『東京新聞』ニュースの追跡 【都立板橋高校卒業式「妨害」事件】
★ 「証拠改ざん疑い」
同一音源の報告書 起訴前後で相違
東京都立板橋高校の卒業式で「君が代」斉唱への反対を保護者に訴えた元同校教諭が威力業務妨害罪に問われた事件。被告の元教諭と支援グループは2日、上告中の最高裁に「検察側の証拠が改ざんされた疑いがある」と憤重審理を要請した。大阪地検特捜部による押収資料改ざん事件の余波ともいえそうだ。(田原牧)
★ 「慎重審理を」・支援者 最高裁に要請文
要請文はルポライターの鎌田慧さんらが呼びかけ人を務める「藤田先生を応援する会」が作成、最高裁あてに提出した。
この事件は二〇〇四年三月に起きた。板橋高校の卒業式で来賓として招かれていた同校元教諭の藤田勝久被告が「君が代」の強制に反対し、開会前に日の丸、君が代問題を扱った週刊誌の記事コピーを配布し、保護者に不起立を呼びかけた。
この行動が式典の始まりを数分遅らせたとして藤田元教諭は威力業務妨害罪に問われた。弁護側は「言論弾圧で公訴権の乱用だ」と無罪を主張したが、〇六年五月の一審東京地裁判決は罰金二十万円(求刑懲役八月)、○八年五月の二審の東京高裁判決も一審を支持。被告側は上告している。
要請文は「表現の自由」「思想信条の自由」の重視を訴えるとともに、検察側の証拠に疑問があると指摘している。
これは事件当時、都教育委員会の指導主事が現場で録音したICレコーダーの記録。警視庁公安二課の警察官が録音を文字化したが、異例にも起訴前と起訴後に分析結果報告書が計二通作られ、ともに証拠採用された。
起訴後の報告書には会場の見取り図や写真などが新たに添付されているが、問題は音源が同一であるにもかかわらず、文字化した録音内容の一部が二通で異なる点だ。
起訴前の作成分には藤田被告が退席を迫る校長に対し、「何で俺が出るんだおい」と話しているが、起訴後作成分にはその言葉がなかった。
この間題点については一審で弁護団が注目。第四回公判(〇五年六月)で、報告書を作成した警察官を尋問した。
警察官はあえて報告書をもう一通作ったのは検察官の依頼だったとし、内容の違いについては「意図的ではない」「記憶にないが、(音源を起こした際に)メモを取り忘れた可能性がある」と証言。しかし、それ以上のやりとりはなかった。
ただ、「メモの取り忘れ」だったとしても不自然だ。というのも、弁護団は起訴後、検察側から音源のコピーを入手しているが、そこには「何で俺が…」という言葉はなかった。
藤田被告は「もともと音源になかった言葉を(起訴前の)報告書になぜ、書けたのか。むしろ、ICレコーダーの音源自体が起訴後に改ざんされたのではないか」と疑念を深めている。
「私自身には『何で俺が…』と口にした記憶がある。私は来賓なのに、という意味だった。しかし、起訴状は男が勝手に式典で騒いだという筋書きだった。“悪質な事件”と印象付けるのに、来賓を意味する言葉が邪魔だったのではないか」
ちなみに報告書を作った警察官は、公判での尋問で音源が改ざんされた司能性を否定した。
今回、あらためてこの疑問を強調した要請文を提出した理由について、支援者たちは大阪地検特捜部による押収資料改ざん事件に言及。板橋高校卒業式事件でも、検察側が提出した証拠の十分な再検証を求めている。
『東京新聞』(2010/11/5【ニュースの追跡】)
★ 「証拠改ざん疑い」
同一音源の報告書 起訴前後で相違
東京都立板橋高校の卒業式で「君が代」斉唱への反対を保護者に訴えた元同校教諭が威力業務妨害罪に問われた事件。被告の元教諭と支援グループは2日、上告中の最高裁に「検察側の証拠が改ざんされた疑いがある」と憤重審理を要請した。大阪地検特捜部による押収資料改ざん事件の余波ともいえそうだ。(田原牧)
★ 「慎重審理を」・支援者 最高裁に要請文
要請文はルポライターの鎌田慧さんらが呼びかけ人を務める「藤田先生を応援する会」が作成、最高裁あてに提出した。
この事件は二〇〇四年三月に起きた。板橋高校の卒業式で来賓として招かれていた同校元教諭の藤田勝久被告が「君が代」の強制に反対し、開会前に日の丸、君が代問題を扱った週刊誌の記事コピーを配布し、保護者に不起立を呼びかけた。
この行動が式典の始まりを数分遅らせたとして藤田元教諭は威力業務妨害罪に問われた。弁護側は「言論弾圧で公訴権の乱用だ」と無罪を主張したが、〇六年五月の一審東京地裁判決は罰金二十万円(求刑懲役八月)、○八年五月の二審の東京高裁判決も一審を支持。被告側は上告している。
要請文は「表現の自由」「思想信条の自由」の重視を訴えるとともに、検察側の証拠に疑問があると指摘している。
これは事件当時、都教育委員会の指導主事が現場で録音したICレコーダーの記録。警視庁公安二課の警察官が録音を文字化したが、異例にも起訴前と起訴後に分析結果報告書が計二通作られ、ともに証拠採用された。
起訴後の報告書には会場の見取り図や写真などが新たに添付されているが、問題は音源が同一であるにもかかわらず、文字化した録音内容の一部が二通で異なる点だ。
起訴前の作成分には藤田被告が退席を迫る校長に対し、「何で俺が出るんだおい」と話しているが、起訴後作成分にはその言葉がなかった。
この間題点については一審で弁護団が注目。第四回公判(〇五年六月)で、報告書を作成した警察官を尋問した。
警察官はあえて報告書をもう一通作ったのは検察官の依頼だったとし、内容の違いについては「意図的ではない」「記憶にないが、(音源を起こした際に)メモを取り忘れた可能性がある」と証言。しかし、それ以上のやりとりはなかった。
ただ、「メモの取り忘れ」だったとしても不自然だ。というのも、弁護団は起訴後、検察側から音源のコピーを入手しているが、そこには「何で俺が…」という言葉はなかった。
藤田被告は「もともと音源になかった言葉を(起訴前の)報告書になぜ、書けたのか。むしろ、ICレコーダーの音源自体が起訴後に改ざんされたのではないか」と疑念を深めている。
「私自身には『何で俺が…』と口にした記憶がある。私は来賓なのに、という意味だった。しかし、起訴状は男が勝手に式典で騒いだという筋書きだった。“悪質な事件”と印象付けるのに、来賓を意味する言葉が邪魔だったのではないか」
ちなみに報告書を作った警察官は、公判での尋問で音源が改ざんされた司能性を否定した。
今回、あらためてこの疑問を強調した要請文を提出した理由について、支援者たちは大阪地検特捜部による押収資料改ざん事件に言及。板橋高校卒業式事件でも、検察側が提出した証拠の十分な再検証を求めている。
『東京新聞』(2010/11/5【ニュースの追跡】)
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