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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 大阪・吹田市教委が〝君が代〟歌詞暗記の児童・生徒数を調査

2023年07月30日 | 「日の丸・君が代」強制反対

 ★ 「小1から歌えるよう」強制の〝根拠〟・音楽指導要領は政治塗れ (『マスコミ市民』)

永野 厚男(教育ジャーナリスト)

 自称〝闘う保守〟こと自民党吹田(すいた)市議・藤木栄亮(ふじきえいすけ)氏(55歳)の要求通り、吹田市教育委員会が3月9日、全市立小中学校に対し、〝君が代〟の歌詞を暗記している児童・生徒数を調査させ集計、藤木氏に伝えていた事案が発覚した。
 一部の学校では担任教諭が「君が代の歌詞を暗記している人」に手を挙げさせ、「暗記者数」を校長に報告。ロシア等の全体主義国ばりの市教委の思想調査強行に対し、現・元教職員や保護者ら市民が、批判する意見を多く寄せている。なお市教委は藤木氏の求め等を受け、卒業式当日の「国旗・校旗の掲揚位置確認の写真」もメールさせた。

 ★ 藤木氏の要求通り吹田市教委が「暗記率調査」約束

 吹田市議会2月定例会の、3月6日の予算常任委員会・文教市民分科会で、藤木氏は「学習指導要領は国歌君が代は、各学年で歌えるように指導すると明記。きちっと1年生から歌えるよう指導しているか」と質問。三井真吾(みついしんご)学校教育室主幹・指導主事(当時)が「全小学校36校、全中学18校、全学年で国歌の指導をしている」と答弁。
 藤木氏は「テスト問題でその回答はゼロ点。歌えるように指導しているか聞いているの」と再質問。三井氏は「仰る通り歌えるように指導している」と再答弁した。
 藤木氏は続けて「歌えるようにという、その結果は? 暗記率も昔出させたけどひどいもの。1年生でも皆校歌は3番まで覚えている。1分ぐらいの歌を歌えるよう指導、難しいものじゃない。また暗記率出して下さい」と迫り、三井氏は「暗記率提出、検討します」と、言いなり。
 市教委は3日後、全54校の市立小中学校長に対し、「卒業式・入学式について、2月定例議会に係る一斉調査」と題した事務連絡を発出。「君が代の歌詞を暗記している児童・生徒数」を回答シートに記入させ、即日FAX回答を指示した。
 このため〝君が代〟歌詞暗記者に挙手させる(挙手しない子も炙(あぶ)り出される)、人権侵害の調査をやる教員が出たのだ(音楽教諭に概数を聞き取った校長もいるが、これも教員にはプレッシャー。子どもたちへの一層の強制加速の危険性が大)。

 吹田市教委は藤木氏に対し、さすがに学校ごとの割合は伝えなかったが、小中全体・学年ごとの%は伝えてしまった。

 ★ 音楽指導要領の「歌えるよう」の加筆は政治塗(まみ)れ

 吹田市教委は「学習指導要領を踏まえて調査が必要だと判断した」と言う。
 しかし文部科学省は官報告示する指導要領の〝法的拘束力〟を、「学校が教育課程を編成する際の大綱的基準」と言っており、一言一句拘束するのはNG。まして「個々人の思想・良心の自由は、国家権力が侵してはならない」と定めている憲法第19条に(信教の自由を定めた20条にも)違反する〝君が代〟起立・斉唱強制は、憲法違反なのだ。

 では、市教委や藤木氏が〝君が代〟強制の〝根拠〟にしている、小学校音楽指導要領の政治色の濃さを解説しよう。
 89年3月15日、西岡武夫文相の改訂時は、「国歌『君が代』は、各学年を通じ、児童の発達段階に即して指導すること」と、成長・発達段階に配慮する文言を明記していた(但し卒業式等、学校行事の〝君が代〟強制は格段に強化)。
 ところが98年12月14日、有馬朗人(あきと)文相の改訂時、「発達段階に即して」を削除し、「いずれの学年においても指導すること」と改悪。渡海紀三朗(とかいきさぶろう)文科相時の08年2月15日公表の指導要領改訂の原案は、この98年の文言を踏襲していた。
 しかしこの原案公表当日、安倍晋三氏側近の衛藤晟一(えとうせいいち)・自民党参院議員が、文科省の教育課程課長だった高橋道和(みちやす)氏と、部下で教育課程企画室長だった合田(ごうだ)哲雄・現文化庁次長に面会。衛藤氏は「〝君が代〟を『歌えるよう』という文言の加筆」を強く要求。衛藤氏の所属する日本会議系の団体・日本教育再生機構(八木秀次(ひでつぐ)理事長)の組織的なパブリックコメント工作も〝加勢〟し、高橋・合田両氏は3月28日告示の改訂指導要領の「君が代はいずれの学年においても」と「指導する」の間に「歌えるよう」を加筆してしまった。
 9年後、07年【筆者から、「07年」は「17年」の誤記でした。お詫びし、修正します】3月31日改訂の現行指導要領も、教育課程課長になっていた合田氏らが反対のパブコメを無視し、この「いずれの学年においても歌えるよう」と強制する記述を墨守し続けている。

 ★ 藤木氏と吹田市教委、過去の〝エール交換〟

 藤木氏が吹田市議会で市教委に「暗記率を昔出させた」質問と答弁(答弁者は異動した者も)を、会議録から以下、抜粋・要約し紹介する。

●16年5月24日の本会議
 藤木氏が「教員は全員国歌斉唱をしているか。その確認方法は」と問うと、羽間功(はざまいさお)学校教育部長が「全小中教職員全員が国歌斉唱していると認識。確認方法は歌声で確認が41校、歌声と目視で確認が13校」と答弁。
 藤木氏は「また歌声という答弁が出た。校長・教頭も国歌斉唱する中、歌声だけで全教員の斉唱を本当に確認できるか。検証し不可能と結論が出たら、この議会答弁、誰が責任とるか」と再質問。
 「校長・教頭が全教職員の国歌斉唱状況を確認するのは困難。校長の教員への事前指導や式場の歌声から、全教員が歌っていると校長が認識するのは、否定するものではない」と答えた羽間氏に、藤木氏は「よく分らない答弁。検証して下さい」と、再調査を求めるような主張をした。
 藤木氏は続けて、「児童・生徒は全員国歌斉唱しているか」も問い、羽間氏が「練習時から全員歌っており、当日も一人一人確認はできないが、全員歌っていると認識している」と答弁。藤木氏はこの後、後藤圭二(けいじ)市長から「子どもを含め、国民が等しく自らの意思、思いを込めて国歌を斉唱できるような状況になることが、望ましいと考える。その状況作りに我々基礎自治体として、何ができるのかをしっかり検討して参りたい」いう答弁を引き出した。

●16年12月5日の本会議
 藤木氏が①小1・小2の〝君が代〟暗記の割合、②学校ごとの指導した日数、③指導内容を質問。
 羽間氏は
 ①は「1年生が25・6%、2年生が58・5%」と回答。

 ②は「現時点で指導していない学校が1・2年生ともに24校。指導している12校の1年生の内訳は、1日が7校、二日が1校、三日が1校、四日が1校、六日が2校。2年生の内訳は、1日が6校、二日が1校、三日が1校、四日が2校、六日が2校。現時点で指導していない24校は今後、年度内に指導する予定」「1校当たりの平均指導日数は、現時点で1年生が0・8日、2年生は0・9日。今後、年度内に指導する予定も含めた平均指導日数は、1年生が3・9日、2年生が四日となっている」と、実に詳細に答弁した。

 ③には、「オーケストラ演奏やオリンピックなどで選手が歌っている映像を鑑賞し、児童が親しみを持てるようにしたり、校長が歌詞の意味の説明を行った後に、皆と一緒に歌うなど、各校工夫し指導している」と答えた。

 続けて梶谷(かじたに)尚義(ひさよし)教育長が「小さい年齢の段階から市の指導が重要。日本人としての自覚と誇りを培うこと、我が国を愛する心を育てること、そして国歌を尊重する態度を育てることなど一体のものとして、特に義務教育段階の小・中では、系統的かつ計画的に指導していき」と述べ、後藤市長答弁を2度も引用した。
 そして「校長指導連絡会において、議会で出た国歌に関する質問と答弁を紹介し、改めて各校に適切な指導を行うよう周知徹底を図ってきた。今後も国歌の指導は指導要領に則り、いずれの学年においても歌えるよう、教科や特別活動において適切な指導を行っていく」と畳みかけた。
 全国的に教員不足が深刻なご時世だが、教委職員は暇なのか、政治色濃い思想的〝調査〟と集計に明け暮れているのだ。

 「天皇の治世の永続を願う」意の〝君が代〟は憲法の大原則・主権在民に反すると考える人は少なくない。その〝君が代〟を「自らの意思、思いを込めて歌え」と言う後藤市長や、後藤氏答弁を引き国家主義思想教育を主張した梶谷氏は、前記・憲法第19条・20条違反に加え、「国家より個人の尊重」を規定した憲法第13条にも抵触する。また質問・答弁とも「教育への不当な支配」を禁じた教育基本法第16条に違反するのではないか。
 前述の自民党議員と文部官僚が癒着し歪(ゆが)めた指導要領も、リベラルな野党の政権を作り、抜本的に改めさせよう。

自民党吹田市議・藤木栄亮氏(55歳)~吹田市の公式HPから

後藤圭二吹田市長(66歳)~吹田市の公式HPから

『マスコミ市民』(2023年8月号)


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