10.26予防訴訟控訴審結審 弁護団陳述篇<2>
◎ 事実認定にあたって留意すべき点について
私どもは国旗国歌自体を争っているわけではありません。あくまで,卒業式・入学式等における画一的な「強制」を争っています。
本件訴訟は,処分が出る前の段階で予防的に10.23通達の違憲無効性を確認するために提訴されました。本件の事案は,平成19年のピアノ伴奏拒否に関する最高裁の事案と全く異なっております。すなわち,10.23通達の存在という点こそが本件の核心部分です。
本件では,東京都教育委員会が10.23通達を発令し,「処分の脅し」を以って,200校以上あるすべての都立学校が一律に,「都教委が適正と者えるやり方のみを」「画一的に」「強制される」という事案です。この点で,一人の学校長が職務命令を発令した事案とは大きく性質を異にします。
私たちの最大の願いは,一審判決の維持です。では一審判決は,なぜ原告勝訴の結論に至ったのでしょうか。その最大の要因は,なんといっても事実の持つ重みと思います。石原都知事の下,東京都の行政は,教育現場への不当な介入を繰り返してきました。その介入の現実は想像を絶するものがあります。一審は,その事実を慎重に分析した上で,東京都の行為は許されない介入であるとしたものです。
控訴人は,職務命令は,校長の責任と権限により発令されたと主張しますが,校長の裁量により発令されたとは言っておりません。それはそうです。案際には校長に,職務命令を発令しない裁量などなかったのです。現に,200校以上ある都立学校の校長で職務命令を発しなかった校長はこれまで一人もおりません。
また,さらに一審において,都教委の巽証人は,通達の下において校長が有する裁量の例として,国旗の高さや大きさと証言しました。このような証言自体で,校長の裁量がないことがお分かり頂けるかと思います。是非,巽証人調書は再度お読み頂きたいと存じます。
10.23通達は,学習指導要領を無視して,周年行事に適用されました。
周年行事は卒業式・入学式と異なり,生徒にとって新しい生活の展開への動機付けとなる行事ではないので,学習指導要領が想定する儀式的行事ではありません。では,なぜ,東京都は卒業式でも入学式でもなく,最初に周年行事に通達を適用したのでしょうか。
それは,200校以上の都立学校に対して一律に通達を適用する前に,いわば試験的に通達の運用を確認しておくサンプルが必要であったからです。周年行事であれば,一度にまとまった人数の職員を周年行事実施校に大量に派遣して,監視体制を引くことができるわけです。
乙41号証の14の足立西高校の校長の証言を再確認して頂きたいと思います(甲466-469参照)。なんと,通達の適用第一号である足立西高校には都教委の指導主事ら計8名ないし9名が派遣されています。
そして,同校長の証言によれば,職務命令の雛形が都教育庁からファクシミリで送られてきたとのことです。足立西高校では,東京都の介入により職務命令書の第一号が完成しました。都教委自身が職務命令書を作成し,その上で足立西高校の校長が判を押しただけという可能性もあります。その都教委の支配の下に作成された職務命令書が校長連絡会などにおいて各学校長に配布されました(甲212の1~5)。
何校かの周年行事で通達の強制適用のノウハウを得た都教委は,通達後初の卒業式に向けて,全校長に対し,指導という名の下に徹底した介入を行います。
巧妙なのは通達に書いていない事項を強制するために,各校長に対してくりかえし指導という名の介入を行っている点です。都庁に校長を呼び出すこともあれば,指導主事らが各校を訪問することもあります(甲178の25,26,50)。
その実態は,第一審にて,塚内元校長が詳細に証言しております(甲210)。また渡部校長の証人調書も証拠提出されております(甲262)。元校長にとって,証言することは不利益の原因になることはあっても,メリットは全くありまぜん。だからこそ,そのような状況での証言は信用性が最も高いといえるでしょう。そのような観点から,塚内証言を再度,熟読して頂きたいと思います。
職務命令のチェック,実施要綱のチェック,当日の主事を派遣しての監視,不起立教員がいた場合の事故報告書のチェックなど,都教委の現場介入はすさまじいものがあります。
都教委が学習指導要領に言及するのは単に,学習指導要領を隠れ蓑にしているだけです。現に,学習指導要領とは関係なく,国旗を三脚に立てる方式を禁止し,教員の席を指定席とし,ピアノ伴奏を強制し,生徒に対する内心の自由の説明を禁止し,卒業生と在校生が向き合う形での対面式を禁止し,時季変更権の行使への対応を逐一指示するなどなどやりたい放題です。
国歌国旗を実施するにしても,各学校の実情に沿ったやり方が許容されるべきですが,10.23通達が発令され,各校の実情の反映が全く認められていない点を我々は問題にしております。是非,塚内証言,渡部証言を詳細にお読みいただきたいと存じます。また都立保谷高校の校長が作成した校内資料(校務通信)にも都教委の介入の詳細が記載されています(甲203の2)。
最後に,10.23通達の内容及び実施方法は,対策本部で議論されておりますが,その恣意的な判断の内容を是非,再度お読み頂きたいと思います。
通達は,各校長の裁量を奪うために,「文言にふくみをもたせないようにする」という方針で制定されていることが対策本部の資料から分かります。
特に,通達発令の直前である10月17日の第三回対策本部の記録は東京都の恣意性が浮き彫りになっており,とても重要です(甲19,161,203の1,256-259,266の1)。
◎ 事実認定にあたって留意すべき点について
代理人 山中眞人
私どもは国旗国歌自体を争っているわけではありません。あくまで,卒業式・入学式等における画一的な「強制」を争っています。
本件訴訟は,処分が出る前の段階で予防的に10.23通達の違憲無効性を確認するために提訴されました。本件の事案は,平成19年のピアノ伴奏拒否に関する最高裁の事案と全く異なっております。すなわち,10.23通達の存在という点こそが本件の核心部分です。
本件では,東京都教育委員会が10.23通達を発令し,「処分の脅し」を以って,200校以上あるすべての都立学校が一律に,「都教委が適正と者えるやり方のみを」「画一的に」「強制される」という事案です。この点で,一人の学校長が職務命令を発令した事案とは大きく性質を異にします。
私たちの最大の願いは,一審判決の維持です。では一審判決は,なぜ原告勝訴の結論に至ったのでしょうか。その最大の要因は,なんといっても事実の持つ重みと思います。石原都知事の下,東京都の行政は,教育現場への不当な介入を繰り返してきました。その介入の現実は想像を絶するものがあります。一審は,その事実を慎重に分析した上で,東京都の行為は許されない介入であるとしたものです。
控訴人は,職務命令は,校長の責任と権限により発令されたと主張しますが,校長の裁量により発令されたとは言っておりません。それはそうです。案際には校長に,職務命令を発令しない裁量などなかったのです。現に,200校以上ある都立学校の校長で職務命令を発しなかった校長はこれまで一人もおりません。
また,さらに一審において,都教委の巽証人は,通達の下において校長が有する裁量の例として,国旗の高さや大きさと証言しました。このような証言自体で,校長の裁量がないことがお分かり頂けるかと思います。是非,巽証人調書は再度お読み頂きたいと存じます。
10.23通達は,学習指導要領を無視して,周年行事に適用されました。
周年行事は卒業式・入学式と異なり,生徒にとって新しい生活の展開への動機付けとなる行事ではないので,学習指導要領が想定する儀式的行事ではありません。では,なぜ,東京都は卒業式でも入学式でもなく,最初に周年行事に通達を適用したのでしょうか。
それは,200校以上の都立学校に対して一律に通達を適用する前に,いわば試験的に通達の運用を確認しておくサンプルが必要であったからです。周年行事であれば,一度にまとまった人数の職員を周年行事実施校に大量に派遣して,監視体制を引くことができるわけです。
乙41号証の14の足立西高校の校長の証言を再確認して頂きたいと思います(甲466-469参照)。なんと,通達の適用第一号である足立西高校には都教委の指導主事ら計8名ないし9名が派遣されています。
そして,同校長の証言によれば,職務命令の雛形が都教育庁からファクシミリで送られてきたとのことです。足立西高校では,東京都の介入により職務命令書の第一号が完成しました。都教委自身が職務命令書を作成し,その上で足立西高校の校長が判を押しただけという可能性もあります。その都教委の支配の下に作成された職務命令書が校長連絡会などにおいて各学校長に配布されました(甲212の1~5)。
何校かの周年行事で通達の強制適用のノウハウを得た都教委は,通達後初の卒業式に向けて,全校長に対し,指導という名の下に徹底した介入を行います。
巧妙なのは通達に書いていない事項を強制するために,各校長に対してくりかえし指導という名の介入を行っている点です。都庁に校長を呼び出すこともあれば,指導主事らが各校を訪問することもあります(甲178の25,26,50)。
その実態は,第一審にて,塚内元校長が詳細に証言しております(甲210)。また渡部校長の証人調書も証拠提出されております(甲262)。元校長にとって,証言することは不利益の原因になることはあっても,メリットは全くありまぜん。だからこそ,そのような状況での証言は信用性が最も高いといえるでしょう。そのような観点から,塚内証言を再度,熟読して頂きたいと思います。
職務命令のチェック,実施要綱のチェック,当日の主事を派遣しての監視,不起立教員がいた場合の事故報告書のチェックなど,都教委の現場介入はすさまじいものがあります。
都教委が学習指導要領に言及するのは単に,学習指導要領を隠れ蓑にしているだけです。現に,学習指導要領とは関係なく,国旗を三脚に立てる方式を禁止し,教員の席を指定席とし,ピアノ伴奏を強制し,生徒に対する内心の自由の説明を禁止し,卒業生と在校生が向き合う形での対面式を禁止し,時季変更権の行使への対応を逐一指示するなどなどやりたい放題です。
国歌国旗を実施するにしても,各学校の実情に沿ったやり方が許容されるべきですが,10.23通達が発令され,各校の実情の反映が全く認められていない点を我々は問題にしております。是非,塚内証言,渡部証言を詳細にお読みいただきたいと存じます。また都立保谷高校の校長が作成した校内資料(校務通信)にも都教委の介入の詳細が記載されています(甲203の2)。
最後に,10.23通達の内容及び実施方法は,対策本部で議論されておりますが,その恣意的な判断の内容を是非,再度お読み頂きたいと思います。
通達は,各校長の裁量を奪うために,「文言にふくみをもたせないようにする」という方針で制定されていることが対策本部の資料から分かります。
特に,通達発令の直前である10月17日の第三回対策本部の記録は東京都の恣意性が浮き彫りになっており,とても重要です(甲19,161,203の1,256-259,266の1)。
以上
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