節分前に言っておいた。「巻きずしは絶対買うな!!」
理由は一つ。うちの方ではこういうものを食べる習慣が昔から一切ないからである。
私は伝統的な習慣や祭り、風景、考えや方言、料理などは絶対残していくべきと思っている。こういうことを伝えていくことが文化であり、それが成熟した社会であると思っている。逆に、マスコミや噂に影響されて、どこかのもうけのために踊らされるのはすべきでないと思っている。この恵方巻き、昔からの習慣として守り伝えているところもあるのだろう。そう言う地方ではぜひ残していくべきだと思う。伝統が次に伝わっていってそのうえ儲かるんだから万々歳だ。でもうちは違う。そんな伝統はない。あるとしたら、お店が儲けるための戦略だけ。だから買うなと言っておいた。家人も子どもも買わないし食べることもしないと言っていた。
なのにこれは、、、子どもの友人の母がパートで勤めていて、「ノルマがあるから」といくらかの引受先を探していたらしい。子どもの友人は、『おまえんちに持って行くから受け取ってくれ。金はいらねぇ。』と連絡してきた。こっちが答える暇もないぐらいの強引な電話だったそうで、家族で「ほんまかなぁ」と思っていた。
節分の日の10時、ピンポンが鳴るので玄関に出てみるとこれが届いた。お金払うよと言うのを無視して、じゃぁなと帰って行ったそうだ。この友人H、昔から変なやつだったがなぜか子どもと仲がいい。中学の時の先生たちがなんでこの2人は仲がいいんだろうといぶかしがったぐらいだ。ある時Hが言ったそうだ。
「おまえは俺が困った時に(女の子なのだがこう言う)親切にしてくれたからな。いいやつだ。」
彼女が家にお金が無くて3日間ほとんど食べずに、お菓子を少しと給食だけで生きていた(マジ)時に、うちに遊びに来たHに子どもが余っていたドーナツを「おやつに持って帰れよ」と渡したらしい。もちろん子どもは相手がそう言う食生活をしていたとは知らなかった。たまたまあったからあげたらしい。
「あれをあれから三日間の食事にしたんだ」と、後で聞いたと教えてくれた。
そんなこともあってか、Hはうちになんかかんか持ってきてくれる。伊勢に旅行した時があって、親にも兄弟にも何もおみやげを買ってこなかったのに、うちにだけ買ってきてくれた。お金を持ってないのを知っていた子どもが、お小遣い持っていたのか、無理しなくていいのにと言うと、彼女は「3000円持っていたから、おまえんちに2000円で買ってきた」と言う。この友人もない女の子にとってうちは数少ない受け入れられる場所なのかも知れない。
Hのやつならみんなで食べないと。そう言って家族で分けて食べた。今度の3月で卒業だ。就職も決まった。困った時にはまたうちに来ればいい。他の大人とは全く口がきけないらしいが、うちの家族とは口がきける。その時には可愛いいい子なんだから。