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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

住民ニーズとかけ離れた光が丘学校跡施設計画

2009年10月15日 | 平和憲法
 ▲ 住民ニーズとかけ離れた光が丘学校跡施設計画

 練馬区では、来年4月に光が丘地域の小学校8校を4校に統合再編する。それにともない4校分の施設をどう活用するかという「学校跡施設(光が丘地域)活用基本計画」(素案)が9月11日に公表され、区民向け説明会が開催された。区民や住民のためにどんな魅力あふれるプランが提案されるのか少し期待して、9月24日(木)夜の説明会に参加した。

 すると純粋な周辺住民向け施設(地域交流コーナー)は校舎の延べ床面積1万6200平方メートルのうちわずか220平方メートル、音楽・演劇の練習場である文化芸術施設を含めても1100平方メートルにすぎないことが判明した。
 逆に企業誘致し賃貸するスペースが(体育館も含め)9800平方メートルもあり(うち4800平方メートルは日大光が丘病院建替え時の代替用地だが、それは10年も先の話)、しかも質疑応答で企画課長は公募条件や選定評価方針を公開するが、この説明会以降、住民の修正要求をは受け付ける場はいっさい設けないという驚くべき回答を企画課長が言い放った。
 説明会には、区から中村企画部長、企画課長、防災課長、高齢社会対策課長、新しい学校づくり担当課長など11人が出席した。部長がはじめと終わりのあいさつをし、企画係長が素案を説明し、基本的には企画課長が質問に答え、担当外のことを所管課から回答するというかたちだった。素案の説明は以下のとおりである。
 ●区の説明
 光が丘地区は1993年に人口3万8000人だったが2008年には1万人減少し2万9800人となった。今後の人口推計では2023年に2万3000人と見込まれる。しかも65歳以上の年齢区分が41.1%に増える(現在18.5%)。地域として新たなライフステージに移行する時期にあたり、若年層を呼び込む取組が必要である。
 基本的に、既存の校舎を修繕し活用する。2006-10年度の現行長期計画で未整備の施設(防災カレッジなど)を整備する。また民間活力を導入する。学校開放事業は統合される新校に移動する。避難拠点運営連絡会は統合し、避難スペースや備蓄倉庫はできるだけ跡施設を利用する。
 具体的な活用計画は、2小と5小の跡施設は公共施設とする。
 2小は教職員の研修を行う学校教育支援センターとするが、1階の一部に防災カレッジと地域交流コーナー、4階に介護人材育成・研修センター、2階・4階の一部に共用研修室を置く。
 5小は中村橋の心身障害者福祉センターを移転拡充したこども発達支援センターとするが、3階は外国人向け日本語教室や情報提供を行うスペースと音楽・演劇の練習場の文化芸術・多文化共生支援施設とし、1階の一部に地域交流コーナーを置く。体育館や校庭は体育施設として活用するが、プールは他用途に転換するか撤去する。
 3小と7小は民間利用とする。
 ただし7小は日大光が丘病院が10年ほど先に建替え時期を迎えるのでその際の関連用地とする。この素案を年内に決定し、年明けに公募を開始し3月末までに民間事業者と契約を済ませる。ただ7小は統合新校の田柄3小が来年度、大規模修繕するので、民間事業者との契約は1年遅れの2011年度はじめに行う。校舎・体育館・グランド等一括して民間事業者に貸与する。主たる用途は事務所等とし、グランドには建物の設置を行わない。
 この後質疑応答に移った。当然ながら「民間貸与」に質問が集中した。24日に聞いたプランはたまげたものだったので、わたしは26日(土)午前の説明会にも参加した。以下24日のものを中心に、26日の質問を少し加え、新たに判明したことを補足して、質疑応答の一部を紹介する。
 ●民間貸与について
Q1 民間貸与の具体的なイメージがわかない。
A 大きな音を出したりにおいを発生させず、住環境を損なわない民間事業者に貸与する。望むべきは練馬の地場産業であるアニメ産業が応募してくれるとありがたいが、業種・業態は特定しない。
Q2 産業振興でなく地域振興を考えるべきではないか。世田谷区ではものづくり大学、北区では匠の里やスポーツ広場に跡施設を活用した例がある。他区の活用例を住民に示し、イメージをつくれるようにしてほしい。スケジュール的にも当事者にきちんと説明するよう考え直してほしい。また練馬駅北口や中村橋のNTT跡地でも民活を行うようだが、区全体で「人を育てる」プランをつくり、そのなかで光が丘の跡施設利用を考えるべきだ
A 延べ床面積は4校合計で1万6000平方メートルにもなるので、バリエーションをもつ使い方をしたい。また区民にとって遊休期間を短くすることも区役所の務めなのでスケジュールをできるだけ早くすることが重要だ。学校開放の利用団体には、別途説明会を実施中だ。
 民間誘致のねらいは2つある。区全体としては、産業基盤が脆弱であり、地方分権を受け入れたとき自立できる都市にしなければいけない。そこで企業誘致が必要だ。光が丘地域にとっては、その企業に通勤する人が団地住民になったり、雇用に寄与し地域活性化に結びつく。
Q3 民間の借り主は1社限定にするのか
A 1社に貸したいが、グループ企業が入ったり、企業を育成するインキュベーターが入ることはありうる。
Q4 用途についての制限は設けないのか。以前駅前で問題になったパチンコ屋もOKなのか。中小企業の場合、主たる用途は事務所だが、製造部門や販売部門を併置することもあるが、それはOKか。
 また壁のぶち抜きは可能か、校庭に建物は建てられないというが屋根付き展示場やビニールハウスをつくることは可能なのではないか。
A 主な用途は事務所。パチンコ屋は音も出るのでダメだがパチンコ屋の本社が事務所として使うのは差し支えない。研究所や社員研修という用途は認める。改装は、構造上の問題がなければ壁を抜くことも可能だ。また校庭に建築基準法上の建築物は建てられないが、仮設建物や緊急一時的なものは可能である。
Q5 民間企業からみて、団地の学校跡に事務所を設置することにどのようなメリットがあると考えているのか、セールスポイントを伺いたい。
A 4000平方メートルの延べ床面積があること。駅から比較的近く、三小は車のアクセスもよい。また政策的に安い賃料を考えている。
Q6 選定過程は密室でなく、プレゼン案を企業名を伏せて事業内容を区民に公表できないか。以前、光が丘の保育園民営化のときは公表した。
A 公募条件と選定の際の評価基準は公表するが、相手が民間企業であることもあり事業内容等は公表しない。民間事業者の選定は選定委員会が評価基準に基づき行う。選定過程は公表しない。
Q7 保育園民営化のときは、募集要項案ができた段階で保護者がみて改善してもらった。今回の事業者募集についても案の段階で住民にみせてもらえないか
A 募集要項は企画課の責任で作成する。区民に説明し意見を求めるつもりはない
Q8 来年2月か3月に企業が決定してから、周辺住民は異議申し立てをできるのか
A 契約は議会の了承も受けて行うので、住民からの異議申し立ては受け付けない
Q9 校庭を駐車場として使うことが考えられる。住民は学校として使われる受忍限度を想定している。またいままでは21時で静かになっていたが、もっと遅い時間なることも考えられる。異議申し立てを受け付けないというが、住環境が大きく変わってから、住民はどういうクレームの持ち込み方があるのか。区役所はどう保証してくれるのか。いったん借りれば使い放題ということでは困る
A 契約時に住環境への影響をチェックし、契約時点の提案と条件のとおりに使ってもらう。ただ、まったくいままでどおりというわけにはいかないことを了解していただきたい
Q10 民間会社は採算が取れなければ、たとえ1年半とか2年の短期でも撤退する。その後数年放置されては周辺住民はたまらない。失敗したときのリスク管理は考えているのか。
A すぐに撤退しないと想定される企業を選考する。しかし撤退の可能性がないとはいえないので、その場合は次の利用形態を早急に考えることになる。
 ●老人福祉施設やコミュニティ施設など他の使い方
Q1 光が丘が急速に高齢化していると説明があった。現時点でも、施設が圧倒的に不足している。特養ホームの入居希望者で何年も待っている人がいる。27年前に光が丘に転入したとき、小学校は将来4校に統合され、うち1校は高齢者施設になると聞いたことがある。また認知症高齢者が共同生活するグループホームもせっかく土地があるのだからつくってほしい。
A 区としては過去そういう計画を決定したことはない。以前は土地を持っている事業者に補助金を出して老人施設をつくる方式だったが、最近土地を持っていなくても、民間業者が定期借地権で土地を借り施設をつくる方式も可能になった。この方式を活用し現在策定中の長期計画で、5年で特養施設は570床、グループホームは9か所162人を整備する予定だ。ただその中に光が丘地域は入っていない。区全体で考える。光が丘の学校跡施設は、学校用の建物なので、もし老人ホームに改築すると改修費用が高くなる
Q2 光が丘はほとんどマンションで地域コミュニティがない。したがってコミュニティづくりのためのスペースが他地域より重要だ。今後高齢者のコミュニティ活動がいっそう増える。しかし現状は地区区民館の部屋が不足し朝から並ぶ状態になっている。それなのにこの素案では地域交流コーナーのスペースがあまりにも狭い(2小・5小各校2教室分)。どういう部屋を想定しているのか
A 地域の人が予約なしで、いつでも気軽に立ち寄れるロビー的なコーナーと、ちょっとした貸し部屋を想定している。こういうコーナーは他の地域にはない。音楽サークルなら5小の文化芸術・多文化共生支援施設も利用できる。また光が丘地域は地区区民館が充足している
Q3 待機児童も多いので保育園をつくれないか
A 区全体でみると光が丘地域の待機児童は少ないほうだ。もっと困っている地域があるので長期計画のなかで、そちらを先に整備する
Q4 小学校は現在は40人学級だが、民主党政権に変わり30人学級になることが想定される。その場合、学級数が増え教室が不足し、パンクする。
A 所管の教育委員会でつぶさに調べており対応可能だ。将来、跡施設を学校として活用することはない
Q5 光が丘には町会がなく、自治会も限られたところにしかない。そのなかで避難拠点運営連絡会を立ち上げることはたいへんなことで、人のつながりをつくるのに10年かかった。連絡会は統合新校と統合するのか。
 光が丘には高層住宅が多く、大震災が起きたときたとえ建物はだいじょうぶでもエレベータや水道のポンプアップは止まる。高齢者が毎食ごとに階段を上り下りするのは難しいので体育館に避難することになる。2校合わせた防災備品の保管はじめシミュレーションはやっているのか
A 高層マンションとしての課題は認識している。連絡会の活動は会により異なるので、個別に協議している。避難所スペースは極力跡施設に残してもらえるよう働きかけるが、実際に利用する際は連絡会の方にも協力していただきたい。
Q6 練馬区には保護司が少ない。事務所をつくり人材育成に使えないか。
A 所管課に確認する。

 区の長期計画や区全体を見渡した中での適正な施設配置ということもわかるが、それにしてもあまりにも地域住民のニーズとかけ離れた素案である。
 現在でも、地域コミュニティ・スペースは不足して朝から並んでも取れない状態だ。その一方、産業振興のための民間事業者へのスペースが面積で4万8004平方メートルのうち50%、延べ床面積で1万8698平方メートルのうち9824平方メートルとはあまりにも広すぎる。おまけに大震災時の避難スペースとして利用させてもらえるかどうかは、その民間事業者次第という説明だった。
 せめて校舎の3階部分のみあるいは体育館一つ分の700-1000平方メートルに縮小し、公共的施設を増やしてほしいものだ。
 文部科学省の「廃校後既存建物の主な活用用途」(2008年5月 2002-07年度廃校分)によれば総数1376件のうち、スポーツセンターなど社会体育施設が452件、生涯学習センターなど社会教育施設が434件、3位から5位の庁舎等、資料館など文化施設、自然体験施設など体験交流施設と、ベスト5の合計で86%を占める。一方、創業支援施設は8件(0.6%)にすぎない。8件のうち、民間貸与がどのくらいあるのかもわからない。
 若年層の住民を呼び込むための企業誘致というが、もうひとつ説得力に欠ける。どんな業種の企業かということで大いに違うだろう。
 また事業者の募集手続きも、選定基準のなかで地域コミュニティへの配慮という項目をつくるというが、あとは区役所でやるので住民は口を出すなというまるで密室状態での選定だ。
 区としては大泉の東映アニメーションに移転してほしいのかもしれないが、1-2年後に団地のなかにヤマト運輸や日販の新たな物流拠点が誕生しているかもしれない。
『多面体F』より(2009年09月29日 集会報告)
http://blog.goo.ne.jp/polyhedron-f/e/b9cba3ef4ff12e5c7f18a8d6a5af8433

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