劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

秋ですねえ

2010-11-25 15:42:36 | 観劇
たくさんの作品を紹介・上演する芸術祭「フェスティバル/トーキョー」のおかげもあって、
芸術の秋らしく充実した観劇が続いている。

殊に満足したのは、フェスティバル/トーキョーのマルターラー『巨大なるブッツバッハ村』だ。
病み、倦怠し、凋落する現代を、シニカルにユーモラスに切り取った絶妙な悲喜劇。
無駄に(?)美しい歌声はじめ、笑い声、家具の摩擦音、些細な動きや不動・沈黙・・・
身体とその周辺の一見ありふれた道具だけで、ここまで演劇ができると見せつける、
演出家マルターラーの手つきが見事だった。

友枝会における、友枝昭世の『井筒』も素晴らしかった。
友枝がつとめたシテは、夫である業平を恋い慕う女の霊。
その動き・存在は悲哀をたたえ、不思議な輝きを放っていたのだ。
ワキの宝生閑もいつも以上に叙情たっぷりに感じられた。
作品さながらに、美しい月夜が浮かび上がっているのを見るようだった。

モーリス・ベジャール・バレエ団来日公演も印象深い。
殊に、ベジャール作品を再構成して作られた『80分間世界一周』鑑賞は、彼の功績を振り返る体験に。
各国の多彩な踊り・テイストを取り入れながら、そのいずれもが、
美しく鮮やかでエネルギーと機知に富んだ“ベジャール作品”になっていることを再確認。
かつてドンが、ガスカールが……キラ星の如き舞踊手たちが踊った作品群。懐かしく眩しかった。

ほかにも、身を削るようにして圧巻の踊りを見せた黒田育世『あかりのともるかがみのくず』、
観ているだけで愛おしくなるFUKAIPRODUCE羽衣『も字たち』、
ユニークな中に寂寥感が漂う五反田団『迷子になるわ』、
過剰さ・過激さからふと深い悲しみを浮かび上がらせたロドリゴ・ガルシア『ヴァーサス』、
幸四郎が堂々たる姿を見せた『逆櫓』や音羽屋の魅力いっぱいの『都鳥廓白浪』ほかの吉例顔見世大歌舞伎、
14歳の少年少女を独自の手法で描くマームとジプシー『ハロースクール、バイバイ』・・・など、
枚挙にいとまがないほど、東京だけでもたくさんの舞台が上演されている。感想も書ききれず申し訳なし。

と駆け足で振り返ったものの、まだ11月も、そして観劇も続くのであった。

 窓の外には紅葉が。秋だねえ。しみじみ。

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