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紅茶の島のものがたり vol.2 冨井穣

2009年04月10日 | 金曜(2009年4月~):冨井穣さん
第2話
アッサムと同緯度のティーベルト地帯





 山城が本格的に茶業に取り組み始めたのは16歳のころ。当初は父・豊の指導のもと緑茶栽培を学んでいたが、やればやるほど、考えれば考えるほど、「紅茶を作ってみたい」という思いは募っていった。
「沖縄で緑茶を作るには、クリアすべき問題があまりにも多い」
 それではなぜ、沖縄は紅茶栽培に適しているのだろうか。ポイントは、カテキンと紫外線である。
 緑茶が「渋い」と感じるのは、茶葉の主成分カテキンが原因であることはよく知られている。カテキンとは、ワインやカカオなどでおなじみのポリフェノールの一種で、体内に摂取すると活性酸素を除去する働きがある。近年はその抗酸化作用に注目が集まり、さまざまな健康食品やサプリメントが開発されているほどだ。
 さて、このカテキンは茶葉が紫外線に当たると増加する性質があり、カテキンの多いお茶は味が当然渋くなる。例えば、初摘みの新茶より二番茶のほうが渋いのは、茶葉が紫外線にさらされている期間が長いからである。また、まろやかな味わいが特長の高級茶「玉露」は、カテキンの生成が抑えられるよう、直射日光を避け被覆栽培されている。ということは、紫外線の量が多い沖縄で緑茶を栽培すれば、カテキンの割合が増え渋みの強いお茶ができるというわけだ。
「日よけの方法を工夫するなど、できる限りの策を尽くして、ようやく他府県と同じスタートラインに立てる」
という山城の言葉もうなずける。
 でも、紅茶なら勝算がある。
 紅茶は、茶葉の中に含まれる酸化酵素の働きを利用して、茶葉を発酵して作られる。その過程でカテキンは化学変化を起こして減少し、テアフラビン、テアルビジンという成分に姿を変える。すると、カテキン由来の渋さはほとんどなくなり、紅茶特有の風味と香りが新たに生まれる。
「つまり、紅茶を作るにはカテキンが多いほうが有利なんです。緑茶は摘採後に発酵を止めてしまうので、カテキンがそのまま茶葉に残って渋味の原因になりますが、紅茶はカテキンの発酵のさせ方次第でいろいろな味を試すことができるのです」
 確かに考えてみれば、インドやスリランカなど世界で盛んに紅茶が生産されている国は、赤道付近の「ティーベルト地帯」と呼ばれる温暖な地域に集中していることが分かる。
 ちなみに、インド東部のアッサムは北緯26度。山城が住む沖縄県うるま市も北緯26度。まさに紅茶栽培の適地である。


text:冨井穣