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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

連載 イギリスの「教育改革」 3

2006年12月07日 | 人権
連載 イギリスの「教育改革」 3
 厳しい教育水準監査で校長など退職者が相次ぐ教育現場


<テスト漬けについて>
 イギリスの子どもたちは、7,11,14歳で全国テストを受ける。その後、高等教育を目指す者は16歳でGCSE(一般中等教育資格試験)を、そして18歳でAレベル(大学入学資格試験)を受けるのだが、このうち11、16、18歳の結果がリーグテーブルとなって新聞に発表される
 こうした体制については、もちろんイギリス国内でも批判の声があがっている。既に2000年のThe Independent紙上には「今こそリーグテーブルをやめるべき時」という記事が載っており、学校間競争が、「良い子」の奪い合い、教員のひきぬき、予算の差別的な配分などを生んでいることを指摘している。
 今年の新聞報道を見ると、事態がもはや学校長たちにとっても対処しきれない段階に至っていることを伝えている。
 たとえば、4月30日のThe Guardianには、全国校長会の会長が、「授業と学習は試験漬けと目標値達成主義から解き放たれるべき」との声明を出している。
 また、5月には教育者連合が、「現在のようなテスト、リーグテーブル、そして監査の圧力が続くならば、教員の授業と生徒の学習にマイナスの圧力が続くばかりである」と発表したという記事が、同じくThe Guardianに載っていた。

<OfSTED(教育水準監督局)の監査とは?>
 これは教育技能省から独立した機関であり、厳しい監査により、90年代中期および後期だけで50校以上を閉鎖に追い込んだと言われている。この事を「学校の質の向上につながった」と誤解しているのは、わがA首相である。
 手許の「セカンダリースクール監査ハンドブック」を見ると、チェック項目が実に細かく書かれており、「合格」するのは容易なことではない事がすぐに分かる。
(チェック項目の例)
 ・生徒の問題行動が無いこと ・欠席率が低いこと
 ・生徒の態度が良く、自分の意見をしっかり表明できること
 ・昼休みや放課後の諸活動への参加状況 ・授業参加状況
 ・全国テストの成績分布 ・各科目の到達状況分布 ・教員の授業中のクラス把握状況
 ・授業の構成具合、快活な授業展開、スピード ・放課後の学習支援 ・適切な宿題
 ・キャリア教育 ・生徒がいかに改善したかを示すデータ ・前回監査以来の成績向上度
 ・費用対効果 ・特に能力の高い生徒たちのニーズに合わせた指導
 ・生徒改善への職員の関わり具合(数学的能力およびリテラシー向上のために何を行ったか?)
 ・災害時の避難対策 ・体育授業時の安全確保策 

<校長も長くは勤められない>
 普通の教員の半数以上が、「10年以内に辞めたい」と思っている、と言われている。校長は、「給与優遇」でなり手が増えたと言われていたが、最新情報では、事態が後戻りしているようである。
 たとえば3月のGuardianは、「毎年、8校に1校の割で校長募集の新聞広告を出しているが、応募者はますます減っている。一方、早く辞めることを選択する校長が増えている。特に監査の後に、そうした決断をするケースが多い」と伝えている。
 こうした状況を反映し、全国校長会事務局長が、「教育者ではなく、民間会社から経営手腕のある人を校長にすべし」という提言をしているし(‘05年 11月)、本年の春には当時の教育相が、「校長は数校に一人いれば良い」という発言をしている(BBC?未確認)。
 学力が「テスト結果」に単純化され、教職の「脱専門化」・マニュアル化が進めば、校長が学校というコミュニティーを率いる教育者であるべき理由が失せていくのも当然であろう。(N)

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