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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「従軍慰安婦」記載に関する萩生田文相発言は検定審の専門的審査を無視した越権発言

2021年06月02日 | こども危機
  <萩生田大臣批判②>
 ◆ 「政府見解条項」からはあり得ない文科大臣の違法違憲答弁!
   皆さま     高嶋伸欣です


 「日本維新の会」と萩生田文科大臣などの連携し、歴史教科書から「従軍慰安婦」「強制連行」などの記述排除等を目指す策動が違法違憲行為であることの指摘の<その2>です。
 <欠陥 2>
 今回指摘する<欠陥>は、「検定基準」のいわゆる「政府見解条項」(以下、「近隣諸国条項」に合わせ「条項」表記とする)をこの件に適用して、教科書発行者に訂正申請を促している文科省の行為は、同「条項」でも重く位置づけている最高裁のある判決に抵触し、違法に当たるということを意味します。
 彼らは、「政府見解条項」を強調すればするほど自縄自縛の墓穴を掘っていることになります。
 1 ここでいう最高裁判決とは、第3次家永教科書訴訟の判決(1997年 8月29日、大野裁判長)で、
 「行政行為の執行に際し、法規の恣意的便宜的解釈と運用は職権乱用で違法である」との法治主義の大原則を再確認したものです。
 2 同判決によって30年余続いた家永教科書訴訟は賠償金40万円の支払いを命じられ、国側の敗訴で終わったのでした。
 それだけに、文部省(当時)の敗訴の打撃、それも心理的打撃は強烈で、今も初等中等教育局内ではトラウマとして引き継がれているはずです(同判決が国側にとってどれほど重い打撃となったか、詳しくは別途に説明することにして、本論を進めます)。
 3 念のために「検定基準」のいわゆる「政府見解条項」を再度確認しておきます。全文は以下の通りです。
 「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それに基づいた記述がされていること
 4 5月12日の衆議院文部科学委員会で、萩生田光一文科大臣は「維新の会」の藤田文武議員の質問に対し、次のように答えています。
 5 「教科書検定基準において、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていることが基準の一つとされております。
 今回、御指摘のような従軍慰安婦や強制連行、強制労働の表現に関する質問主意書の答弁書が閣議決定されたことを受け、今年度の教科書検定より、教科書検定調査審議会において、当該政府の統一的な見解を踏まえた検定を行ってまいりますので、今後、そういった表現は不適切ということになります」と(以後「5・12答弁」)。
 6 答弁では「検定審議会において」と言いながら、この件について同審議会での諮問・答申などの手順を一切していないまま「今後、そういった表現は不適切ということになります」と、明言しています。
 7 日頃、検定意見についての疑問・問題点を衝かれると「検定は、検定審議会における専門的学術的な審査によって遂行されているのいるので、文科大臣として口出ししたり、検定意見の適否について答える立場にない」との建前論をもって、責任回避を図っているのと真逆の発言です。
 8 検定審議会が文科大臣や官僚たちによる教科書記述への政治的介入の隠れ蓑として利用されている一種の御用組織であることは、関係者であれば周知の事柄です。
 文科省内や文科大臣も当然熟知していながら、省外ではあくまでも建前論を口にするだけという”ルール”を維持することが文科省官僚や文科大臣たちの厳守事項としてされているはずです。
 9 ところが今回、なれ合い質疑の場という気の緩み故か、公開の場である国会でタブー破りの発言をしてしまったのでしょう。明らかに失言です。
 同様の不都合発言を、文科省の上級官僚である総括審議官もこの前後にしています。
 嘘やごまかしはいつまでも続けられるものではないはずです。
 ましてや道徳教育を司る文科省において、嘘説明を半世紀以上続けているのですから恥ずかしい限りです。
 10 「天網恢恢疎にして漏らさず」とも言います。悪事には遅かれ早かれ罰が下るのです。せめて他者から指摘される前に改める倫理観を期待したいものです。
 ちなみに、この嘘を、今回の萩生田氏の失言を機に打ち破ることも考えられます。そうなれば、萩生田氏のこの失言は大功績ものです。
 11 ともあれ、建前論に反した越権発言の責任については、別途に追及するつもりです。ここは問題点の指摘だけにして、「政府見解条項」が適用できるとの主張は違法で、最高裁判例に反している点の追及を続けます。
 12 萩生田大臣は、『答弁書』が閣議決定されたことをもって、同「条項」の適用が可能であり、「今後、そういった表現は不適切になります」との結論を導きだしています。
 13 けれども、「条項」にある「基づいて」とは、法律用語では「必ずその通りにすることを義務付けているものではない」とされています(『法律用語辞典』)。
 また、26日の文科委員会での畑野君枝議員の質問に対して文科省審議官が、同様に解釈すべきものであると答弁しています。
 14 さらに、この「政府見解条項」を新たに「検定基準」に加える案を諮問した検定審議会(2013年11月22日、12月20日)の場で、委員からの確認質問に対して、下記のように文科省側が同様の意味であるとの説明をしたことが、「議事録」に記載されています。
 15 「政府の統一的な見解や判例がある場合には、それらに基づいた記述が取り上げられていることを定めてはどうかということでございます。これは、政府の統一的な見解とは異なる見解を排除するという趣旨ではございませんので、政府の見解と異なる見解を記す場合には、政府の見解はこうであるということにも触れていただくことによって、バランスのとれた理解を児童生徒にしていただくということになるのではないかという趣旨でございます。」(11月22日、教科書課企画官の原案説明、下線は高嶋が記入、以下同じ)
 16 「我々としては、意見が分かれていることについて政府の統一的な見解がある場合には、それに基づいた記述もしてくださいということで、我々の意図としては、」「それに異なる考え方を記述してはいけないということまで求めていることではないというのは、これまでも大臣も会見などでもお話をしております」「見解が分かれていることについて、記述する際には、これまで政府見解について十分な配慮がなされていないものが仮に今後出てきた場合については、そういう記述も併せてきちんと記載していただくということをきちんと検定基準として求めていきたいという趣旨でございます。」(12月20日、永山教科書課長の補足説明)。
 17 以上の資料確認等から、「政府見解条項」をどのように解釈しても、「今後そういった表現は不適切ということになります」という大臣答弁は成り立ちえないことになります。
 通常の日本語使用能力があれば、中学生でも認識できる不当性で、こじつけであるのは明らかです。
 18 これは先に指摘した最高裁判決にいう「法規の恣意的便宜的な解釈」に該当する職権乱用ですから、判決が認定した「違法な行政行為」に該当します。
 19 しかも、この文科委員会答弁から数日後には、初等中等教育局から歴史教科書発行者に対して、「政府見解条項」に則したとするこの時の答弁に合わせた訂正申請手続きをするように促す”指導(事実上の指示・強要)”を実施したことが分かっています。
 20 情けないことに、文科省の官僚は萩生田大臣に「最高裁判決に抵触しています」と諌言するのではなく、「法規の恣意的便宜的な解釈」からさらに違法・違憲な「運用」者になってしまっているのです。
 21 文科省の官僚は「虎(首相や文科大臣など)の威を借るキツネ」の伝統的手法を駆使していると、元文科省官房長の加戸守行氏が恥じることなく国会で豪語したのは、2017年7月の加計学園問題審理の時でした。
 その暴力団・ヤクザ同様の伝統的手法を現在の文科省官僚が、現在も確実に継承していることを証明している事案です。
 22 さらに情けないのは、『産経新聞』以外のマスコミの無関心、意識の低さです。『産経』は、萩生田大臣の答弁で「鬼の首を獲った」かのように勢いづき、歪曲報道を確信犯的に継続しています。
 他社の教育担当や国会担当の記者が萩生田大臣・文科省官僚たちの答弁や関連の行政行為が違法・違憲であることに気付いているのかさえ、疑われます。
 23 今からでも遅くないので、『産経』以外の社の担当記者とデスクは、この件における一連の策動の経過と実態を精査して、その違法・違憲性を明らかにする取材・報道に着手すべきです。
 24 それが民主主義を侵すものを阻止するだけでなく、「蛇ににらまれたカエル」同然の立場の教科書発行者という弱者に寄り添うという、ジャーナリズム本来の役割を果たすことにも通じるのですから。
 25 一方、我々はこの違法・違憲の行政行為の是正を頼りないマスコミ任せにするほどのお人好しではありません。
 我々にも歯止めを掛ける手段があります。その一つは、監査請求から住民訴訟を起こすというものです。
 26 今回の策動を引き起こした藤岡「つくる会」が最大の目標に据えているのが、山川出版中学歴史教科書に登場した「いわゆる従軍慰安婦」という記述を排除することにあるのは、周知のことです。
 当然、文科省の「訂正申請」の”指導”は山川出版に対してことさらに強くなされていることは、想像に難くありません。
 それでも、前出のように”指導”の根拠とされる「政府見解条項」の解釈と運用が違法・違憲であるのだから、山川出版が”指導”に従う法的な義務は、本来ありません
 27 それでも、”指導”に基づいた何らかの「訂正申請」手続きがされる可能性が高いです。”指導”に従わなければ、同社の他の教科書検定でどんな仕打ちをされるか分からないという不安に今後苛まされ続けることになるのです。
 それが「虎の威を借るキツネ」の手法を継承して恥じず、主体性を欠く上級官僚が支配する文科省の教科書検定行政の実情なのです。ここでも脅しの行政が継承されています。
 28 そうした陰湿で不当な圧力下の”指導”による「訂正申請」を経て、2022年度用の山川版中学歴史教科書は記述を一部改変され、生徒の手に渡されます。
 生徒用の分については、教科書無償法によって国費で買い上げられるますが、その一方で、教員用の供給本の代金には無償法が適用されません。
 29 そうなると、山川版中学歴史教科書を選定し、都教委が採択した都立中高一貫校の教師用供給本は東京都の公費で購入することになります。
 そのことは、東京都民であれば違法・違憲な文科省の教科書行政措置(正誤訂正は教科書検定の一環で、教科書検定は行政処分行為であることが裁判で確定している)によった同書の教師分の公費支出は不当であるとの、監査請求の論拠が得られることを意味しています。
 30 そこでまず監査請求をします。これまでの事例から、却下される確率が高いです。けれどもその段階で、監査を請求した住民はその決定を不服とする住民訴訟を起こす原告資格を自動的に得たことになります。
 31 かくして、我々は改めて今回の一連の策動の不当性や違法違憲の指摘を無視する文科省との対等の議論の場を、マスコミ等を頼ることなく獲得し、文科省側の様々な<欠陥>違法違憲行為を追及できることになります。
 32 文科省官僚がこうなることを覚悟の上でなお萩生田路線に従うのであれば、それはそれの一つの生き方です。けれども、法廷という公開の場で違法違憲の事実の指摘や責任追及を回避したいならば、憲法15条2項「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者でない」の理念に立ち、萩生田大臣らの誤りを是正させる途を選ぶしかないはずです。
 33 そのことを<欠陥 2>は示している。
 これが今回の<萩生田大臣批判②>の結論です。

 以上は高嶋の私見です  ご参考までに   拡散・転送は自由です


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