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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

学校事務がものすごく大変になる高校授業料無償化廃止

2013年12月17日 | こども危機
  《尾形修一の教員免許更新制反対日記》
 ◆ 高校授業料無償化の末路


 11月27日にある法律が成立した。「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律」という。いわゆる「高校授業料無償化」が終わりになる「改正」である。衆議院選挙で自民党の公約だった。参議院本会議の投票で、自民、公明、維新、「みんな」が賛成(177票)。(民主、共産、社民、生活その他合計77票の反対があった。)
 高校授業料無償化問題については、民主党政権で成立した時に問題点も残り、当時4回にわたって記事を書いた。
  ①「高校無償化は人権問題である」(2011.8.9)
  ②「朝鮮高級学校の場合」(2011.8.20)
  ③「留年してはいけないのか?」(2011.8.22)
  ④「定通はかえって『損』なのか」(2013.10.13)
  国際人権規約との関係や朝鮮学校の問題は他の人も言っているが、「留年者からは取る」「定通高校ではかえって負担増なのではないか」という問題は、あまり論じられなかった。
 今回の「改正」は、高額所得家庭からは授業料を取るという変更だと思ってる人が多いと思うけど、実は少し違う。とても面倒な制度設計になっていて、家庭と学校事務の負担はとても大きくなるのではないか。
 「高額所得者に授業料がかかる」のではなく、「低所得家庭に就学支援金を支給する」のである。ただし、それは学校に集約して、学校に支払われる。「高等学校就学支援金について」という文科省の説明サイトを参照。
 その説明によると、就学支援金はすべての国公私立生徒に出るが、課税証明書と申請書を学校に提出しなくてはならない。逆に言えば、高校教員(あるいは高校事務職員)は、全生徒の家庭から課税証明書を集めなくてはならない。何という面倒な仕事をまた押し付けられるのか。学校はその支援金を授業料と相殺するというのである。
 ところで「市町村民税が30万4200円以上の世帯」では「授業料をご負担いただく」という。これは「両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人、中学生1人の家庭であれば、市町村民税所得割額が30万4200円の場合、年収は910万円」なんだそうだ。しかし、いまどきそんなモデル家庭がどれだけいるのか。とにかく、新聞記事などでは「世帯収入910万」という説明がよく出てるけれど、そうではなくてあくまで住民税額の方で判断するということらしい。(ところで、東京23区には「市町村民税」を払っている人が誰もいないんだけど、なぜ特別区民税が書いてないのか。)
 さて、そうすると高校は、支援金の支給申請をまず行い、その結果課税証明で住民税額が判ったら、あらためてその家庭から授業料を取るという段階になる。一体何月から授業料を徴収できるのか。なんでこのような面倒な制度にするのか。全く判らない。これで判るのは、学校事務がものすごく大変になるということである。
 ところで、この制度改正で浮いたカネを何に使うのか「低所得層の私立生加算を手厚くする」という。これも全く判らない。何で公立に通わせる親のカネで私立に通わせる親を支援するんだろうか。自民党には私立学校関係者が多いということか。
 こんな面倒な制度を作ることなく、高額所得者の税率をアップし、公立高校はすべて授業料無償とすればいいと思うんだけど。様々な所得制限は事務負担が増すだけだから、所得税率をアップして高額所得者は税そのものを多く負担してもらえばいいのではないか。
 もし高校授業料を高額所得家庭からは徴収するというんだったら、それが大学、専門学校等への進学の奨学金になる場合だけではないか。「国際人権規約」に反する政策を堂々と進めるのも不可解だが、中等教育無償化に例外措置を作っても、高等教育への支援を強める必要は大きいと思う。とにかく、最初から訳の分からない部分もあった無償化措置は、こういう末路を迎えたということの報告。
『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2013年12月11日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/8df85f6e885f836f07faedc726b0b053
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