★ 卒業式処分発令抗議・該当者支援総決起集会
3月31日(月)13時30分 全水道会館5F中会議室
◎ 「10・23通達」に基づく新たな処分を行わないことを求める要請書

「都教委要請」 《撮影:gamou》
私たちは、本年1月28日に7項目の要請を提出し、2月12日,2月21日の2回に分けて回答を受け取りました。その中で、「職務命令を出さないこと」(第2項目目)を要請したにも関わらず、今年もすべての都立高校で起立斉唱の個別職務命令が発令され、このままでは不服従者に対して懲戒処分が科される恐れが高まっています。
しかし不服従者に対する懲戒処分とりわけ機械的累積加重処分は、最高裁判決の一面的理解と教育の理念や目的を取り違えたことからくる誤った行政行為であり、発令しないよう重ねて要請します。また、前回要請に対する回答の不備や疑問点についても反論や再質問を交えつつ、再度要請させていただきます。
1,新たな懲戒処分を発令しないこと。
《前回2.21回答 所管:人事部職員課》 (丸数字と下線は引用者。以下の《回答》でも同じ)
卒業式等の式典において国歌斉唱時の起立斉唱を教員に求めた校長の①職務命令が合憲であることは、最高裁判決で繰り返し認められているところであり、職務命令違反があった場合には、個々の事案の状況に応じて②厳正に対処します。また、懲戒処分の取消しは考えておりません。
【上記回答の不備の指摘】
回答文中の下線部①は、最高裁判決文中にない不正確な表現で一面的な引用である。
正しくは、起立斉唱命令は「その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定しがたい」ことから、機械的な累積加重処分は「処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き」「懲戒権者の裁量権の範囲を超えるものとして違法」との判示がなされている。
すなわち懲戒処分の発令には「本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となる」のであり、下線部②は判決に反している。
以上を踏まえて、下記の通り要請する。
(1)最新の最高裁判決(2013/9/6)において、鬼丸裁判官は、命令の不服従が真摯になされている場合「命令不服従に対する不利益処分は、慎重な衡量的な配慮が求められるべきである」と指摘した。
この判決を真摯に受けとめ、「これらの事情に配慮した謙抑的な対応」に徹すること。
(2)最高裁は戒告処分の「当不当の問題」について、「論ずる余地がある」としている(2012/1/16)。
この判示を謙虚に受けとめ、戒告処分の「当不当の問題」について、再検討すること。
(3)最高裁は、減給処分以上の累積加重処分は、「処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き」として、これまで2012年1月に2件、2013年9月に30件、計32件の減給以上の処分を取り消してきた。
これらの一連の判示に従い、減給以上の処分は発令しないこと。
2,命令不服従者に対して服務事故再発防止研修を行わないこと
《前回2.21回答 所管:人事部職員課》
①懲戒処分の原因となった服務事故の再発を防止するため、②関係規定に基づき、懲戒処分を受けた者に対し、服務事故再発防止研修を実施します。
【上記回答の不備の指摘】
下線部①、不起立(不服従)行為の「原因・動機」は、最高裁において「個人の歴史観ないし世界観に起因するものである」(2012/1/16)と認定された。このことを没却している。
下線部②、内部規定である「標準的処分量定表」には、量定決定に当たっての考慮事項の中から「原因・動機」が欠落しており、この内部規定だけに基づいて処分を決定することは、裁量権の範囲を規定した過去の最高裁判例(2012/1/16最高裁判決に引用されている<神戸税関事件>)に反することになる。
以上を踏まえて、下記の通り要請する。
(1)最新の最高裁判決(2013/9/6鬼丸補足意見)で改めて、不服従行為について「個人の歴史観や世界観に基づき真摯になされた場合」と、思想及び良心と不起立行為とが結びいていることが指摘された。
この指摘を率直に受け容れ、服務事故の「原因・動機」は、個人の「思想及び良心」であること認めること。
(2)個人の思想・良心・信仰の禁止や変更に結びつくような研修を行わないこと。
(3)服務事故再発防止研修命令発令に当たっては、司法判断を遵守すべき行政の立場をわきまえ、内部規定よりも、司法判断(2004/7/23東京地裁決定、2007/7/19東京地裁確定判決、2013/9/6最高裁判決)を尊重し、優先して判断すること。
3,「1.24都教委議決」を撤回すること
《前回2.21回答 所管:指導部指導企画課》
国歌斉唱時の起立斉唱等を教員に求めた①職務命令が合憲であることは平成24年1月16日の最高裁判決でも改めて認められたところです。この判決を受け平成24年1月24日の臨時教育委員会において、「一人一人の教員が、教育における国旗掲揚及び国歌斉唱の意義と②教育者としての責務を認識し、学習指導要領に基づき、各学校の入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱が適正に実施されるよう、万全を期していく」ことを委員総意の下に確認し、③「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について」が議決されました。本議決を撤回する考えはありません。
【上記回答の不備の指摘】
下線部①は、「1,①」における不備の指摘に同じであり、最高裁判決の不正確で一面的な引用であることを重ねて指摘する。
下線部②は、教員の責務をあたかも画一的な起立斉唱指導のみであるかのように矮小化し、専門職としての教員の職務の専門性・自主性を一顧だにしない大変偏った規定である。
【根拠法令・判例等】
○教育職員免許法 「第3条 教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない。」
○ILO・ユネスコ 教員の地位に関する勧告 「6 教育の仕事は専門職とみなされるべきである。」
○旭川学テ最高裁判決 「右指導要領の下における教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や、地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されており・・・その内容においても、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていない」
○伝習館高校福岡高裁判決 「右明白性の判定(注:大綱的基準に明白に違反するか)に当つては、(1)専門職である教師の自主性を充分に尊重すること」
○学校教育法 「37条11 教諭は、児童の教育をつかさどる」
○教育公務員特例法 「1条 この法律は、教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき、教育公務員の任免、給与、分限、懲戒、服務及び研修等について規定する。」
下線部③、この議決中に掲げられている「教育の目的」には、教育基本法第1条、世界人権宣言26条など、教育の普遍の原理を示した内外の文書に必ず存在する「平和」の文字が欠落しており、このことは重大な欠陥である。
【根拠法令・判例等】
○教育基本法 「第1条(教育の目的) 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
○世界人権宣言 「26条2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。」
○ILO・ユネスコ 教員の地位に関する勧告 「3 教育は、その最初の学年から、人権および基本的自由に対する深い尊敬をうえつけることを目的とすると同時に、人間個性の全面的発達および共同社会の精神的、道徳的、社会的、文化的ならびに経済的な発展を目的とするものでなけれぱならない。これらの諸価値の範囲の中でもっとも重要なものは、教育が平和の為に貢献をすることおよびすべての国民の間の、そして人種的、宗教的集団相互の間の理解と寛容と友情にたいして貢献することである。」
これらを踏まえて、以下要請する。
上記のように、最高裁判決を読み誤り、内外の教育法規・文書に背反し、普遍的な教育理念から外れる議決は、東京都の教育の方向を誤らせ、子どもの平和で民主的な公教育を受ける権利をないがしろにするものであるから、速やかに撤回されたい。
そして、行政の本来の責務、すなわち「教師の最善の能力は、自由な空気の中においてのみ十分に発揮せられる。この雰囲気を作り出すことが行政官の仕事なのであって、その反対の雰囲気を作り出すことではない」(『アメリカ教育使節団報告書』序論)に立ち返り、教師の最善の能力を発揮させる自由な雰囲気を作り出すことに、に専念されたい。
4,一連の最高裁判決の趣旨に則り、「これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていく」(2012/1/16第一小法廷桜井補足意見)教育環境の整備のために、「教育関係者の相互の理解と慎重な対応」(2011/6/14第三小法廷大谷補足意見)のあり方を、具体的に協議する場を設定されたい。
5,石原慎太郎元東京都知事が、『文学界』(2014年3月号)誌上で、インタビューに答えて「いや、皇室にはあまり興味ないね。僕、国歌歌わないもん。国歌を歌うときはね、僕は自分の文句で歌うんです。『わがひのもとは』って歌うの」と語っている。この発言について、以下の質問に答えられたい。
(1)一般的に、「国歌を歌わないこと」ないし「歌詞を自分で変えて歌うこと」は、『1.24都教委議決』に記されている「わが国の歴史や文化を尊重し」及び「それら(国旗国歌)を尊重する態度」に合致するものであるか否かを答えられたい。
(2)学校の卒業式等において、「国歌を歌わないこと」ないし「歌詞を自分で変えて歌うこと」がなされた場合、それは「10・23通達」及び「実施指針」に違反する行為に当たるか否か、見解を示されたい。
(3)都知事の職務の公共性を踏まえるなら、知事在任中に定められた国旗掲揚国歌斉唱の指導方針にそぐわない発言を公共の場で行ったことは、不適切であり信用失墜行為にあたるのではないか。
(4)元都知事の発言の、児童・生徒に与える教育的影響について、都教委の見解を示されたい。
6.国際社会における「国旗国歌強制問題」についての反応について、以下の質問に答えられたい。
(1)わが国も批准している『国連自由権規約』の規約委員会が作成した文書の中に「委員会は,・・・旗や象徴に対する不敬(disrespect for flags and symbols)…などの事項に関係する法律について懸念を表明」し,これらに厳しい処罰を科してはならないとの記載があることを、ご存知か。
【出典】 『国連自由権規約委員会 規約19条(表現の自由)に関する一般的意見34』パラグラフ38
<日本弁護士連合会HP:自由権規約 委員会による一般的意見一覧 から>
(2)この文書にあるように、国際人権水準からすると、シンボルに敬意を表さない行為に厳しい罰則を科すことは人権侵害に当たる、と指摘されていることをどのように受けとめるか。
(3)2月27日に米国国務省が発表した2013年版年次報告『国別人権状況報告書』の日本の項に、「学問の自由(Academic Freedom)」の問題として、歴史教科書問題と並べて「君が代処分」の問題が取り上げられていることを、ご存知か。
【出典】 "Country Reports on Human Rights Practices for 2013"
<U.S. Department of State から>
(4)この文書にあるように、不起立者に対する懲戒処分が、「学問の自由」に関わる問題であるとの認識について、都教委の見解をお聞かせ願いたい。
(回答期限)3月26日(水) 下記までお願いします。
東京都教育委員会委員長 木村 孟 殿
教育長 比留間英人 殿
≪卒業式・入学式対策本部 3・20要請 添付資料≫
<『国連自由権規約委員会 規約19条(表現の自由)に関する一般的意見34』パラグラフ38>から
Accordingly, the Committee expresses concern regarding laws on such matters as, lese majeste, desacato, disrespect for authority, disrespect for flags and symbols, defamation of the head of state and the protection of the honour of public officials, and laws should not provide for more severe penalties solely on the basis of the identity of the person that may have been impugned.
したがって、委員会は、不敬罪、侮辱罪、権威に対して敬意を払わないこと、旗やシンボルに対して敬意を払わないこと、国家元首に対する名誉毀損、および公務員の名誉の保護等に関する法令に対して、懸念を表明する。また、法令は、非難の対象となったとされる人物が誰であるかということのみを根拠にして、より厳しい処罰を与えるべきではない。
【出典】 『日本弁護士連合会HP』:自由権規約 委員会による一般的意見一覧
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/HRC_GC_34j.pdf
<アメリカ国務省 人権報告書 “Country Reports on Human Rights Practices for 2013”>から
Section 2. Respect for Civil Liberties, 第2部 市民の自由の尊重
a. Freedom of Speech and Press a. 言論および出版の自由
"Academic Freedom and Cultural Events" 「学問の自由と文化的行事」
The Ministry of Education’s approval process for history textbooks continued to be a subject of controversy, particularly regarding its treatment of certain 20th-century topics, such as military history.
文部科学省による歴史教科書の検定手続きが、とりわけ戦争の歴史をはじめとするいくつかの20世紀の諸問題の扱いに関して、論争の的となり続けた。
The national anthem and flag continued to be controversial symbols. Administrators reprimanded public school teachers for refusing to stand and sing the national anthem in front of the flag.
国旗と国歌も依然として異論の多いシンボルであり続けた。(教育行政)管理者は国旗に向かって起立し国歌を歌うこと拒否した公立学校教員に懲戒処分を行った。
There were no government restrictions on cultural events.
文化的行事対する政府の制限は全くなかった。
【出典】 "U.S. Department of State" 米国務省HP
http://www.state.gov/j/drl/rls/hrrpt/humanrightsreport/index.htm?year=2013&dlid=220199#wrapper
3月31日(月)13時30分 全水道会館5F中会議室
◎ 「10・23通達」に基づく新たな処分を行わないことを求める要請書

「都教委要請」 《撮影:gamou》
私たちは、本年1月28日に7項目の要請を提出し、2月12日,2月21日の2回に分けて回答を受け取りました。その中で、「職務命令を出さないこと」(第2項目目)を要請したにも関わらず、今年もすべての都立高校で起立斉唱の個別職務命令が発令され、このままでは不服従者に対して懲戒処分が科される恐れが高まっています。
しかし不服従者に対する懲戒処分とりわけ機械的累積加重処分は、最高裁判決の一面的理解と教育の理念や目的を取り違えたことからくる誤った行政行為であり、発令しないよう重ねて要請します。また、前回要請に対する回答の不備や疑問点についても反論や再質問を交えつつ、再度要請させていただきます。
1,新たな懲戒処分を発令しないこと。
《前回2.21回答 所管:人事部職員課》 (丸数字と下線は引用者。以下の《回答》でも同じ)
卒業式等の式典において国歌斉唱時の起立斉唱を教員に求めた校長の①職務命令が合憲であることは、最高裁判決で繰り返し認められているところであり、職務命令違反があった場合には、個々の事案の状況に応じて②厳正に対処します。また、懲戒処分の取消しは考えておりません。
【上記回答の不備の指摘】
回答文中の下線部①は、最高裁判決文中にない不正確な表現で一面的な引用である。
正しくは、起立斉唱命令は「その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定しがたい」ことから、機械的な累積加重処分は「処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き」「懲戒権者の裁量権の範囲を超えるものとして違法」との判示がなされている。
すなわち懲戒処分の発令には「本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となる」のであり、下線部②は判決に反している。
以上を踏まえて、下記の通り要請する。
(1)最新の最高裁判決(2013/9/6)において、鬼丸裁判官は、命令の不服従が真摯になされている場合「命令不服従に対する不利益処分は、慎重な衡量的な配慮が求められるべきである」と指摘した。
この判決を真摯に受けとめ、「これらの事情に配慮した謙抑的な対応」に徹すること。
(2)最高裁は戒告処分の「当不当の問題」について、「論ずる余地がある」としている(2012/1/16)。
この判示を謙虚に受けとめ、戒告処分の「当不当の問題」について、再検討すること。
(3)最高裁は、減給処分以上の累積加重処分は、「処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き」として、これまで2012年1月に2件、2013年9月に30件、計32件の減給以上の処分を取り消してきた。
これらの一連の判示に従い、減給以上の処分は発令しないこと。
2,命令不服従者に対して服務事故再発防止研修を行わないこと
《前回2.21回答 所管:人事部職員課》
①懲戒処分の原因となった服務事故の再発を防止するため、②関係規定に基づき、懲戒処分を受けた者に対し、服務事故再発防止研修を実施します。
【上記回答の不備の指摘】
下線部①、不起立(不服従)行為の「原因・動機」は、最高裁において「個人の歴史観ないし世界観に起因するものである」(2012/1/16)と認定された。このことを没却している。
下線部②、内部規定である「標準的処分量定表」には、量定決定に当たっての考慮事項の中から「原因・動機」が欠落しており、この内部規定だけに基づいて処分を決定することは、裁量権の範囲を規定した過去の最高裁判例(2012/1/16最高裁判決に引用されている<神戸税関事件>)に反することになる。
以上を踏まえて、下記の通り要請する。
(1)最新の最高裁判決(2013/9/6鬼丸補足意見)で改めて、不服従行為について「個人の歴史観や世界観に基づき真摯になされた場合」と、思想及び良心と不起立行為とが結びいていることが指摘された。
この指摘を率直に受け容れ、服務事故の「原因・動機」は、個人の「思想及び良心」であること認めること。
(2)個人の思想・良心・信仰の禁止や変更に結びつくような研修を行わないこと。
(3)服務事故再発防止研修命令発令に当たっては、司法判断を遵守すべき行政の立場をわきまえ、内部規定よりも、司法判断(2004/7/23東京地裁決定、2007/7/19東京地裁確定判決、2013/9/6最高裁判決)を尊重し、優先して判断すること。
3,「1.24都教委議決」を撤回すること
《前回2.21回答 所管:指導部指導企画課》
国歌斉唱時の起立斉唱等を教員に求めた①職務命令が合憲であることは平成24年1月16日の最高裁判決でも改めて認められたところです。この判決を受け平成24年1月24日の臨時教育委員会において、「一人一人の教員が、教育における国旗掲揚及び国歌斉唱の意義と②教育者としての責務を認識し、学習指導要領に基づき、各学校の入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱が適正に実施されるよう、万全を期していく」ことを委員総意の下に確認し、③「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について」が議決されました。本議決を撤回する考えはありません。
【上記回答の不備の指摘】
下線部①は、「1,①」における不備の指摘に同じであり、最高裁判決の不正確で一面的な引用であることを重ねて指摘する。
下線部②は、教員の責務をあたかも画一的な起立斉唱指導のみであるかのように矮小化し、専門職としての教員の職務の専門性・自主性を一顧だにしない大変偏った規定である。
【根拠法令・判例等】
○教育職員免許法 「第3条 教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない。」
○ILO・ユネスコ 教員の地位に関する勧告 「6 教育の仕事は専門職とみなされるべきである。」
○旭川学テ最高裁判決 「右指導要領の下における教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や、地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されており・・・その内容においても、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていない」
○伝習館高校福岡高裁判決 「右明白性の判定(注:大綱的基準に明白に違反するか)に当つては、(1)専門職である教師の自主性を充分に尊重すること」
○学校教育法 「37条11 教諭は、児童の教育をつかさどる」
○教育公務員特例法 「1条 この法律は、教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき、教育公務員の任免、給与、分限、懲戒、服務及び研修等について規定する。」
下線部③、この議決中に掲げられている「教育の目的」には、教育基本法第1条、世界人権宣言26条など、教育の普遍の原理を示した内外の文書に必ず存在する「平和」の文字が欠落しており、このことは重大な欠陥である。
【根拠法令・判例等】
○教育基本法 「第1条(教育の目的) 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
○世界人権宣言 「26条2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。」
○ILO・ユネスコ 教員の地位に関する勧告 「3 教育は、その最初の学年から、人権および基本的自由に対する深い尊敬をうえつけることを目的とすると同時に、人間個性の全面的発達および共同社会の精神的、道徳的、社会的、文化的ならびに経済的な発展を目的とするものでなけれぱならない。これらの諸価値の範囲の中でもっとも重要なものは、教育が平和の為に貢献をすることおよびすべての国民の間の、そして人種的、宗教的集団相互の間の理解と寛容と友情にたいして貢献することである。」
これらを踏まえて、以下要請する。
上記のように、最高裁判決を読み誤り、内外の教育法規・文書に背反し、普遍的な教育理念から外れる議決は、東京都の教育の方向を誤らせ、子どもの平和で民主的な公教育を受ける権利をないがしろにするものであるから、速やかに撤回されたい。
そして、行政の本来の責務、すなわち「教師の最善の能力は、自由な空気の中においてのみ十分に発揮せられる。この雰囲気を作り出すことが行政官の仕事なのであって、その反対の雰囲気を作り出すことではない」(『アメリカ教育使節団報告書』序論)に立ち返り、教師の最善の能力を発揮させる自由な雰囲気を作り出すことに、に専念されたい。
4,一連の最高裁判決の趣旨に則り、「これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていく」(2012/1/16第一小法廷桜井補足意見)教育環境の整備のために、「教育関係者の相互の理解と慎重な対応」(2011/6/14第三小法廷大谷補足意見)のあり方を、具体的に協議する場を設定されたい。
5,石原慎太郎元東京都知事が、『文学界』(2014年3月号)誌上で、インタビューに答えて「いや、皇室にはあまり興味ないね。僕、国歌歌わないもん。国歌を歌うときはね、僕は自分の文句で歌うんです。『わがひのもとは』って歌うの」と語っている。この発言について、以下の質問に答えられたい。
(1)一般的に、「国歌を歌わないこと」ないし「歌詞を自分で変えて歌うこと」は、『1.24都教委議決』に記されている「わが国の歴史や文化を尊重し」及び「それら(国旗国歌)を尊重する態度」に合致するものであるか否かを答えられたい。
(2)学校の卒業式等において、「国歌を歌わないこと」ないし「歌詞を自分で変えて歌うこと」がなされた場合、それは「10・23通達」及び「実施指針」に違反する行為に当たるか否か、見解を示されたい。
(3)都知事の職務の公共性を踏まえるなら、知事在任中に定められた国旗掲揚国歌斉唱の指導方針にそぐわない発言を公共の場で行ったことは、不適切であり信用失墜行為にあたるのではないか。
(4)元都知事の発言の、児童・生徒に与える教育的影響について、都教委の見解を示されたい。
6.国際社会における「国旗国歌強制問題」についての反応について、以下の質問に答えられたい。
(1)わが国も批准している『国連自由権規約』の規約委員会が作成した文書の中に「委員会は,・・・旗や象徴に対する不敬(disrespect for flags and symbols)…などの事項に関係する法律について懸念を表明」し,これらに厳しい処罰を科してはならないとの記載があることを、ご存知か。
【出典】 『国連自由権規約委員会 規約19条(表現の自由)に関する一般的意見34』パラグラフ38
<日本弁護士連合会HP:自由権規約 委員会による一般的意見一覧 から>
(2)この文書にあるように、国際人権水準からすると、シンボルに敬意を表さない行為に厳しい罰則を科すことは人権侵害に当たる、と指摘されていることをどのように受けとめるか。
(3)2月27日に米国国務省が発表した2013年版年次報告『国別人権状況報告書』の日本の項に、「学問の自由(Academic Freedom)」の問題として、歴史教科書問題と並べて「君が代処分」の問題が取り上げられていることを、ご存知か。
【出典】 "Country Reports on Human Rights Practices for 2013"
<U.S. Department of State から>
(4)この文書にあるように、不起立者に対する懲戒処分が、「学問の自由」に関わる問題であるとの認識について、都教委の見解をお聞かせ願いたい。
(回答期限)3月26日(水) 下記までお願いします。
2014年3月20日
卒業式・入学式対策本部
卒業式・入学式対策本部
東京都教育委員会委員長 木村 孟 殿
教育長 比留間英人 殿
≪卒業式・入学式対策本部 3・20要請 添付資料≫
<『国連自由権規約委員会 規約19条(表現の自由)に関する一般的意見34』パラグラフ38>から
Accordingly, the Committee expresses concern regarding laws on such matters as, lese majeste, desacato, disrespect for authority, disrespect for flags and symbols, defamation of the head of state and the protection of the honour of public officials, and laws should not provide for more severe penalties solely on the basis of the identity of the person that may have been impugned.
したがって、委員会は、不敬罪、侮辱罪、権威に対して敬意を払わないこと、旗やシンボルに対して敬意を払わないこと、国家元首に対する名誉毀損、および公務員の名誉の保護等に関する法令に対して、懸念を表明する。また、法令は、非難の対象となったとされる人物が誰であるかということのみを根拠にして、より厳しい処罰を与えるべきではない。
【出典】 『日本弁護士連合会HP』:自由権規約 委員会による一般的意見一覧
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/HRC_GC_34j.pdf
<アメリカ国務省 人権報告書 “Country Reports on Human Rights Practices for 2013”>から
Section 2. Respect for Civil Liberties, 第2部 市民の自由の尊重
a. Freedom of Speech and Press a. 言論および出版の自由
"Academic Freedom and Cultural Events" 「学問の自由と文化的行事」
The Ministry of Education’s approval process for history textbooks continued to be a subject of controversy, particularly regarding its treatment of certain 20th-century topics, such as military history.
文部科学省による歴史教科書の検定手続きが、とりわけ戦争の歴史をはじめとするいくつかの20世紀の諸問題の扱いに関して、論争の的となり続けた。
The national anthem and flag continued to be controversial symbols. Administrators reprimanded public school teachers for refusing to stand and sing the national anthem in front of the flag.
国旗と国歌も依然として異論の多いシンボルであり続けた。(教育行政)管理者は国旗に向かって起立し国歌を歌うこと拒否した公立学校教員に懲戒処分を行った。
There were no government restrictions on cultural events.
文化的行事対する政府の制限は全くなかった。
【出典】 "U.S. Department of State" 米国務省HP
http://www.state.gov/j/drl/rls/hrrpt/humanrightsreport/index.htm?year=2013&dlid=220199#wrapper
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