この一カ月はまことに騒然たる日々であった。否、「あった」という過去形は不適切で、現在進行形、そして未来形で語るべきであろう。幸いにして直接の被害はないものの様々な影響は受けている。先行きも暗澹たる状況である。
そんな中で「豆本三昧」もあったものではないのだが、かといって一人考え込んでいたところでどうなることでもないのでせめてこんな小さな世界に逃避して、ひっそり息をひそめていようと思う。
さてそこで、まずは「神曲」である。もちろんこれは「神曲」本文の豆本ではなく、ギュスターブ・ドレによる挿絵集である。ドレは以前「新約聖書」を豆本にしたが、その二段目ということになる。「地獄篇」と「煉獄篇・天国篇」の二冊構成。
豆本写真は地獄篇の扉部分と煉獄篇のページ、挿絵は地獄の最底にいる悪魔ルチフェロと天国の恒星天の天使たちを描いた部分である。ただドレの画は、非常に緻密な銅版画なので豆本にした場合に細部が再現出来ないことと、もうひとつモアレの現象が起きて斑な縞模様がでてしまうので、作品の出来は芳しくない失敗作である。
ただ今回の災害は正しく地獄篇そのものであろうし、我々はさらに奥底まで落とされるのか、すでに煉獄の世界での試練が始まっているのか、そしてその先には天国が開かれるのであろうか、そう考えてあえてここに載せた次第である。