劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

新国立劇場 オペラ『愛の妙薬』GP

2010-04-13 18:55:51 | 観劇
ドニゼッティ作曲 新国立劇場 オペラ『愛の妙薬』GP@新国立劇場オペラパレス


【ユニークな装置・衣裳】

このプロダクションは、面白い!
まず、カラフルでポップな美術・衣裳が実に鮮やかかつウィットに富んでいる。
美術の多くは、大小さまざまな『トリスタンとイゾルデ』の“本”。
この本がある意味、物語のキーであるのは言うまでもない。
だから、『トリスタンとイゾルデ』のイタリア語「Tristan E Isotta」の構成文字や、
妙薬を意味するELISIRの字が散りばめられたユニークな装置にも違和感がない。
(ただし、“妙薬”を授ける山師ドゥルカマーラは立派な飛行機で登場!)
といってもチェーザレ・リエヴィの演出は、
作品世界の本来的な魅力をくつがえす“新解釈”系ではない。
本云々も、ひたすら楽しい意匠である。
その舞台は芝居心たっぷりで、かつふとした瞬間には、
ルネ・マグリットの絵のような美しさも感じさせた。

【ジョセフ・カレヤ!!(←大向こう風)】

一方、歌手陣は素敵な歌声で、この牧歌的なコメディーを描き出す。
なんといってもネモリーノ役のジョセフ・カレヤ! 
豊かにおおらかに響くイタリア的美声で、声量も素晴らしい。
おっとりとした雰囲気も、この役柄に合っている。
名曲「人知れぬ涙」にはただただうっとりと聴き惚れた。

アディーナ役のタチアナ・リスニックは凛としていて、勝ち気な女の子らしさが出ている。
カレヤに比べるとやや硬質な声だが、響きといい音程といい申し分ない。
ベルコーレ役の与那城敬はナルシスト軍曹を好演。
もっと思い切った演技で遊んでもいいように思うが、丁寧な歌を聴かせた。
そして、ドゥルカマーラ役ブルーノ・デ・シモーネの芸達者ぶり。
早口言葉のアジリタは大変そうだが、どこまでも愉快そうにやってくれるのが良い。
パオロ・オルミの軽快な指揮で終始、陽気なオペラを堪能した。

02年のウーゴ・デ・アナ演出 ラ・ヴォーチェ版『愛の妙薬』では
舞台いっぱいに向日葵が咲いたっけ。
今日は行き帰りに色とりどりのチューリップを見た。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京バレエ団「オネーギン」... | トップ | 『音楽の友』5月号/フォア... »
最新の画像もっと見る

観劇」カテゴリの最新記事