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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

諫早湾干拓事業がもたらしたもの。福岡高裁、漁業者を切り捨てる「忖度判決」

2022年04月18日 | 平和憲法
 ◆ 堤防閉門25年後の有明海
   赤潮とアオコ大量発生の海に
(週刊新社会)


 ◆ 諌早湾から汚れた水

 有明海の中央西部にある諌早湾の潮受け堤防を締切ってから、この4月14日で25年が経つ。
 干拓事業の計画段階から指摘されてきた海況悪化は、現実のものとして今日に至っている。
 締め切られた諫早湾内の調整池(26ha)の水は、どす黒く変色した。
 調整池内は慢性の赤潮とアオコの大量発生、アオコが分泌する肝臓毒のミクロシスチンで汚染される。
 調整池は常時上流部の河川からの水を溜め込み、一定水位になる毎に有明海に放出される。
 汚れた水は有明海を漂い、伝えられて来た様に魚介類へのダメージを与え続けてきた。
 それまでの諌早湾は別名で「泉水海」とも呼ばれ、有明海を浄化させる腎臓機能でもあり、「子宮」でもあった。
 有明海と、外海に育つ魚介類の産卵地であったことから海の子宮なのだ。

 ◆ 堤防締切り25年 高裁は混迷の判決を下す

 福岡高裁は、2010年12月に佐賀地裁の「締切り堤防の開門命令」を支持する判決を下して係争は一旦確定した。
 しかし、国が異議訴訟を14年1月に行い、その福岡高裁が18年7月には「非開門」の判決を下すという二枚舌をさらすことになった。
 最高裁は19年9月に異議訴訟の審理を福岡高裁に差し戻した

 今年3月25日、福岡高裁改めて「非開門」の判決を出した。二枚舌判決は係争関係をこじらせた上に、今回の苦しい判決に至ってしまった。
 「宝の海」を病める海に変えてしまった干拓事業。事業との因果を明らかにするための開門調査を、裁判所が否定したのである。
 有明海の将来よりも、国の立場を救う「忖度」判決と言われても仕方がないところである。
 ◆ 軽量化に甘んじた市民運動にも反省が

 293枚の鋼板で諌早湾を閉め切った様子を「ギロチン」と呼称したのは、「諌早干潟緊急救済本部」代表だった故山下弘文氏である。
 山下氏は農水省職員として有明海の漁業に関わってきた人でもあり、漁業者の信頼も厚かった。
 山下氏は当事業を中止させるために漁民だけにとどまらず、沿岸の市民と共に闘う方針を目指してきた。
 筆者の住む佐賀県鹿島市の藤津鹿島地区労を含む沿岸市民の学習会にも足しげく通った。
 市民・活動家が鹿島市に「前海を守る鹿島の会」を組織し、漁民との共闘を目指した。
 地域の世論が盛り上がりをみせ始める頃には鹿島市議会を皮切りに、佐賀県議会を含む県内各自治体議会が「開門調査を求める意見書」を採択した。
 こうした運動を通して裁判闘争も組織され、市民運動の高揚と共に世論の支持を拡大した。
 いく度か繰り返された裁判の判決は、市民運動の高揚期と停滞期を反映している。

 裁判による法的優位性は必ずしも実効性を伴わないことを本件は示したし、辺野古を始め、全国にみられる判決の危うさが残る。
 市民運動の高揚は世論を動かし、政治を動かす。
 法廷闘争だけには頼られないことを、今度の福岡高裁判決は証明してみせている。


 ◆ 2000年の大凶作が不吉な予感を的中させた

 ノリ養殖を営む佐賀市川副町の川崎賢朗さんは、「毎年漁期中は赤潮にハラハラしている」という。以下、川崎さんの想いを綴った。
 40年程前、私が海苔(のり)養殖に従事し始めた頃、本事業の前身であった南総開発で海上デモに参加した記憶がある。
 その頃は随分離れてもいるし、対岸の火事だと思っていました。
 次に諌早湾を見たのは延々7㎞の潮受け堤防工事が始まる1995年頃、不吉な予感を覚えましたが、国は間違った事はしないと信じていました。
 しかし2000年の大凶作で恐れていた事が起りました
 私たちの漁場もアサリ貝、タイラギなど沢山の魚介がいましたが、目に見えて魚介の個体数が激減を始め、締め切りから25年が経つ今は、すっかり姿を消しています
 ノリ養殖では、諌早湾に近い西部、南部地域と、離れた東部地区との二極化が続いています。
 原因の一つは栄養塩を補給してくれる大きな川がないことですが、もう一つは常襲の赤潮です。
 諌早湾を閉め切って残された湾奥部の調整池は、本明川などが運ぶ栄巻塩や生活雑排水を溜め込みます。溜め込まれて富栄養化した大量の水は、一定水位に達する毎に有明海に排出されます。その水が有明海に頻繁に赤潮を発生させています。
 私の営む東部地区では、数字だけ見れば安定しているように見えますが、いつ赤潮で海苔が色落ちするか、漁期中ハラハラしながらの操業なのです。
 (佐賀県。元鹿島市議=谷口良隆)

『週刊新社会』(2022年4月13日)

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