日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(701)「論語・雍也 一六」と「含意の定義」と「ド・モルガンの法則」。

2020-09-01 18:39:19 | 訓読・論理学

(01)
(ⅰ)
① 不有祝鮀之佞、而有宋朝之美、難乎、免於今之世矣=
① 不〔有(祝鮀之佞)〕、而有(宋朝之美)、難乎、免(於今之世)矣⇒
① 〔(祝鮀之佞)有〕不、而(宋朝之美)有、難乎、(於今之世)免矣=
① 〔(祝鮀の佞)有ら〕ずして、而も(宋朝の美)有らば、難いかな、(今に世に)免るること=
① 〔(祝鮀のやうな弁舌が)有る〕のではなく、而も(宋朝のやうな美貌が)有るだけならば、難しいことだよ、(今の時世を)無事に送ることは。
(ⅱ)
② 不有祝鮀之佞、而有宋朝之美、難乎、免於今之世矣=
② 不〔有(祝鮀之佞)、而有(宋朝之美)〕、難乎、免(於今之世)矣⇒
② 〔(祝鮀之佞)有、而(宋朝之美)有〕不、難乎、(於今之世)免矣=
② 〔(祝鮀の佞)有りて、而も(宋朝の美)有ら〕ずんば、難いかな、(今の世矣)免るること=
② 〔(祝鮀のやうな弁舌が)有って、而も(宋朝のやうな美貌が)有る〕といふ、ことではないならば、難しいことだよ、(今の時世を)無事に送ることは。
然るに、
(02)
 実はどちらも意味が通じるのである。
① のほうは、古注といって、伝統的な解釈であるが、
② のほうは、新注といって、朱熹(朱子)の解釈なのである。
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年10月、325・326頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
P=祝鮀のやうな弁舌が有る。
Q=宋朝のやうな美貌が有る。
R=今の時世を無事に送ることは、難しい。
とするならば、
①  ~P&Q →R
② ~(P&Q)→R
といふ「論理式」は、
① 不〔有(祝鮀之佞)〕、而有(宋朝之美)、難乎、免(於今之世)矣。
② 不〔有(祝鮀之佞)、而有(宋朝之美)〕、難乎、免(於今之世)矣。
といふ「漢文」に「等しい」。
然るに、
(04)
(ⅲ)
1    (1)    P→ Q  A
 2   (2)    P&~Q  A
 2   (3)    P     2&E
12   (4)       Q  13MPP
 2   (5)      ~Q  2&E
12   (6)    Q&~Q  45&I
1    (7)  ~(P&~Q) 26RAA
  8  (8) ~(~P∨ Q) A
   9 (9)   ~P     A
   9 (ア)   ~P∨ Q  9∨I
  89 (イ) ~(~P∨ Q)&
          (~P∨ Q) 8ア&I
  8  (ウ)  ~~P     9イRAA
  8  (エ)    P     ウDN
    オ(オ)       Q  A
    オ(カ)   ~P∨ Q  オ&I
  8 オ(キ) ~(~P∨ Q)&
          (~P∨ Q) 8カ&I
  8  (ク)      ~Q  オキRAA
  8  (ケ)    P&~Q  エク&I
1 8  (コ)  ~(P&~Q)&
           (P&~Q) 7ケ&I
1    (サ)~~(~P∨ Q) 8コRAA
1    (シ)   ~P∨ Q  サDN
(ⅳ)
1     (1)   ~P∨ Q  A
 2    (2)    P&~Q  A
  3   (3)   ~P     A
 2    (4)    P     2&E
 23   (5)   ~P&P   34&I
  3   (6)  ~(P&~Q) 25RAA
   7  (7)       Q  A
 2    (8)      ~Q  2&E
 2 7  (9)    Q&~Q  78&I
   7  (ア)  ~(P&~Q) 29RAA
1     (イ)  ~(P&~Q) 1367ア∨E
    ウ (ウ)    P     A
     エ(エ)      ~Q  A
    ウエ(オ)    P&~Q  ウエ&I
1   ウエ(カ)  ~(P&~Q)&
            (P&~Q) イオ&I
1   ウ (キ)     ~~Q  エカRAA
1   ウ (ク)       Q  キDN
1     (ケ)    P→ Q  ウクCP
従って、
(04)により、
(05)
③  P→Q
④ ~P∨Q
に於いて、
③=④ である(含意の定義)。
然るに、
(06)
(ⅴ)
1   (1) ~(~P&Q) A
 2  (2) ~(P∨~Q) A
  3 (3)   P     A
  3 (4)   P∨~Q  3∨I
 23 (5) ~(P∨~Q)&
         (P∨~Q) 24&I
 2  (6)  ~P     35RAA
   7(7)     ~Q  A
   7(8)   P∨~Q  7∨I
 2 7(9) ~(P∨~Q)&
         (P∨~Q) 28&I
 2  (ア)    ~~Q  7RAA
 2  (イ)      Q  アDN
 2  (ウ)   ~P&Q  6イ&I
12  (エ) ~(~P&Q)&
         (~P&Q) 1ウ&I
1   (オ)~~(P∨~Q) 2エRAA
1   (カ)   P∨~Q  オDN
(ⅵ)
1   (1)   P∨~Q  A
 2  (2)  ~P& Q  A
  3 (3)   P     A
 2  (4)  ~P     2&E
 23 (5)   P&~P  34&I
  3 (6)~(~P& Q) 25RAA
   7(7)     ~Q  A
 2  (8)      Q  2&E
 2 7(9)   ~Q&Q  78&I
   7(ア)~(~P& Q) 29RAA
1   (イ)~(~P& Q) 1367アRAA
従って、
(06)により、
(07)
⑤ ~(~P&Q)
⑥   P∨~Q
に於いて、
⑤=⑥ である(ド・モルガンの法則)。
従って、
(03)(05)(07)により、
(08)
「含意の定義」と「ド・モルガンの法則」と「二重否定律」により、
①   ~P&Q →R
②  ~(P&Q)→R
といふ「論理式」は、
① ~(~P&Q)∨R
② ~~(P&Q)∨R
といふ「論理式」に、更には、
①   (P∨~Q)∨R
②   (P& Q)∨R
といふ「論理式」に、「等しい」。
然るに、
(09)
①(P∨~Q)∨R
②(P& Q)∨R
に於いて、
① R が「必ずである」場合。
② R が「必ずである」場合。
とは、それぞれ、
①(P∨~Q)が「」である場合。
②(P& Q)が「」である場合。
である。
然るに、
(10)
①(P∨~Q)が「」である場合。
とは、
①(~P&Q)≡(祝鮀之佞が無くて、宋朝之美が有る)場合。
といふ「1通り」である。
である。
(11)
②(P& Q)が「」である場合。
とは、
②(~P& Q)≡(祝鮀之佞が無くて、宋朝之美が有る)場合。
②( P&~Q)≡(祝鮀之佞が有って、宋朝之美が無い)場合。
②(~P&~Q)≡(祝鮀之佞が無くて、宋朝之美も無い)場合。
といふ「3通り」である。
従って、
(03)(08)~(11)により、
(12)
①   ~P&Q →R
② ~(P&Q)→R
に於いて、すなはち、
①(P∨~Q)∨R
②(P& Q)∨R
に於いて、
① の場合は、
①(祝鮀之佞が無くて、宋朝之美が有る)ならば、そのときに限って、今の時世を無事に送ることは、難しい。
といふことになり、
② の場合は、
②(祝鮀之佞が有って、宋朝之美が有る)ならば、そのときに限って、今の時世を無事に送ることは、難しくはない(のかも知れない)。
といふことになる。
(13)
② ~(P&Q)→R
といふ「論理式」からは、「分かり難い」が、これと「同値」である所の、
②  (P&Q)∨R
といふ「論理式」からは、
②(祝鮀之佞が有って、宋朝之美が有る)ならば、その場合は、
② 今の時世を無事に送ることは、難しくとも、難しくなくとも、「どちらでも良い」。
といふことが、「明確」である。
従って、
(01)(13)により、
(14)
② 不有祝鮀之佞、而有宋朝之美、難乎、免於今之世矣=
② 不〔有(祝鮀之佞)、而有(宋朝之美)〕、難乎、免(於今之世)矣⇒
② 〔(祝鮀之佞)有、而(宋朝之美)有〕不、難乎、(於今之世)免矣=
② 〔(祝鮀の佞)有りて、而も(宋朝の美)有ら〕ずんば、難いかな、(今の世矣)免るること=
② 〔(祝鮀のやうな弁舌が)有って、而も(宋朝のやうな美貌が)有る〕といふ、ことではないならば、難しいことだよ、(今の時世を)無事に送ることは。
といふ「漢文訓読」からは、
② 〔(祝鮀の佞)が有って、しかも(宋朝の美)有る〕ならば、容易なことだよ、(今の時世を)無事に送ることは。
といふことには、ならない