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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

大学入試制度改革の右往左往、全国一斉休校など政治介入で振り回された子どもたちと高校現場

2021年06月28日 | こども危機
  《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
 ◆ 2021年大学入試の歴史的混乱
武田泰彦(たけだやすひこ 千葉県公立高校教諭)

 そもそも2021年春の大学入学生を迎える入試では、ながく続いた「大学入試センター試験」が「大学入学共通テスト」に変わるという、それなりに大きな制度変更が予定されていた。
 この制度変更も、本来高校までの学校教育の内容の基準である「学習指導要領」の改訂施行後の2026年から行われるのが筋であるはずだが、先行して入試制度の方が新しくなるという拙速そのものの時期での実施となった。
 この制度の引き回しをおこなったのは言うまでもなく第二次安倍内閣であり、陣頭指揮したのが自らも塾経営者出身で民間教育産業の利益代表と言ってよい下村博文文部科学大臣であった。
 その結果、安倍政権の存続中に、この入試制度変更に対応するためのサービスの多額の購入代金が、民間教育産業の懐に転がり込んだわけである。
 ところが、この入試制度改革の目玉であった、大学入学共通テストに伴う英語4技能民間試験の義務化と国語・数学のテスト記述式問題の導入が相次いで否定されたのが2019年11月と12月であった。
 大学入試はそれなりの準備を経て臨むべきものであり、文部科学省は各大学に入試制度の変更は2年前に周知するよう強く指導して来たが、この決定はそれを自ら破る恥知らずな行為であり、本来なら大臣や担当官僚の更迭に値する不祥事であったが、責任をとった者はいなかった。
 筆者の勤務校では、ベネッセが制度変更に伴って盛んに売り込んだ4技能試験「GTEC(ジーテック)」を一切導入しなかったことで金銭的損害は軽いほうではあったが、それでも直前まで準備を進めていた「大学入試英語成績提供システム(大学入試センターが複数の4技能試験の結果をとりまとめ大学に伝達するシステム)」の申込書の取り寄せにかかった数千円の公金と、その説明や申込書記入の指導に費やした貴重な時間と労力は直接的な被害であった。
 それについての補償も謝罪も、教員はもちろん、一番の被害者である生徒や保護者が一切受けていないことは言うまでもない。
 ◆ 官僚や政治家による教育制度の引き回し

 さらに追い打ちをかけたのが、コロナ禍である。
 効果に関する根拠が全く不明なまま、当時の安倍首相の思い付きとしか考えられない決断で突如2020年3月から始まった休校措置は、年度が明けてからも継続し、登校が再聞されたのは3カ月後の6月からであった。
 この間に奪われた児童・生徒の「教育を受ける権利」については、今もって何の補償も、合理的な説明もなされていない。
 この休校期間中、突如として「9月入学」の導入が議論され、混乱に輪をかけたことも入試学年の生徒には大きな心理的負担になったであろう。
 この間、私たち現場教員は、在宅の児童・生徒に課題を与え自習の指導を行い、学習の遅れを最小限に留めるよう奔走していたことは言うまでもない。
 混乱に最後の燃料を注いだのは、6月末の大学入学共通テストの日程追加であった。わずか2週間入試日をずらしたところで3カ月の遅れを取り戻せる道理もないのに、入試の半年前に日程を変更するという愚行に踏み切ったのも政治決定
 その結果、「どちらの日程で受けるか」を考え、決める労力が受験生に余計にかかり(当然それを促す労力が教員にかかった)、多くの私立大学は結果発表の日程変更をせざるを得なくなった。
 さらに、成り行き任せの「GoToキャンペーン」の結果、年明け以降の入試は全国を襲ったコロナ第3波とそれに対応する緊急事態宣言下で行われることとなり、受験生とその家族、入試を実施する教育機関の心理的、実務的負担はいかばかりであったか。
 今回の混乱は、学校現場の勤務経験はおろか、教員免許すらも持たない官僚や政治家による教育制度の引き回しに制度的歯止めを求める良い機会と考える。そしてそれは、同様にコロナ禍への対応についても言えることでもあろう。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 138号』(2021.6)

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