☆ 東京電力福島第一原発事故から、13年が過ぎた
2024年3月11日 たんぽぽ舎共同代表 山崎久隆
2024年はヒロシマナガサキの原爆の投下から77年、チェルノブイリ原発事故から36年、東海村JCO臨界事故から23年だ。
その間、私たちは核の脅威にさらされ続け、過去の放射能災害の教訓は生かされず、政府は昨年「脱炭素電源法」なるものを成立させて、ついに本音である原子力推進に再び舵を切ろうとしている。これを許した日本の市民1人1人に責任がある。
今改めて原子力のいまを考えてみたい。
1.福島第一原発事故対応は失敗続き
廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議が決めた廃炉工程「中長期ロードマップ」は、30から40年で廃炉を完了するとしている。しかし誰もが実現不可能であることを知っている。
デブリの取り出しどころか、もっと扱いやすいはずの汚染水発生さえ止められない現状では、廃炉どころか事故の拡大防止さえできない状態だ。
引き起こした最大の原因は、東電の無能力と政府の無責任が理由である。できる期間、できる組織、できる方法を決定できる組織と人員を配置しなければ、次の地震と津波で再び大量の放射能放出を引き起こし、漁業や産業にも甚大な被害を与え、日本は今度こそ破綻する。
その責任は挙げて日本政府にある。
2.原発推進は再び大災害を引き起こす
東海第二、高浜1、2号、美浜3号など40年を超えた原発の再稼動が進めば、重大な原子力災害を引き起こす危険性を高めるだけである。老朽原発には固有のリスクがある。
燃えやすいケーブルを使うなどで新しい知見に基づく耐火性能を欠いている。
古い時代の知見で造られているため、耐震性能が低い。
配管類は老朽化していて破損しやすい。
古い時代の設備計器類の設計や設備工事は現代の知見から見ても安全性能は低く補修性も悪い。
これらを押してまで動かす必然性はない。いたずらに事故確率を上げているだけである。
3.大地動乱の時代に地震と津波のリスクが高まっている
能登半島地震により一瞬にして4mもの海岸隆起を目撃した。これまで経験したことがない地殻変動を前に、いかなる安全対策や設計も無力であることを見せつけられた。
幸い今回は稼働中原発の直下で起きなかったが、次の地震は原発直下で起きる可能性を否定できるものはいない。どこの原発の近傍にも大きな活断層が存在する。2007年の中越沖地震では柏崎刈羽原発で地盤の液状化が起きている。起動変圧器の火災は地盤変状が原因だった。
基準地震動は新規制基準適合性審査では何処の原発も必ず引き上げられている。地震評価や想定が全て間違っていたからだ。それでもまだ過小評価である。
活断層評価は連続する断層が連動することを前提とすべきところ、どこでもバラバラに評価しているが、能登半島地震では150キロが連動して動いている。それを志賀原発の周辺断層に当てはめれば、現在の想定を大幅に上回る。
さらに地殻変動も想定すれば到底再稼動など出来るはずがない。
4.再処理工場を運転してはならない
現在、福島第一原発から、太平洋にトリチウムをはじめとした放射性物質を含む廃液が放出されている。青森県六ヶ所村の再処理工場が動き出せば、更に大量の放射性廃液が太平洋に放出されることになる。
世界三大漁場の一つである三陸の金華山沖で、福島汚染水と再処理工場の汚染が拡散する。驚くべき暴挙である。
日本はプルトニウムを抽出することができない。「余剰プルトニウムは持たない」との国際公約を守るには、既に抽出したプルトニウム45トンを「消費」してからでないと抽出できないことになっている。
日米原子力協定でもプルトニウムの保有量を上限47トンとしているため、再処理控除を稼働してもプルトニウムを抽出できない。
年間800トンを処理してプルトニウムを8トン取り出す計画だが、プルサーマル計画も進んでおらず、燃やせる原発も限られる。動かすことができない再処理工場に2兆円もかけてきたが、更に新規制基準適合性審査でも審査が事実上止まっている。日本原燃の出す資料があまりにいい加減で、審査が進まないのである。
このような状況でも核燃料サイクルを中止しようとしないため、巨額の費用が無駄に費やされるだけでなく、新たな中間貯蔵施設計画や最終処分場建設など、核燃料サイクル政策が前提の新たな無駄な施設計画が進められようとしている。
エネルギー政策の崩壊がこうした事態を生み出し、市民が使うべき予算を無駄に費やされている。
今、原子力政策を転換させ、原発を止めなければ、日本は早晩、破綻国家になる。それを止める最後のチャンスだ。
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