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ハイサイ!! うちなぁぐち vol.13  比嘉光龍

2009年06月22日 | 月曜(2009年4~6月):比嘉光龍さん



 今回は「うちなぁぐち(おきなわ語)」と「うちなぁやまとぅぐち(おきなわ日本語)」の違いついて書きたいと思います。その違いをわかりやすく表にしてみました。



 これを見て驚かれた方もいらっしゃると思いますが、「おじぃ」、「おばぁ」はうちなぁぐちではないんです。「おじぃ」、「おばぁ」と言う言葉は戦前、昭和期に入ってから流行り始めたようです。また、「にーにー」、「ねーねー」と言う言葉はどうやら戦後から使われているようです。いずれにせよ「おじぃ、おばぁ、にーにー、ねーねー」などは、日本語が混じった言葉で、日本語でもないし、おきなわ語でもない言葉で、「うちなぁやまとぅぐち(おきなわ日本語)」と呼ばれるものです。

 戦後日本で、「パパ」、「ママ」という言葉が流行ったことと同じようなことだと考えて下さい。「おじぃ、おばぁ」は日本語を借用して流行っている言葉、「パパ、ママ」は英語を借用して流行っている言葉という共通点があります。
あるサイトの調査では、61パーセントの方が「パパ、ママ」と呼ばせていて、「お父さん、お母さん」と呼ばせる家庭は27パーセントとありました。現在では圧倒的に「パパ、ママ」と言う呼び方が日本の家庭では一般的になっているようです。

 しかし、だからと言って、日本語の教科書や辞書、また日本語を外国人に教える時に「Father」を「パパ」、「Mother」を「ママ」とは訳さないし、また、教えないでしょう。やはり「Father」は「父、お父さん」、「Mother」は「母、お母さん」でしょう。「パパ、ママ」とは俗的なもので、本来の日本語ではないのです。これとまったく同じで、「おじぃ、おばぁ」は俗的に呼ばれていて、本来は上の表にあるように、「おじいさん」を「たんめー(士族)、うすめー(平民)」と呼び、「おばあさん」は「ぅんめー(士族)はーめー(平民)」と呼びます。「おじぃ、おばぁ」は言語的に分類すると「うちなぁやまとぅぐち」と言えるんですね。

 二つの言葉を比べてみると、「うちなぁぐち」には敬語があり、「うちなぁやまとぅぐち」にはほとんど敬語がないと言え、それが二つの言葉の大きな違いだといえるんです。
その証拠に表5番の言葉「だからよー」を例にあげてみましょう。これは敬語に直せません。強いて言えば「だからよーですよね」と語尾に「ですよね」という日本語をくっつけることしか出来ないのです。ただ、「だからよーですよね」とはまず言わないのですが。

 その「だからよー」をうちなぁぐちに直すと「やくとぅよー」と言います。「やくとぅよー」は、友達や年下に使う言葉ですが、それをうちなぁぐちならば、いくらでも敬語に直すことが出来ます。まあ普通の敬語ならば「やいびんやー」で良いのですが、もう少し丁寧に言うのならば「あん、やみしぇーびんやー」と言えます。同じく他の言葉も「うちなぁやまとぅぐち」は敬語に直せず、うちなぁぐちはすべて敬語に直せます。

 わかっていただけましたでしょうか?「うちなぁぐち」は言語なので、丁寧語、謙譲語、敬語など、すべて存在します。しかし、「うちなぁやまとぅぐち」には、それらはほとんどありません。
「うちなぁぐち」は学校、県庁、市町村役場、テレビのニュース、県や市町村議会、警察、裁判所、国や県や市町村の機関などの公的機関では話すことは出来、また教育をすることも可能ですが、「うちなぁやまとぅぐち」をこれらの機関で使用するというのは、まず、ありえないと言えると思います。

 少し学問的なことも書いておきますが、「うちなぁやまとぅぐち」は言語学では「ミクストランゲージ(Mixed Language)」と分類されるようです。言語学で「ミクストランゲージ」とは「スラング(俗語)」と同じような言葉だと定義されていているようです。それをもう少しくだけて言うと「タメぐち」のようなものだと思って下さい。仲間うちで使う、仲間だけしか知らない言葉のようなものです。それは、目上の人や学校の先生などには使えないし、ましてや、「だったばー」とか「違うやしー」と言う言葉を、学校の教科書に載せて子供たちに教えたいと思うでしょうか?

 うちなぁやまとぅぐちは、ほとんどタメぐちなので、同級生同士で話をしていると、とても楽しいでしょうが、それを学校の先生、また、会社に就職し、そこの社長さんへ、また怖い上司へ使うなどと言うのはありえないんですね。








※写真について
 私の担当しているラジオ沖縄の番組「民謡の花束・光龍ぬピリンパラン日曜日」ですが、土曜日も民謡の花束はやっていて、そのパーソナリティーの「当銘由亮・新垣小百合」のコンビとスペシャルということで私は土曜日にゲスト出演し、二人は日曜日にゲスト出演してもらいました。ゆんたくが大盛り上がりで、私が演出、脚本をした「仲島ぬ吉屋」という題の短い芝居を、写真のメンバー5人で日曜日の3時の時報とともに20分ほどやりました。皆、芝居のプロなので、初めてとは思えないほど、とても素晴らしい出来でした。リスナーからの反響が良かったです。1枚目の写真の前列右が「新垣小百合」左が「藤田佳子」後列右が「高宮城実人」後列中央が「当銘由亮」で後列左が私。2枚目、3枚目の写真はちょうどそのお芝居を生放送で演じている所、皆、真剣です、はい。



text:比嘉光龍



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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 (親川やいびん)
2009-06-22 16:26:58

オジーとオバーが
うちなぁやまとぅぐち
だったとはビックリです...。

うちなぁぐちだけを
使いたいとこだわっている
僕には非常に勉強になりました。

にふぇーでーびる!
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  (陽光)
2009-06-22 22:46:31
ぅんめーは聞いたことがないですね…首里士族の言葉でしょうか?? わんぬたーりーとぅあんまーぬしじや、なーふぁんちゅやいびーしが、彼らによるとおばあさんに当たる那覇言葉は「はんしー」だそうです。はんしーが表に載ってなくて残念です!
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やいびーさ (比嘉光龍(ふぃじゃ ばいろん)やいびん。)
2009-06-23 11:27:37
親川くん、御拝(にふぇー)でーびる。

また、陽光さん、そうですね、スペースの都合上、書くことができませんでした。那覇では「はんしー」のほか「ぱーぱー」とも呼ぶこともあります。また、島尻方面では百姓のおじいさんは「うすめー」のほか、なぜか士族のおばあさんの呼び方「ぅんめー」をそのまま使い「おじいさん」と呼んでいます。なぜだか知りませんが。

また、陽光さん「わんぬたーりー」という言い方はしません。「わったーたーりー」と言います。


比嘉光龍(ふぃじゃ ばいろん)
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  (陽光)
2009-06-23 18:39:58
家族に確認したところ、やはりぅんめーはなじみがないそうですぱーぱーも知らない…と家族に言われ戸惑いましたが、那覇方言辞典にありました他の単語は聞いたことあるのばかりで、おばあさんだけ違うのは不思議です。

>「わんぬたーりー」という言い方はしません。「わったーたーりー」と言います
うわーーお恥ずかしいです。。複数形になるんですね。
懲りずに琉球語で書きこむこともあると思います…添削ありがとうございました!
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Unknown (比嘉光龍(ふぃじゃ ばいろん)やいびん)
2009-06-25 12:53:52
陽光さん「ぅんめー」ですが、うちなぁぐちには「ん」の発音が2つあるんです。一つは「胸(んに)」の「ん」で、これは日本語の「ん」と同じ。しかし「稲(ぅんに)」の「ぅん」、これは2文字書いていますが発音は1音なんです。琉球語音声データベースという琉球大学のサイトがあり、そこから私は引用しています。
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ありがとうございます!   (陽光 )
2009-06-25 22:50:22
ぅん は喉の奥で一瞬詰まらせるというか破裂させる発音ですよね。難しくて私が言うと「んめー」に。「ぅわー」も、わーになってしまいます。音声データベース私も時々覗いてますヨ。
自分が知らないからって「聞いたことない」などと乱暴な言い方して申し訳ありませんでした。これからも記事楽しみにしてます
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Unknown (比嘉光龍(ふぃじゃ ばいろん))
2009-07-04 15:17:24
陽光さん、全然乱暴ではないですから、気になさらないで下さいね。新しく知ることができることを喜びと感じられるということはとても幸せだと思います。
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