ・スゴンドに置いたアームスの指先に視線を向けます。

いかがですか?これが基本の《基》の形です。
バットマン・デガージェ、バットマン・フォンデュ、デヴロッペ、グラン・バットマンのときにも基本はこの形です。
ロン・ドゥ・ジャンブ・パール・テールのときは
アン・ドゥオールのときにはポワン・タンジュ・ドゥヴァンのときのエポールマンからポワン・タンジュ・デリエールのときのエポールマンに脚の動きとともに自然に変化し、1番ポジシオンに動作脚を戻すときに顔もドゥ・ファスに戻します。この繰り返しです。
アン・ドゥダーンのときにも同様にポワン・タンジュ・デリエールのときのエポールマンからポワン・タンジュ・ドゥヴァンのときのエポールマンに、脚の動きとともに変化していきます。
注意が必要なポイントは
ポワン・タンジュ・ドゥヴァンのエポールマンでアゴが上がったり胸が反りすぎて背中が縮んでしまわないこと。
ポワン・タンジュ・デリエールのエポールマンで猫背になってしまわないこと。
エポールマンをはじめとする頭部のポジシオンは安直に“傾げる”こととは意味が違いますから、首筋が縮んだり無暗に捻じれたりしないように気を付けましょうね。
次にエカルテのときのエポールマンを確認しておきましょう。
エカルテ・ドゥヴァンのときは動作脚の方にエポールマン。
エカルテ・デリエールのときは軸脚の方にエポールマン。
最後にひとつ練習してみましょう
ア・ラ・スゴンドのポワン・タンジュを繰り返しますが、それに合わせて頭部の向きが変化します。
左手バーで右脚前5番ポジシオン、アームスはプレパラシオンでアン・バからア・ラ・スゴンドへ。
→8 プレパラシオン⇒1 右脚ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド→2 右脚後5番、顔は右肩の方にエポールマン→3 ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド、顔はドゥ・ファス→4 右脚前5番、顔は左肩の方にエポールマン→5 ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド、顔はドゥ・ファス→6 右脚後5番、顔は右肩の方にエポールマン→7 ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド、顔はドゥ・ファス→8 右脚前5番、顔は左肩の方にエポールマン→…
いかがですか?
顔の動きにつられてトルソーが左右に捻じれないように気を付けて下さいね。
このバットマン・タンジュ・ア・ラ・スゴンドのように、脚の動きが前から後ろへまたはアン・ドゥオールの動きのときには顔は動作脚の方にエポールマン、脚の動きが後ろから前へまたはアン・ドゥダーンの動きのときには軸脚の方にエポールマンをするのが基本です。

頭部のポジシオンによってパや踊りに様々な表情が生まれ、美しくもなれば逆に珍妙な形にもなります。正確なポール・ドゥ・ブラと同様に頭部のポジシオンも大切にしましょう。
では、また次回。

アームスの動き

2013-04-15 10:38:51 | 日記
前回のプリエの練習のところで、アームスの動きに釣られてトルソーがグニャグニャになってはいけないとお話しましたね。
見よう見まねでのレッスンをしていると、なんとなく“雰囲気で”バレエっぽく動けている気になってしまうのかもしれません。
アンサンブル・ド・ミューズのレッスンでは、トルソーがきちんと定まるまでは顔の向きはドゥ・ファスのまま、ポール・ドゥ・ブラもア・ラ・スゴンドのみ、でレッスンしています。ことにアームスをクネクネと無駄に動かすようなことは極力控えるようにしています。
とはいっても頭部のポジシオンは大事なことですから今回はそのことを確認してみましょう。
でははじめましょう。
左手バーで1番ポジシオン。アームスはアン・バ。顔はドゥ・ファス、つまり正面向きです。
プレパラシオンのアームスと頭部の関係は…。
≪1≫頭部を左肩の方に傾けて右の手のひらを覗くようにします。
≪2≫右の手のひらに視線を向けたままアームスをアン・ナヴァンに。この時は頭部はまだ左肩のほうに傾けたままです。
≪3≫アームスをア・ラ・スゴンドに開くとともに頭部を起こし、視線とともに右の手のひらを追って行きます。
≪4≫頭部を少し後ろに傾けア・ラ・スゴンドの指先に視線を向けたポジシオン、これがエポールマンです。
プリエのときのアームスと頭部の関係は…。
≪1≫ドゥミ・プリエはエポール・マンのまま行います。
≪2≫グラン・プリエをはじめる寸前にア・ラ・スゴンドのアームスの手のひらを下にむけアロンジェにします。
≪3≫グラン・プリエをしながらアームスを下げ、それに合わせて視線も下げながら頭部を少しずつ左肩のように傾けて行きます。
≪4≫グラン・プリエの最も深い位置でアームスがアン・バになったとき、頭部は左肩のほうに傾いていて視線は右の手のひらを覗くようにします。
≪5≫グラン・プリエから立ち上がるときのアームスと頭部の動きはプレパラシオンのときと同じです。
カンブレのときのアームスと頭部の関係は…。
≪1≫頭部はエポールマン、ア・ラ・スゴンドのアームスをアロンジェにして、前に倒していく上体の動きに合わせて下げて行きます。
≪2≫上体が一番深い位置にカンブレ・アン・ナヴァンをしたとき、アームスは上体に対してアン・オーの位置にあります。
≪3≫アームスで上体を吊り上げるように起こし、トルソーが元の位置にもどったときにアームスはアン・オー。このとき頭部はまだドゥ・ファスです。
≪4≫頭部をエポールマンにしてカンブレ・アン・ナリエールをはじめます。肘よりも少し上に視線を向けるといいでしょう。
≪5≫トルソーを起こしアームスをア・ラ・スゴンドに開きます、頭部はエポールマンのままです。

いかがですか?
これがおおまかなポール・ドゥ・ブラとプリエそしてカンブレとの関係です。
グラン・プリエの寸前にアロンジェにするとき、またカンブレ・アン・ナヴァンの寸前にアロンジェにするとき、アームスを少し煽っても構いません。でも、それはより良いグラン・プリエやカンブレをする前にトルソーをさらに引き上げるためにすることです。トルソーと無関係に、無頓着にただ振り上げてはいけませんね。
以前のレッスンのときにも何度かお話しましたが、アームスはトルソーを助ける働きをします。トルソーのコントロールを妨げるようなアームスの動きには修正が必要ですし、無駄に動かさない方が賢明です。
では、また次回。

トルソー

2013-04-04 09:55:01 | 日記
この≪バレエ・メソッド アンサンブル・ド・ミューズ スタイル≫、昨年9月までにポワントの基本レッスンまで進めて一旦休止しましたが、これからは日々のレッスンの折に気付いたこと、バレエのレッスンをしている皆さんに是非伝えたいと考えることなどを中心にアドバイスをしていきたいと思います。
夢中でレッスンに取り組んでいると、ついつい“やってるつもり”になって通り過ぎてしまうことや、注意を受けてもその意味するところを理解できないまま、次に進んでしまうことなどもあるでしょう。
レッスンを続けるなかでふと“これでいいのかな?”と思ったときに参考にして頂ければ幸いです

今回はトルソーを真っ直ぐに保つことについて。
近頃“体幹を鍛える”ということを良く耳にしますし、参考書籍などもいろいろと書店に並んでいますね。
この体幹、バレエにおいても極めて大切な部分です。
私は以前のレッスンでもずっと『トルソーを真っ直ぐに。トルソーを歪めることなく。トルソーを縮めない』ということを繰り返しアドバイスしてきました。
私が“トルソー”と表現する身体の部分とは、首・頭部・両腕・両脚を除くいわゆる“胴体”のこと、つまり“体幹”のことです。
いくら“引き上げる”とか“軸を保つ”とか“上から吊られるように”などといったところで、この“トルソー(=体幹)”があやふやなままでは意味がありません。
クラシック・バレエのレッスンそのものが、あらゆるパにおいてトルソーを真っ直ぐに支えることで、十分に体幹トレーニングの効力を有するものです。
では、はじめましょう。
一番わかりやすいのはプリエです。
左手バーで1番ポジシオン、アームスはプレパラシオンでア・ラ・スゴンドへ。
→8 プレパラシオン⇒1 ドゥミ・→2 プリエ→3 元に→4 戻る→5 ドゥミ・→6 プリエ→7 元に→8 戻る→1 グラン・→2 →3 プリエ→4 →5 元に→6 →7 戻る→8 1番ポジシオン⇒

ドゥミ・プリエのときはアームスはア・ラ・スゴンドのまま。
グラン・プリエのときのアームスはア・ラ・スゴンドからアン・バへ、そしてアン・ナヴァンを通ってア・ラ・スゴンドへ。

さぁ、自分のトルソーに意識を向けながらプリエをしてみて下さい。いかがですか?
グラン・プリエのときに特に注意が必要です。
ア・ラ・スゴンドからポール・ドゥ・ブラを始めるときにアームスをアロンジェにして軽く煽るのは構いませんが、煽ったアームスをアン・バの方に下げていく動きに釣られて、アームスと同じ側のウエスト部分が縮みトルソーが傾いていませんか?
アン・バに下げたアームスに対して顔を向けるつもりで、今度はバーの方にトルソーが傾いでいませんか?
そうです。じつはこの とが大問題なのです
アームスの動きではなく、トルソーに注目してみて下さい。
腕の動きに合わせてトルソーそのものはグニャグニャですね。
“いかにもバレエらしい優美な曲線を描きつつ動いている”と思い切り勘違いしているのでしょうね
もっともシンプルな1番プリエですらこうなのだとしたら、4番・5番のプリエではさらにトルソーはグズグズになるでしょう
ポール・ドゥ・ブラに合わせて頭部も動かしていくのは大事なことであり必要なことですが、それはトルソーをきちんと支えられてこそ美しくコントロール出来るものです。
まずは勘違いの“優美な曲線もどき”を真似ることをやめて、正しく真っ直ぐにトルソーを支えてプリエをする、その練習を大事にすることです。そうすればアームスの動きに引きずられることのない強く美しいトルソーを育てることが出来ますよ
ではもう一度ドゥミ・プリエから始めて下さい。いかがですか?
ドゥミ・プリエを通過してグラン・プリエに移るときに、お尻を後ろに引いていませんか?
グラン・プリエに達した時、しゃがみこむような姿勢になって尾骶骨が膝よりも低い位置に下がっていませんか?
これもまた大問題なのです
のようにお尻を後ろに引いてしまったのでは、股関節のターン・アウトの妨げになってしまいます。個人差はありますが、それぞれ自分の股関節に可能な限りの100%のターン・アウトを守るためには、骨盤は真っ直ぐに立てておかなければなりません。そして骨盤を真っ直ぐに立てることによって、トルソーを真っ直ぐに保つことも可能になるのです。
のように下でしゃがんでしまっては体幹の筋肉は脱力したままになってエクササイズの意味をなしません。さらには、もとのポジシオンに戻るためには上体を前方に漕ぐような醜い反動を付けなければならなくなります。これでは強くしなやかなトルソーを育てることはできませんね
極めてシンプルで派手でもなく目に立つ華やかさもないプリエですが、バレエのあらゆるパやダンサーの身体にとって最も大切な動きです。目先の安直な華やかさや優美さは不要です。
丁寧で正確であること、それが最も大切なことであり有効なことですね。
では、また次回。