バレエ・メソッド アンサンブル・ド・ミューズ スタイル

クラシック・バレエの実際のレッスンをモデルとして、正確に無理なく美しく動き踊るためのヒントやアドバイスをお伝えします。

バットマン・タンジュ

2009-04-27 13:25:22 | 日記
では、センター・レッスンを始めましょう。
バー・レッスンが、グラン・プリエから順に進んでグラン・バットマンやリンバリング(ストレッチ)で終わるように、センター・レッスンもポール・ドゥ・ブラやアダージョから始まって、バットマン・タンジュや《プティ・バトゥリー(小さな跳躍)》、回転、大きな跳躍と進めていく、順番があります。
ひとつの《パ(=Pas;動き・ステップ)》を単独で練習することもありますし、《パ》《パ》を繋いで、《アンシェヌマン(=enchainement;繋がり・連鎖)》として練習したりします。
《アンシェヌマン》としてもっとも大きいのは、《グラン・アレグロ》《グラン・ワルツ》ですね。
さまざまな《アンシェヌマン》を正確に動き表現するためには、ひとつひとつの《パ》が正確でなければなりませんね

さあ、《バットマン・タンジュ》の練習をしてみましょう。
鏡に対して正面を向き、右足前の5番ポジシオン、アームス(腕)は“アン・バ”です。
“アン・バ”から“アン・ナヴァン”を通って“ア・ラ・スゴンド”に“ポール・ドゥ・ブラ”、これが“プレパラシオン=準備の動き”です。
まず右足で、“ポワン・タンジュ・ドゥヴァン” 5番ポジシオン “ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド” 右後ろ5番ポジシオン “ポワン・タンジュ・デリエール” 5番ポジシオン “ドゥミ・プリエ”
次に“ポワン・タンジュ・デリエール” 5番ポジシオン “ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド” 右前5番ポジシオン “ポワン・タンジュ・ドゥヴァン” 5番ポジシオン “ドゥミ・プリエ”
そして“ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド”を3回、先に右後ろの5番ポジシオンに戻し次に右前の5番ポジシオンと交互に戻して、右後ろの5番ポジシオンで“ドゥミ・プリエ”
最後は“ポール・ドゥ・ブラ”を組み合わせてみましょう。“ア・ラ・スゴンド” “アン・バ” “アン・ナヴァン” “アン・オー” “ア・ラ・スゴンド”の順です。
同じように左側も続けます。
いかがですか?
“ポール・ドゥ・ブラ”を“ア・ラ・スゴンド”に保つのは難しいでしょう
動作脚の側の骨盤が動いたり、上半身とくにウエストから上が後ろに反ったりしないように気を付けましょう。かかとの上に体重が載ると重心が後ろに傾いてしまいます。
  土踏まずよりも前に体重をのせるようにしましょう。
“ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド”を3回繰り返すところでは、動作脚の動きにつられてトルソー(=胴体)が動作脚の爪先の方に横移動を繰り返さないように気を付けて下さいね。
  トルソーは5番ポジシオンの軸足の上から動きません。
“ドゥミ・プリエ”をするときに、骨盤を前傾させて“お辞儀”のようにトルソーが倒れないように気を付けましょう。
脚の動かし方、トルソーを真っ直ぐに保つこと、プリエ、重心の位置など、大切なことは全て、バー・レッスンのときと同じです。
バー・レッスンではなんとか動けていてもセンター・レッスンになると思うように動けなくなるのは、それは、
“つかまる物がない”
からです。
身体を支えるものは、自分の脚と両腕しかありませんものね。
  “ア・ラ・スゴンド”のアームスで自分の身体を“吊り上げる”とイメージするといいですよ。
 
両方の鎖骨を繋いだ横の線、両方のバスト・トップを結んだ横の線、左右の腰骨を結んだ横の線、この3本の横線に、身体の真ん中を通る1本の真っ直ぐな縦線をイメージしてみて下さい、3つの十文字が出来ますね。この十文字をいつでも平行に真っ直ぐ保つようにすると、身体が傾いたり歪んだり捻れたりするのを防ぐ目安になります。
この3つの十文字のことをアンサンブル・ド・ミューズでは“グランド・クロス”とよんでいます。


 



用語のまとめ

2009-04-20 10:49:07 | 日記
一番シンプルな形と順番で、バー・レッスンの基本からポール・ドゥ・ブラまでをご説明しました。
《グラン・プリエ》《バットマン・タンジュ》も、もちろんそのほかの動きも、さまざまなヴァリエーションがありますし、上達するにつれて複雑にもなっていきます。
でも、基本の用語はいつでも、世界中どこでレッスンしてもほとんど同じです。
この基本の用語をもう一度しっかり確認して覚えてしまいましょうね。
では、始めましょう。
《アン・ドゥオール》
   まず、脚の《アン・ドゥオール》は脚の付け根の股関節から両脚を外に向けて外旋させたかたちです。膝・足首・爪先がそれぞれ横を向きます。
動きの《アン・ドゥオール》は、身体の中心軸から外に向かって開いていく動きです。
“糸巻きから糸を引き出していく”とイメージするといいですよ。
  アンサンブル・ド・ミューズでは、動きの方向性を指示するときには《アン・ドゥオール》を使いますが、脚や身体のコントロールについて指示するときには《ターン・アウト》と言っています。
《アン・ドゥダーン》
   内側に、内に向かって、内回りという意味でしたね。外側から身体の中心軸に向かって巻き込んでいくような動きです。“引き出された糸を糸巻きに巻きつけていく”とイメージするといいですよ。
《ドゥヴァン》
   …の前に、前面、身体の前面、という意味ですね。腕や脚・足の位置を指示する言葉です。
《デリエール》
   …の後ろに、背後に、…の裏に、という意味で、腕や脚・足の位置を指示するときに使います。
《ア・ラ・スゴンド》
   2番ポジシオンの方向へ、つまり身体の横に、という意味になります。
《アン・クロワ》
   十字型、十文字という意味ですね。“ポワン・タンジュ・ドゥヴァン”“ポワン・タンジュ・デリエール”を結ぶ縦線に“ポワン・タンジュ・ア・ラ・スゴンド”に向かう線が交差して十文字になります。この十文字の頂点を順番に追う動き方です。
《パール・テール》
   地面に、床に、という意味です。
《アン・レール》
   空に向けて、空中で、という意味です。
《クロワゼ》
   正面に対して斜め45度の方向に身体を向けたとき、正面に近いほうの脚が前側に、正面から遠いほうの脚が後ろ側にあります。
《エファセ》
   正面に対して斜め45度の方向に身体を向けたとき、正面に近いほうの脚が後ろ側に、正面から遠いほうの脚が前側にあります。
《エカルテ》
   正面に対して斜め45度の方向に身体を向けたとき、正面に近いほうの脚を“自分の身体に対してのア・ラ・スゴンド”に伸ばした場合は《エカルテ・ドゥヴァン》、正面から遠いほうの脚を“自分の身体に対してのア・ラ・スゴンド”に伸ばした場合は《エカルテ・デリエール》となりますね。
《アン・ファス》
   自分の身体の正面に顔を向ける≪ドゥ・ファス≫と、稽古場の正面・舞台上の正面という意味で使う≪アン・ファス≫とがありますよ。
《エポールマン》
   身体がどちらを向いているかには拘わらず、顔を左右どちらかの肩の方に45度くらい向けます。

いかがですか?覚えられそうですか
これらの用語をしっかり覚えてしまうと、センター・レッスンでの身体の向きを保ったり動きの方向を決めたり、《パ(=動き)》《パ》をつなぐときの身体のコントロールについてスムーズに理解できるようになりますよ。
ときどきチェックしてみて下さいね

 

身体の向き・ポジシオンを示す言葉(2)

2009-04-15 11:39:47 | 日記
前回は《クロワゼ》《エファセ》《エカルテ》の身体の方向を示す言葉について確認をしました。
今回は“顔(頭部)の向き”を示す言葉についてご説明しますね。
《ファス(face)》はフランス語で顔、顔面という意味ですが、バレエのレッスンで《ファス(face)》または《ドゥ・ファス(de face)》と指示するときは、身体が向いている方向に顔も向いています。
右のクロワゼ・ドゥヴァン・ドゥ・ファスといったら、右足を前にした5番ポジシオンで左斜め45度を向いて立ち、顔も同じ方向を向いています。
また舞台上から見た《正面》あるいは稽古場の《正面》という意味で《アン・ファス(en face)》を使います。
《エポールマン(epaulement)》は、フランス語のエポール(epaule)=肩が語源です。
身体の向きに拘わらず、顔を左右どちらかの肩の方に向けます。
頭部を傾けたり顎を上げたりしてはいけません。
クロワゼまたはエファセのポジシオンに身体を向けて《エポールマン》にするときは、顔は主に稽古場あるいは客席の正面を向くようにします。
このエポールマンが前回確認した身体の向きのひとつ、《エカルテ》に大きく関わってきます。
ではまず右脚前のクロワゼ・ドゥヴァン・アン・ファスで準備して下さい。
そしてエカルテ・ドゥヴァンにポワン・タンジュしましょう。
右脚が自分の身体に対する“ア・ラ・スゴンド・ポワン・タンジュ”になっていますね。
さあ、顔を右肩の方に向けたエポールマンのポジシオンをとりましょう。
これが正しいエカルテ・ドゥヴァンです。
エポールマンがなければ、左斜めを向いて右脚をア・ラ・スゴンド・ポワン・タンジュにしているだけ、です。エポールマンが伴ってはじめてエカルテといえるポジシオンになるのです。
もう一度右脚前のクロワゼ・ドゥヴァン・アン・ファスで準備して下さい。
今度はエカルテ・デリエールにポワン・タンジュしましょう。
左脚が自分の身体に対する“ア・ラ・スゴンド・ポワン・タンジュ”になっていますね。
顔は同じく右肩の方に向けたエポールマンのポジシオンをとります。
これが正しいエカルテ・デリエールです。
エカルテ・ドゥヴァンのときにはポワントした脚と同じ側の肩の方にエポールマン、エカルテ・デリエールのときはポワントした脚と反対の肩の方にエポールマンのポジシオンをとることになりますね。
ポワン・タンジュした脚と同じ側の腕をアン・オーにして、軸脚側の腕をア・ラ・スゴンドにした場合、エカルテ・ドゥヴァンではアン・オーの手を見上げるように、エカルテ・デリエールではア・ラ・スゴンドの手先を通して視線を下げるようにしましょうね。
エポールマンをするのは“首から上の頭部”だけですよ。決して腰から捻ってはいけません。エポールマンをきちんと身に付けることで、ポーズや動きに立体感が生まれます。




身体の向き・ポジシオンを示す言葉(1)

2009-04-10 12:16:47 | 日記
センター・レッスンでのいろいろな《パ》の確認と練習にはいる前に、もうひとつ、クラシック・バレエの基本の中で大切なこと、『身体の向きや顔の向きを示す言葉』についての確認をしておきましょう。
左右のどちらを向くのか、どちらの足を前にして5番ポジシオンに立つのか、顔はどちらに向けるのか、それらを指示する言葉は決まっています。
では、始めましょう。
《クロワゼ(Croise)》とは、《交差した、十字形の》という意味です。
正面に対して左斜め45度に身体を向け、右足前の5番ポジシオンに立って下さい。これが一番単純な右足前のクロワゼ=左足後ろのクロワゼです。
そのまま右脚をポワン・タンジュ・ドゥヴァンに伸ばせば、それがポワン・タンジュ・ドゥヴァン・クロワゼです。
ではポワン・タンジュ・デリエール・クロワゼはどうすればいいでしょうか?
5番ポジシオンの後ろ側の足、そう、左脚を後ろにポワン・タンジュすればいいですね。
Question 右に斜め45度を向いた単純な《クロワゼ》の5番ポジシオンでは、どちらの足が前になりますか?
《エファセ(Efface)》には《控え目な、目立たない》という意味があります。
正面に対して左斜め45度に身体を向け今度は右足を後ろの5番ポジシオンで立って下さい。これが一番単純な右足後ろのエファセ=左足前のエファセです。
そのまま左脚をポワン・タンジュ・ドゥヴァンに伸ばせば、それがポワン・タンジュ・ドゥヴァン・エファセです。
ではポワン・タンジュ・デリエール・エファセはどうすればいいでしょうか?
5番ポジシオンでの後ろ側の足、そう、右脚を後ろにポワン・タンジュすればいいですね。
Question 右に斜め45度を向いた単純な《エファセ》の5番ポジシオンでは、どちらの足が前になりますか?
《クロワゼ》にも《エファセ》にもそれぞれドゥヴァンとデリエールがありますが、ア・ラ・スゴンド・クロワゼとかア・ラ・スゴンド・エファセとはいいません。
左斜めまたは右斜めを向いているときのア・ラ・スゴンドは《エカルテ》です。
《エカルテ(Ecarte)》には、《離す、遠ざける》という意味があります。
まず正面に対して左斜め45度に身体を向け、右脚を“自分の身体に対して真横=ア・ラ・スゴンド”の位置にポワントします。この位置が単純なエカルテ・ドゥヴァンです。
身体の向きはそのままで、左脚を“自分の身体に対して真横=ア・ラ・スゴンド”の位置にポワントしてみましょう。この位置が単純なエカルテ・デリエールです。
左斜め45度に身体を向けていても、右斜め45度に身体を向けていても、正面に近い方の脚をポワントにしていればエカルテ・ドゥヴァン、正面から遠い方の脚をポワントしていればエカルテ・デリエールです。
クロワゼエファセエカルテも、それぞれにポール・ドゥ・ブラが組み合わされて様々に変化します。まずきちんと、一番単純なクロワゼ、エファセ、エカルテを身につけましょうね。

は左足です
は右足です









ポール・ドゥ・ブラ(2)

2009-04-08 16:03:27 | 日記
前回、それぞれの腕のポジシオンについて確認しましたから、今度は《ポール・ドゥ・ブラ》の動きについて、確認と練習をしましょう。
先ず右足前の5番ポジシオンで、鏡に対して正面を向いて練習してみましょうね。そしてアームス(=腕)《アン・バ》のポジシオンで準備しましょう。
この《アン・バ》のポジシオンのとき、頭部(=首から上)はに少し傾けて、目線も自然に下げます。
  左足前の5番ポジシオンで準備するときは、頭部はに少し傾けますよ。
《アン・バ》から《アン・ナヴァン》に腕を引き上げます。頭部は右の手のひらを見るように、腕の動きとともに顔をあげます。
次に《アン・ナヴァン》から《ア・ラ・スゴンド》に向かって腕を開いていきます。顔は右の手の平を追いますよ。
十分に《ア・ラ・スゴンド》に伸ばしたら、手の平を下に向けて肘をそっと引いて、体側に向かって腕を下ろしていきます。最後に軽く肘を引き上げてもとの《アン・バ》のポジシオンに戻ります。
  肘を下げすぎて腕のラインが折れ曲がらないように気を付けて下さいね
《アン・バ》から《アン・ナヴァン》に腕を引き上げ、さらに《アン・オー》まで引き上げます。頭部は、腕が《アン・ナヴァン》よりあがっていくときには正面に向けたままにして下さい。
《アン・オー》から《ア・ラ・スゴンド》に向かって腕を開いていきます。顔は右の手の平を追います。
十分に《ア・ラ・スゴンド》に伸ばしたら、手の平を下に向けて肘をそっと引いて、体側に向かって腕を下ろしていきます。最後に軽く肘を引き上げてもとの《アン・バ》のポジシオンに戻ります。
  腕を開くときに、自分の肩よりも後ろに腕を引いてはいけません。
《アン・バ》から《アン・ナヴァン》に腕を引き上げたら、今度は右腕《アン・オー》に、左腕《ア・ラ・スゴンド》に向かって腕を開いていきます。顔は右の手の平を追います。
次に両腕のポジシオンを入れ替えます。つまり右腕《ア・ラ・スゴンド》左腕《アン・オー》にするのです。
そこから両腕を一度《アン・ナヴァン》に集めて、もう一度最初のポーズ、右腕《アン・オー》に、左腕《ア・ラ・スゴンド》に向かって腕を開き、最後に両腕を《ア・ラ・スゴンド》に開いてから《アン・バ》に戻します。
  頭部(=顔)は《アン・オー》の側の手の平を見るように動かしますが、“物理的に実際に視線を当てる”のではなく、あくまでも“手の平を見上げるようなイメージ”です。物理的に実際に視線を当てようとすると、顎が上がって首の後ろが縮んでしまいますよ
  《アン・オー》のほうに顔を向けたときは、大きな窓枠の陰から高い空を見上げるとイメージするといいですよ
《アン・バ》から《アン・ナヴァン》に腕を引き上げて、今度は左腕《アン・オー》に、右腕《ア・ラ・スゴンド》に一度開いたら、左腕《ア・ラ・スゴンド》を通過して大きく後ろに引き、右腕は手の平を下に向けて《アン・ナヴァン》の位置まで並行に移します。
 このとき両肩を上げることなく、両手の平を下に向けたまま前後一直線に引き伸ばすことが出来れば、理想的ですよ
後ろに引いた左腕を下から引き上げて、両腕を一度《アン・ナヴァン》に集めて、もう一度最初のポーズ、左腕《アン・オー》に、右腕《ア・ラ・スゴンド》のポーズを作り、両腕を《ア・ラ・スゴンド》に開いてから、《アン・バ》に戻ります。
ひとつひとつを確認しながら正確な動きを覚えるために、正面向きでご紹介しましたが、実際の《ポール・ドゥ・ブラ》は斜めを向いて練習します。また『チェケッティ・メソッド』『ロシア派』などそれぞれのメソッドによって、上げた腕の高さや、顔の角度や向き、順番に違いがあります。そして5番ポジシオンのままで行なうもの、前後に重心移動を伴うもの、上体の前屈や反りを伴うものなどがあります。
今回ご紹介した順番や注意点は、アンサンブル・ド・ミューズの初心者のレッスンで取り入れているものです。
アンサンブル・ド・ミューズでは、《ポール・ドゥ・ブラ》がトルソーのコントロールのためにも大切であると考え、腕の高さを少し高めにしてレッスンしています。