劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

8月観劇雑感―おもむろ、かつ、駆け足で―

2010-09-01 11:55:48 | 観劇
もう9月だ。8月は暑過ぎたので極力外出をひかえ、だめだめな日々を送ったのだった。
それでも手帳を見返すと20以上観劇しているから、それなりに動いてはいた、のだろうか?

8月上旬はバレエのガラ公演が密集していた。
「エトワール・ガラ」、Kバレエカンパニー「NEW PIECES」、「バレエ☆アステラス」、「ローザンヌ・ガラ」…
バレエ団/ダンサーの新しい試みや、海外で活躍するダンサーの勇姿が観られ、収穫は多かった。

ストレートプレイでは、オウム/地下鉄サリン事件を題材にした野田地図『ザ・キャラクター』。
この題材を今扱うことが無駄だとは全く思わないが、
ギリシャ神話や書などの意匠ともっと有機的に結びつき、豊穣なイメージを紡いでほしかった。

また、『ロックンロール』は台詞劇の難しさを改めて感じた舞台。
でも、秋山菜津子、市村正親の存在感は素晴らしかったし、武田真治も好演していた。
一部のキャストの滑舌の悪さにはのけぞったが…。

なお、『精霊流し』と『広島に原爆を落とす日』は、ともに終戦記念日付近に観劇。
『精霊~』はきらびやかさと静謐さのバランスが好もしかった。
『広島~』ではつかこうへいの言葉を口にし、演じる筧利夫にうっとりした。

ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』@東京国際フォーラムホールC には心打たれた。
 マンハッタンで中南米系が多く住むワシントンハイツを舞台とする群像劇。
ラップやサルサに彩られながら、物語が息つくひまもないくらいのスピードで展開する。
ただのショーにならないのは、登場人物たちの姿がしっかりと造形されているから。
登場する老若男女それぞれにバランス良くスポットが当たり、私たちにも通じるドラマとなっている。

楽しさがバージョンアップした音楽劇『ガラスの仮面』@彩の国さいたま芸術劇場 も良かった。
 これは2年前の舞台の続編。2年前はエンジョイしつつも
「桜小路君、何故そんなに雨に濡れる?」「原作読んでないとわからんのでは」などと思ったものだが、
今回は、原作もいっそう盛り上がりを見せて来ている辺りでもあるし、
大和田美帆、奥村佳恵はひたむきで可愛いらしいし、夏木マリは圧巻だし、いやーもう、満喫した。
『ガラスの仮面』は素晴らしい少女漫画であるのみならず、
日本人の演劇観を考える上で無視できない存在である。このことについてもいずれ改めて書きたい。

一方、新橋演舞場の八月花形歌舞伎は全三部を3回に分けて観たが、
第三部『東海道四谷怪談』は海老蔵の伊右衛門が色悪に見えず、
まるで別のドラマに見える瞬間が少なからずあった。
獅童の直助も同様の理由によりいささか残念。
一方、勘太郎のお岩、七之助のお袖は健闘していて、見応えのある演技だった。
90歳の小山三が、おいろ役で元気な姿を見せたのも嬉しかった。

森山未來と辻本知彦によるきゅうかくうしお vol.0『素晴らしい偶然をもとめて』は、
原宿VACANTというコンパクトな空間での贅沢な催し。
踊りのほか台詞にタップ(未來)にと引き出しもいろいろ。
ただ、ふんだんなアイデアが、アイデアで終わってしまったかなという印象も。
予定調和的な内容にしたくなかった気持ち自体はよくわかるし、尊重したいけれども。

――振り返れば(既に書いた『キャンディード』「亀治郎の会」含め)、書ききれないほど充実していた8月。
9月は、交通費が悩ましい(笑)あいちトリエンナーレほか、これまたいろいろとひかえている。

ともあれ、一つでも多く、素敵な舞台と出会えますように。

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