(01)
∨E とのアナロジーは、特殊な場合として、mとnのみを含む、2つの対象から成る世界を取り扱っていると仮定することによって、明らかにされる。その場合には、この世界に対して、∃x(Gx)は Gm∨Gn に等しい。
(E.J.レモン、論理学初歩、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、145頁)
従って、
(01)により、
(02)
{a,b,c}のみを含む、3つの対象から成る世界を取り扱っていると仮定すると、
① ∃x(Fx)≡Fa∨Fb∨Fc である。
然るに、
(02)により、
(03)
① ∃x(Fx)≡Fa∨Fb∨Fc であるならば、
② ∀x(Fx)≡Fa&Fb&Fc でなければ、ならない。
然るに、
(03)により、
(04)
① ∃x(Fx)≡Fa∨Fb∨Fc であって、
② ∀x(Fx)≡Fa&Fb&Fc であるならば、
③ ∀x∃y(Fyx) の場合は、「次(05)の手順」で、「展開」出来る。
(05)
(ⅰ) F(ax)∨F(bx)∨(cx)
(ⅱ){F(ax)∨F(bx)∨(cx)}&{F(ax)∨F(bx)∨(cx)}&{F(ax)∨F(bx)∨(cx)}
(ⅲ){F(aa)∨F(ba)∨(ca)}&{F(ab)∨F(bb)∨(cb)}&{F(ac)∨F(bc)∨(cc)}
従って、
(02)(04)(05)により、
(06)
{a,b,c}のみを含む、3つの対象から成る世界を取り扱っていると仮定すると、
③ ∀x∃y(Fyx)≡{F(aa)∨F(ba)∨(ca)}&{F(ab)∨F(bb)∨(cb)}&{F(ac)∨F(bc)∨F(cc)}
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(04)(05)(06)により、
(07)
{a,b,c}のみを含む、3人の対象から成る世界を取り扱っていると仮定すると、
① ∀x{少年x→∃y(少女y&愛xy)}
といふ「述語論理式」は、
(ⅰ)
{少年x→(少女a&愛xa)∨(少女b&愛xb)∨(少女c&愛xc)}
(ⅱ)
{少年x→(少女a&愛xa)∨(少女b&愛xb)∨(少女c&愛xc)}&
{少年x→(少女a&愛xa)∨(少女b&愛xb)∨(少女c&愛xc)}&
{少年x→(少女a&愛xa)∨(少女b&愛xb)∨(少女c&愛xc)}
(ⅲ)
{少年a→(少女a&愛aa)∨(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&
{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女b&愛bb)∨(少女c&愛bc)}&
{少年c→(少女a&愛ca)∨(少女b&愛cb)∨(少女c&愛cc)}
といふ「手順」で、「展開」出来る。
然るに、
(08)
少年a→(少女a&愛aa)
少年b→(少女b&愛bb)
少年c→(少女c&愛cc)
であるならば、「ある少年は、少女である」といふことになり、「矛盾」する。
従って、
(07)(08)により、
(09)
{a,b,c}のみを含む、3人の対象から成る世界を取り扱っていると仮定すると、
① ∀x{少年x→∃y(少女y&愛xy)}
といふ「述語論理式」は、
②{少年a→(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&
③{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女c&愛bc)}&
④{少年c→(少女a&愛ca)∨(少女b&愛cb)}
といふ「連言」に、「等しい」。
然るに、
(01)~(09)により、
(10)
⑤ ∃x{少女x&∀y(少年y→愛yx)}
といふ「述語論理式」は、
(ⅰ)
⑤{少女x&(少年a→愛ax)&{少女x&(少年b→愛bx)&{少女x&(少年c→愛cx}
(ⅱ)
⑥{少女x&(少年a→愛ax)&{少女x&(少年b→愛bx)&{少女x&(少年c→愛cx)}∨
⑦{少女x&(少年a→愛ax)&{少女x&(少年b→愛bx)&{少女x&(少年c→愛cx)}∨
⑧{少女x&(少年a→愛ax)&{少女x&(少年b→愛bx)&{少女x&(少年c→愛cx)
(ⅲ)
⑥{少女a&(少年b→愛ba)&{少女a&(少年c→愛ca)}∨
⑦{少女b&(少年a→愛ab)&{少女b&(少年c→愛cb)}∨
⑧{少女c&(少年a→愛ac)&{少女c&(少年b→愛bc)}
といふ「手順」で、「展開」出来る。
従って、
(09)(10)により、
(11)
{a,b,c}のみを含む、3人の対象から成る世界を取り扱っていると仮定すると、
⑤ ∃x{少女x&∀y(少年y→愛yx)}
といふ「述語論理式」は、
⑥{少女a&(少年b→愛ba)&{少女a&(少年c→愛ca)}∨
⑦{少女b&(少年a→愛ab)&{少女b&(少年c→愛cb)}∨
⑧{少女c&(少年a→愛ac)&{少女c&(少年b→愛bc)}
といふ「選言」に、「等しい」。
然るに、
(12)
②{少年a→(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&
③{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女c&愛bc)}&
④{少年c→(少女a&愛ca)∨(少女b&愛cb)}
といふ「連言」が、「真である」といふことは、
② は「真」であり、
③ も「真」であり、
④ も「真」である。
といふ、ことである。
然るに、
(13)
②{少年a→(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&
③{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女c&愛bc)}&
⑥{少女a&(少年b→愛ba)&{少女a&(少年c→愛ca)}∨
⑦{少女b&(少年a→愛ab)&{少女b&(少年c→愛cb)}∨
に於いて、
②と⑥ の場合、「aは少年であり」、
③と⑦ の場合、「aは少女である」ため、一見すると、「矛盾」する。
然る、
(14)
②{少年a→(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&
③{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女c&愛bc)}&
④{少年c→(少女a&愛ca)∨(少女b&愛cb)}
⑥{少女a&(少年b→愛ba)&{少女a&(少年c→愛ca)}∨
⑦{少女b&(少年a→愛ab)&{少女b&(少年c→愛cb)}∨
⑧{少女c&(少年a→愛ac)&{少女c&(少年b→愛bc)}
に於いて、「a、b、c」は、「任意の名前(arbitrary name)」であって、「固有名(proper name)」ではない。
従って、
(13)(14)により、
(15)
① ∀x{少年x→∃y(少女y&愛xy)}≡
②{少年a→(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&
③{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女c&愛bc)}&
④{少年c→(少女a&愛ca)∨(少女b&愛cb)}
といふ「等式」に、「問題」は無いし、
⑤ ∃x{少女x&∀y(少年y→愛yx)}≡
⑥{少女a&(少年b→愛ba)&{少女a&(少年c→愛ca)}∨
⑦{少女b&(少年a→愛ab)&{少女b&(少年c→愛cb)}∨
⑧{少女c&(少年a→愛ac)&{少女c&(少年b→愛bc)}
といふ「等式」にも、「問題」は無い。
然るに、
(16)
②{少年a→(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&
③{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女c&愛bc)}&
④{少年c→(少女a&愛ca)∨(少女b&愛cb)}
といふ「命題」、すなはち、
{a,b,c}のみを含む、3人の対象から成る世界を取り扱っていると仮定した上での、
②{少年aは、少女bか、少女cを愛す。}そして、
③{少年bは、少女aか、少女cを愛す。}そして、
④{少年cは、少女aか、少女bを愛す。}
といふ「命題」は、結局は、
①{すべての少年は、ある少女を愛す。}
といふ「意味」になる。
(17)
⑥{少女a&(少年b→愛ba)&{少女a&(少年c→愛ca)}∨
⑦{少女b&(少年a→愛ab)&{少女b&(少年c→愛cb)}∨
⑧{少女c&(少年a→愛ac)&{少女c&(少年b→愛bc)}
といふ「命題」、すなはち、
{a,b,c}のみを含む、3人の対象から成る世界を取り扱っていると仮定した上での、
⑥{少女aは、bが少年であるならば、bによって愛され、そして、cが少年であるならば、cによって愛されるか、}または、
⑦{少女bは、aが少年であるならば、aによって愛され、そして、cが少年であるならば、cによって愛されるか、}または、
⑧{少女cは、aが少年であるならば、aによって愛され、そして、bが少年であるならば、bによって愛される}。
といふ「命題」は、結局は、
⑤{ある少女は、すべての少年によって、愛される。}
といふ、「意味」になる。
従って、
(15)(16)(17)により、
(18)
① ∀x{少年x→∃y(少女y&愛xy)}≡{すべての少年は、ある少女を愛す。}
⑤ ∃x{少女x&∀y(少年y→愛yx)}≡{ある少女は、すべての少年によって、愛される。}
であって、尚且つ、これらの「論理式」は、それぞれ、
①{少年a→(少女b&愛ab)∨(少女c&愛ac)}&{少年b→(少女a&愛ba)∨(少女c&愛bc)}&{少年c→(少女a&愛ca)∨(少女b&愛cb)}
⑤{少女a&(少年b→愛ba)&少女a&(少年c→愛ca)}∨{少女c&(少年a→愛ac)&少女c&(少年b→愛bc)}∨{少女c&(少年a→愛ac)&少女c&(少年b→愛bc)}
といふ風に、「展開」出来る。
従って、
(18)により、
(19)
例へば、
⑨ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}≡{象は鼻が長い。}
⑩ ∀x∃y{(鼻yx&象x→長y)&(鼻yx&~象x→~長y)}≡{鼻は象が長い。}
といふ「述語論理式」であっても、それぞれ、「然るべき型」に、「展開」出来るに、違ひない。