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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

神奈川県下の教育委員会の劣化

2016年10月04日 | こども危機
 ◆ 神奈川の「日本会議」の動向と実教・育鵬社教科書採択 (教科書ネット21)
柴田 健(教科書・市民フォーラム)

 ◆ 神奈川全域が「日本会議」の牙城
 神奈川はかって革新自治体の先進地域だった。1963~77年の飛鳥田横浜市政、1975~95年には長洲革新県政が20年続いた。1974年から県立高校教員になった筆者にとっては、自由な教育実践が保障されることにつながっている。
 1979年に松下幸之助が茅ヶ崎市に設立した松下政経塾は保守政治家の養成所と化し、元県知事、元横浜市長、多くの議員などが政経塾から輩出されている。現在は県内全域が「日本会議」の牙城となっている。官房長官、前TPP担当相、文科副大臣など安倍政権の主軸が神奈川から選出されている。
 こうした与党政治家の影響が、教科書採択にどこまで及んでいるかについては断定できないが、少なくとも2009年に民主党推薦で当選した林文子横浜市長は、2013年再選時に育鵬社教科書採択で自民党にすり寄っている
 神奈川新聞に『時代の正体』という長期連載がある。単行本VOL2は「偏っていますが、何か?」と副題をつけて話題を呼んでいる。
 『時代の正体』は本年2月に「日本会議を追う」との小特集を組んでいる。
 昨年11月の日本会議の「1万人大会」紹介から始まり、「憲法改定を実現する神奈川県民の会」結成1年を祝う会などを追っている。
 『日本会議の正体』(青木理氏)によれば、日本会議の基本運動方針①皇室の尊崇、②憲法の改正、③国防の充実、④愛国教育の推進、⑤復古的な「伝統的」家族観の重視の5点である。
 彼らの活動は、④を中心に私たちの教育運動と直接ぶつかる内容である。

 ◆ 大日本帝国憲法の復活を企図
 マスコミに頻繁に登場する、日本会議神奈川副運営委員長の木上和高は元日産自動車社員で、高度経済成長の尖兵の1人だった。だが、バブル崩壊で彼の初任地の日産座間工場は閉鎖されている。これまで木上は神奈川の育鵬社教科書採択で、実質的なブレーンでもある。
 神奈川新聞が伝える、木上の言う失われたものとは……「いまの日本社会に失われているのは『自立』だろう。そうした気概が失われていることが根本にある。それは憲法の問題と無関係ではない。自分たちでつくっていない憲法だからである。安全保障もそう。(中略)誇りや自信を失い、若者が将来に対して希望が持てない国になってしまっている。取り戻すべきだとすれば、それは明治維新のような独立の気概だろう」。
 経済成長一本で人生を送ってきた団塊の世代や戦前志向の人間にとっては、新たなアイデンティティーの対象なのだろう。自民党の新憲法草案は初めは冗談かと思われたが、明らかに大日本帝国憲法の復活を企図している。参議院選挙、都知事選挙などで怪しい「民意」が示されている。この状況をどう切りひらくのかを考えたい。
 ◆ 藤沢市は人口の40%が
 自由社教科書採択から連綿と続く横浜市教委の「つくる会」系教科書採択は、2011年から藤沢市にも広がっており、両市の中学生は900万人を超える神奈川県人口の40%以上に達している。
 運動の初期には、こうした偏向した教科書は高校入試に不利だとの指摘もされたが、採択率が高まった現在では状況が逆転している。両市とも採択反対の運動は質量ともに群を抜いているが、それでも政治の壁は厚い。
 今回、実教出版「高校日本史」採択妨害への要請署名を横浜市立147中学校の社会科主任宛に送ったが、明確な反応はなかった。
 前回県会議員に近い校長が押し込んだとされている県立平塚中等教育学校「育鵬社中学教科書」は、昨年他社に戻されている
 ◆ 実教出版「高校日本史」教科書採択妨害
 2013年度に始まる実教出版「高校日本史A・B」教科書採択妨害問題は新しい局面になった。
 「高校日本史A・新訂版」は「しかし、一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との側註が削られ、本文には「また教育現場に日の丸掲揚、君が代斉唱を義務づけることに対する反対運動もおきた」と加筆されている。
 2014年度から神奈川県高教組、教科書ネット21などに組織署名をお願いしている。2016年度も6月末に全国からの5925筆の署名を県教委に届けて、交渉を続けているが、県教委の判断は変わっていない。
 東京都教委は2017年度用採択で、改訂された「高校日本史A」の使用を承認している。
 ◆ 川崎市は1採択地区に拡大
 7行政区ある川崎市はこれまで、採択区が政令指定都市で唯一4つあった。
 本年3月6日の教育委員会会議で、1採択地区に拡大する請願と7採択地区に縮小する請願がだされ、5月10日の臨時会で1採択地区に改悪された。
 その理由は4採択区だと事務的に煩わしい、市内転居生徒が313名いて同一教科書が便利(他地域からの転入は調査なし)、官製教科研究会の際に同一教科書の方が研究しやすいといったレベルのものである。
 ここでも教育委員会の劣化がみてとれる。明らかに「育鵬社教科書」採択への地ならしと考えられる。今春から「新教育長」が着任したことが影響している。
 8月9日の県教委会議には「2017年度用高校日本史教科書採択にかかる請願」と2本の「川崎市の教科書採択地区統合に反対する請願」が提出されており、判断の変更が語られるであろうか。(しばたけん)
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 109号』(2016.8)

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