パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

非正規教員の割合を減らしていくことが早急に求められる

2022年06月22日 | こども危機
 ◆ 学校だよりで「教師の募集」、
   教員不足で過労の「ドミノ倒し」が起こる
(東洋経済オンライン)


 公立学校では非正規雇用の教員が増え続けている。その数は全国の公立学校で5~6人に1人に上る。教師という職業に、いったい何が起きているのか。
 特集「『非正規化』する教師」の第3回は、非正規教員へ依存が引き起こす教師不足の実態に迫る。
 ※ 第1回:子供も親も知らない「卒業式にいない先生」の正体
 ※ 第2回:文科省が蓋をする「教師の非正規率」の衝撃実態
 「先日、うちの学校は学校だよりで教師の募集をかけた」

 学校現場からはこんな驚くような話が聞かれる。
 「教師募集」と書かれた学校だよりを受け取った保護者は、「うちの学校は大丈夫なのか」と不安になったに違いない。だが、そんなことは言っていられないほど、教師不足は深刻なところにきている。
 ここ数年、4~5月になると新聞やテレビなどで「教員不足」が報じられることも多い。たとえば、小学校では担任が配置できず、教務主任が代役を務めるなどの事態も各地で起きている。
 中学校においても年度当初に英語科の教員が配置できず、4月は英語を外して時間割を組み、英語の授業は教員が配置された後に時間割を組み直して対応するなどの事例が報告されている。
 ◆ 非正規依存が教師不足の原因?

 とはいえ、現状ではどの自治体も、教員採用試験が定員割れを起こしているわけではない。小学校は低倍率の自治体が多いが、かろうじて定員を受験者が上回る1.0倍台はキープしている。それなのに、なぜ教員が不足するのか。
 実は背後には、「非正規教員への依存」の問題がある。公立学校教員の非正規率の上昇に連動する形で、教師不足は深刻化の一途をたどってきたのだ。
 現状どの自治体も正規教員と非正規教員を雇っている。毎年度、定年退職や産休・育休・病休の増加などによって正規教員に一定数の欠員が生じる。この分は、毎年夏に行われる教員採用試験の合格者によって補充される。つまり、正規教員だけに限れば、教師不足は生じていない。
 問題は全体の2割近くを占める非正規教員のほうだ。こちらも毎年度、一定数の離職者が出るが、この分はどの自治体も非正規教員で補充している。
 具体的には、教員採用試験の不合格者などに声をかけ、ごく簡単な選考を通じて臨時的任用教員(常勤講師)として雇用している。
 ところが昨今は教員採用試験の受験者数が減ったことで、不合格者の数がそもそも減少している。加えて不合格者の中には、民間企業に就職する者も少なくない。その結果、多くの自治体が辞めた非正規教員の代わりを補充できないでいる。
 この状況を改善するための方策は、大きく2つある。
 1つ目は採用試験の受験者を増やすこと、
 2つ目は採用試験の合格者数を増やして非正規率を下げることだ。

 1つ目については昨今、教員の過酷な勤務実態が明らかになり、受験者数は減少し続けている。
 文科省では2021年からツイッターなどで教職の魅力を教師に発信してもらう「#教師のバトン」プロジェクトを始めた。が、その狙いに反して過酷な労働環境を訴える投稿が相次ぎ、状況は好転するどころか悪化傾向にある
 2つ目の採用試験の合格者を増やすことは、各自治体の裁量次第で実施できる。だが、各自治体が抱える厳しい財政状況から、現状はどの自治体もそうした方向性に舵を切っていない。
 小泉内閣が推進した「三位一体改革」により、2006年に義務教育費国庫負担金が「2分の1」から「3分の1」となって以来、各自治体の教育財政は脆弱なものとなっているからだ。
 加えて少子化が進む中で、どの自治体も将来的な人員余剰を恐れ、教員の一定数を非正規で雇用して「調整弁」としている。(詳細は「文科省が蓋をする『教師の非正規率』の衝撃実態」)https://toyokeizai.net/articles/-/596089
 ◆ 「講師登録」される非正規教員が減少

 採用試験に不合格になった人の多くは、臨時的任用教員として働くことを希望し、教育委員会に「講師登録」を行う。そして、教育委員会はこの「講師バンク」から適任と思われる人に声をかけ、簡単な選考を経て採用する人を決める。
 ところが、昨今はこの講師バンクの登録者が少なく、あっという間に不足する状況が各自治体で相次いでいる。
 「4月を迎える前の段階で、うちの自治体の『講師バンク』は貯金ゼロの状態だと聞いた」
 「毎年、うちの学校では4月頭の職員会議で、『教員免許状を持っていて働ける人がいたら教えてください』と校長が言うのが恒例となっている」
 これらはいずれも、現場の管理職や教員の証言だ。冒頭のように学校だよりで教師を募集するほど、教員不足は深刻化しているのだ。
 教師不足は、教師の多忙に拍車をかける。
 例えば、小学校で教務主任が担任になれば、教務主任としての業務はほかの教員が分割して担わなければならない。
 また、専科の教員が担任になれば、ほかの教員の空き時間は減少する。

 そうなれば過重労働に拍車がかかり、負荷が増した教師が過労で倒れる「ドミノ倒し」が起きてしまいかねない。
 そうした事態を防ぐためにも、非正規教員の割合を減らしていくことが早急に求められる
 ◆ 教育活動のストップを余儀なくされかねない

 常勤の非正規教員は、正規教員とほぼ同じ内容と責任の仕事を負わされるにもかかわらず、待遇面では正規教員に劣っている。
 自治体によって差はあるが、給与額やその昇給幅、有給休暇、退職金などは、おおむね正規教員に比べて悪い。
 加えて、有期雇用という弱い立場につけ込まれ、時には問題のあるクラスや面倒な校務を担当させられることもある。
 そのうえ、いつ雇用契約が途絶えて失業するかもわからない。残業手当は一切出ないが、月100時間を超える残業を強いられることもある。
 これほど理不尽な立場なうえに有期雇用契約となれば、とうに見限られていてもおかしくない。なぜ、そんな不条理な仕事を続けるのか。非正規教員にそう聞くと概ね次のような答えが返ってくる。
 「転職も考えたが、やはり正規教員への夢が諦めきれない」
 「教師を何年も続けていると、他業界への転職が難しい」
 「転職活動もしたが、なかなか内定がもらえなかった」

 このような理由もあって、多くの非正規教員は、どうにか教師という職業にとどまっている。その結果、教師不足は起きているものの、ぎりぎりのところで公教育は機能不全を起こさずに済んでいる。
 しかし、このまま非正規教員に依存し続けていたら、教育活動のストップを余儀なくされかねない。
 そうならないためにも、公立学校の非正規化を食い止め、正規率を高めていくことが必須となる。
佐藤明彦 :教育ジャーナリスト

『東洋経済オンライン』(2022/6/18)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a47aa9a092b2b3a66c0f1b4cc1ca649b347345e0
コメント    この記事についてブログを書く
« 2020オリンピック災害おこと... | トップ | 福島原発事故被害者への医療・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

こども危機」カテゴリの最新記事