ねがいのいえ理事長 藤本真二のブログ

障害を持つ方たちに寄り添い支援する日々の中で感じたこと、そのほか伝えたい話題などを、思いのまま日記風に綴ります。

システムはひとりのために

2009-01-29 23:04:18 | Weblog
 師匠がいる。

 20年以上前、福祉の世界にはいってまもなかった頃、世の中で福祉と呼ばれるものがみんなどこか間違ってると思っていたとき、東京都豊島区に、一軒のアパートを改装し、24時間年中無休で、障害のあるかたも高齢のかたもお預かりして介護するという事業所が生まれた。まだレスパイトという言葉もなかった当時、事業として成功した日本で初めての場所。名前は「ゆきわりそう」。

 小さな一軒家にたくさんの人がひしめき合い、笑い声の絶えない温かさであふれていた。そして、制度では救うことの出来ない困っているかたたちをひとりひとり違った形で支えていった。これでいい。こうでなくてはいけない。そう思った。

 その代表の姥山さんが自分の師匠だと、本人の了解をとらずに世間に名乗っている。

 講演会も数多くこなす姥山さんの、忘れられない言葉がある。

「たったひとりであろうとも、必要としている人がいるのならシステムを作ればいい。するとそのシステムが次に同じように困っている人をたくさん支えることになる」

 今では大勢の利用者が通うゆきわりそうの作業所だが、最初はたったひとりの自閉症の青年のために開いたものだった。

 ニーズが集まったら新しいシステムを考えるのだという世間の常識を超えた高い理念。

 師匠から学んだことをそのまま実現するかのように、今日も新しいチャレンジに走り回りました。


 

ビジネス感覚

2009-01-27 23:25:16 | Weblog
 ビジネスの勉強をしていたところ、面白いものを見つけて昨年研修に行きました。考えをまとめ新しい発想を創造する「マインドマップ」という技術。今まで思いつかなかった新しいアイデアがひらめきました。

 そして、膨大な書籍や資料を速く読む読書術。目で見たものを右脳に写し撮るように記憶していく「フォトリーディング」。研修を受けてから1ヶ月で4 0冊読みました。おかげでまったく知らなかった農業や流通のことがじょじょにわかってきました。

 テレビも「経済羅針盤」「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」が面白くて見逃せなくなってきました。これからの福祉は、ビジネス感覚をもって収益を上げていくことが、ひいては障害をもつかたの地域生活を支えていけるのだと感じています。補助金だけが運営の糧だった今までの考えから脱却していかなければと思います。

今日のTVタックル

2009-01-26 23:11:17 | Weblog
 せっかく書いたブログが最後の送信ボタンでエラーになり消えてしまうことがたびたび。いつも初めから書き直していたのですが、先週はキックボクシングで受けた肋骨の痛みで気力が続かず、間が何日もあいてしまいました。新規事業の多忙にも追われ、週末の研修も行かれず、でもおかげでひと息つくことができました。無理なときに何かをあきらめるのは大事なことです。

 国民の7割が反対している給付金を何がなんでもやりたい政治家とは何なのだろうと思います。

 内部留保がたくさんあるのに派遣切りやリストラを断行する企業。内部留保は会社の危機に備えるものであって、今使って倒産したらもっと多くの社員が路頭に迷うと言っています。
 しかし、その危機とはいつのことなのだろう。こんなにたくさんの人が路頭に迷ってる今がその時でなくて、一体いつの何に備えるのだろう。

 しかし今日のTVタックルは面白かった。最近多読している勝間和代さんが出てきたので楽しみに見たのですが、意外と柔軟性に欠ける人という印象を感じました。逆に、森永卓郎さんはさすが面白い意見でした。定額給付金を配るのならひとり10万円、それなら消費は促進できるという意見。それはそれでひとつの答えかもしれないと思いました。

 公務員改革ということを民主党や共産党の人が訴えているが、それは「天下り」をなくすという主張。自分の訴えている、全公務員の待遇を見直して欲しいという考えはまだ出てきません。しかし週刊誌や書籍では、公務員の厚遇を糾弾する記事がよく目に付くようになってきました。

 消費税アップはやるべきことをすべてやったあとだと思います。

 それにしてもあの総理大臣はなぜ、まだ何もしないうちから「中福祉中負担を目指すなら・・・」という言い方なのだろうか?なぜ最初から「高福祉」を目指さないのだろうか?どちらを選ぶのか国民にまず問うべきであり、最初から「高福祉」は無理なものと決めつけないで欲しいと思います。

 出演者が「介護や医療が守られた国では貯金を残さずに死んでいくんだ。そうしたら消費が落ち込む心配はないんだ」と言っていましたが、こういう当然の意見を政治化がきちんと理解してもらいたいです。

長倉洋海

2009-01-18 22:37:44 | Weblog
 長倉洋海という写真家がいる。途上国や戦争をしている国をめぐり、そこで暮らす人々の撮影を通して、その国の様子を伝えるフォトジャーナリストである。

 「今は戦争で大変だけど、戦争がなかったら本当は最高の国なんだ」自然の恵み豊かな祖国のことを語るとき、生まれたときから戦争の中で生きているアフガニスタンの少年たちの顔が輝いて見える。

 スラムの裏通りで泣きじゃくる幼い少女は、天真爛漫なエネルギーを全身から発散する。

 生き生きと野菜を収穫する畑の子どもたち。

 自分で作ったコーヒーをいつくしむように味わうブラジルの老人。

 森の中にたたずむ少年は神秘的なまでにかわいらしく、まるで妖精だ。

 写真家になった当初は、戦場で累々と横たわる死体の現場を撮って歩き、諸国の様子を伝えようとした。しかしたくさんの人々との出会いの中でそのやり方に疑問を感じ、方法を変えた。

 自分なら逃げ出してしまいたくなるような悲惨な状況のはずなのに、なぜそこで暮らす人々はこんなにたくましいのか、なぜこんなに誇り高く生きられるのか、そのエネルギーや表情の輝きを伝えることで、世界の状況を伝える写真家となった。

 写真展で現物の作品を前にすると、その力のすごさに金縛りに合ったように身動きできなくなる。それはものすごい感動なのである。
 
 作品はときどきチャリティーとして販売され、途上国に学校を作ったりインフラを整備するために寄付される。「行列」の絵は買えないけれど、この写真はいつかぜひ購入して、ねがいのいえに飾るのが夢だ。

 久しぶりに東京で写真展が開かれます。1月24日~2月2日。新宿の高野ビル4階、コニカミノルタプラザ。フルーツパーラータカノの上です。ぜひご覧になってください。長倉さんのホームページはこちら。

http://www.h-nagakura.net/


永田農法

2009-01-16 23:59:50 | Weblog
 就労支援事業の展開のためビジネス書を大量に読んでいる毎日。ここ10日くらいは農業に関する本を読み通しているのですが、中でも「永田農法」という方法がとても素晴らしいそうで、野菜の個性を引き出し伸ばすのだといいます。ねがいのいえの子育て方針に通じるノウハウが農業にもあるのかと、とても魅かれました。

 今までまったく知らなかったことを勉強するのは面白くて楽しいことです。4月から障害者のかたたちと畑の作業が始まったときにはぜひ応援に行きたい、農業について一から勉強してみたいと、わくわくしてきました。

 今日は短めですがこれで。

井戸端元気

2009-01-14 00:12:23 | Weblog
 ねがいのいえを始めるとき、障害者だけでなく高齢者や障害のない子の保育など、どんなかたでも集まってこれる家になることを描いていた。生活そのものが最高のリハビリなのだと説いて老人介護の世界に変革を呼んできた三好春樹氏の生活リハビリ講座を受け、目指す形を実現している富山の宅老所を訪ねて歩いた。

 遊びりテーションの講座に参加したとき、隣に座った青年がきさくに話しかけてきて、すでにNPO法人を立ち上げて、千葉で宅老所を始めたところだと語り、考え方や方向性が自分とまったく同じで感銘を受けた。

 木更津で「井戸端元気」という宅老所を運営する伊藤英樹さん。最近はテレビにもよく登場する。今や珍しくなくなった宅老所界で、老舗ではない事業所が取材を受けるのはすごいことだ。その素晴らしさはテレビからも十分伝わってくるが、先日出版された本が詳細に伝えている。講談社から出た「奇跡の宅老所 井戸端元気物語」。
 
 伊藤さんの揺るがない信念は、対応の難しい人でも決して断らず裏切らない。また、ボランティアやスタッフで入ってくるかたたちの中にも、心を病む人があり、そのような方たちのほうが、難しい利用者と上手に関われることがある。そのかたたちの力で難題を解決し道を開いて歩んでゆく姿は、感動的に素晴らしい。

 「制度に利用者を合わせるのでなく、利用者が困っているから制度を使い、制度の及ばないところもなんとかするのだ」という考え方を伝えている伊藤さん。

 全国津々浦々には、私たちと同じ考えでがんばっている人たちがいる。それは嬉しい事実である
 

つれづれに

2009-01-12 22:53:49 | Weblog
 今日は家から一歩も出ずに事務や勉強で過ごしましたが、思うことの多い一日でした。

 今日の新聞で、麻生内閣の支持率は急落、国民の80%が定額給付金に反対、もっと役に立つことに使って欲しいとみんな言っています。
 仕事と家を失う人が多い一方で、今まで製造業で働いていた人たちはまた製造業を希望することが多く、求人の多い接客業や介護には応募しないのだそうです。人見知りで無理だというそうですが、生きるか死ぬかの瀬戸際でそれはどうだろうかと感じました。社会の変化に合わせて自己変革や自己への挑戦は必要だと思います。これまで公共事業で生き延びてきた土建屋さんたちだって、これからは介護をやるべきだと思います。

 そのとなりの欄には、医師不足に対応して医学部の定員を増やすという政策がやっと決まったことを遅すぎると断じている記事がありました。そして同時に、医学部の試験科目を考え直すよう提言されていました。
 医学部の入試はこれまで数学や物理で高い点数が求められてきたが、それは医学にはほとんど関係がなく、むしろ医師は、人の苦しみを理解し人の痛みを感じとれる高い人間性が求められる。また、診断には科学を超えた直感力も必要とされる。だからむしろ、国語や論文などでその素養を見抜く必要がある、という提言でした。
 国語が人間性を反映するかどうかはわからないけれど、数学よりも近いだろうと思います。興味深い話だと思いました。

 4月からの新規事業で農業をやるので、今日は農業関係の本を5冊ほど読みました。ちょうど今「カンブリア宮殿」を見ていたら、長野県で農業をやっている会社のことを放送していました。国の間違った政策で衰退の一途をたどった農業を救うのは、その危機に気づきなんとかしたいと考える個人の力です。そして日本の農業が待ったなしの危機を迎えたところで、今、全国津々浦々で、なんとかしようという草の根からの動きが爆発的に起ころうとしているようです。
 ねがいのいえの活動は国の農業政策を補うようなものではなく、障害を持つ人たちが気持ちよく働ける場を作るのが目的ですが、志を持った農のプロがやってきて、かなりの収穫を上げられる未来へ導いてくれないだろうかと夢見ています。

 まだまだたくさん書きたいのですが、続きはまた明日。

 

項羽と劉邦

2009-01-10 22:19:01 | Weblog
 戦国時代の中国を統一しようと強豪が競い合っていたころ、やがてふたりの英雄が頭角をあらわした。世代も体格も似ていたふたりだが、その英雄ぶりは対照的だった。

 連戦連勝で名をとどろかせた項羽は、自ら軍の先頭に立ち戦場を駆け巡って敵を倒す戦いのカリスマ。部下が気軽に話しかけることもできない威圧的なオーラを放っていた。信頼する唯一の側近はたったひとりの参謀だけだった。

 一方の劉邦は、百戦全敗のだめ武将。だが底抜けに人がよく、劉邦のためなら命をかけて尽くしたいという優秀な部下が集まってきた。気弱な主人を後押ししながら、7人の参謀がそれぞれの得意な戦略をたてながら、組織力で戦う。「背水の陣」ということわざの語源にもなった、水辺に誘い込み水を利用した戦いを得意とする戦術家がいた。敵軍に嘘の情報を流し、項羽と唯一信頼する側近の仲たがいをさせた策謀家もいた。そうして徐々に敵を弱らせながら、最後は見事な戦略で勝利をおさめる。

 項羽と劉邦はおそらく、何度戦っても劉邦軍が勝つ。

 組織は劉邦軍でなければならないとずっと思ってきたはずなのに、福祉の世界に飛び込んで以来、何でも自分でやってみたくて、まるで項羽になろうとするかのようにあらゆる経験を積んできた。

 しかし。急速に発展をとげている障害福祉の流れの中で、優秀なスタッフに支えられて強力な組織力を育てていく団体が大きな夢を実現していけるのは明らかなこと。

 ねがいのいえが劉邦軍になれるかどうか、自分のあり方が問われているとずっと思っていました。劉邦のような底抜けにはなれないけれど、確実な成長を遂げているスタッフの最近の姿に感動する今日この頃。歩幅を大きくして進んでいける日が近いことを感じています。

定額給付金

2009-01-07 22:50:20 | Weblog
 定額給付金は税の無駄使いだという声が大きい中、開き直ったかのように、こんどは高額所得者ももらってください、議員ももらって使います、と言い始めました。景気を刺激して経済効果を促すのだそうです。

 本当に生活に困っている人だけに配られるのなら文句はないけれど、もらえる下限が年収1800万円とか、議員ももらうとか、あまりにもでたらめな話に息が止まりそうです。高額所得者はそんなものもらわなくても自分のお金を使えば済むこと、橋元知事が年収400万円以下の人にだけ配って、あとは府民のために使おう、失業者対策には公務員の仕事をシェアリングしようと、大変具体的でいいことを言っているのに、国は、給付金として配る以外の使い方は1円も認めないと言っていました。

 国民ひとりひとりが政治の動きをよく見すえて、思いや憤りをしっかりと発信するべきだと思います。

イマジン

2009-01-05 21:59:59 | Weblog
 遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。年中無休のねがいのいえですが、この年末年始はいつもより利用も少なく、ゆっくりさせていただきました。また今日からまたいろいろな思いを書き綴っていきます。今年もよろしくお願いします。

 年末年始は連日「年越し派遣村」を報道していました。こんなことがこの日本で起こるなんて誰が想像しただろうか。本当に大変な時代なんだと思います。

 しかし、家を失って日雇い労働で生きてきた人は今までもたくさんいました。高度成長期に危険な工事現場で働いてきた人たちが病気になって、山谷や釜が先で暮らしてきた人たちなど、そんなかたたちは何十年も政治的虐待といってもいいような人生を強いられてきました。今、無視できないほどの数の人が同じ目にあって、政治もマスコミも動き出したのは皮肉なこととも感じます。

 10年以上前から一貫して同じ姿勢だったのは、支援してきたボランティアの人たちだけです。先日も書きましたが、なぜこのような活動がボランティアの手でおこなわれ、政策としておこなわれないのか、怒りが絶えません。

 今日のTVタックルでは、民主党が政権をとれば、天下りをなくし官僚を整理して、国家公務員の人件費を2割削減して20兆円の予算を作り、福祉と医療にあてると言っていました。まさに自分がこれまで訴えてきたのと同じ話です。国家公務員の待遇が見直されれば、自動的に地方公務員も見直されるでしょう。番組ではすでに民主党が政権をとったかのような雰囲気で盛り上がっていましたが、本当にそんなことが出来るのか、官僚は絶対にいうことをきかないぞ、と反論されていました。

 官僚とはそんなに悪い人間の集まりなんでしょうか?評論家は「官僚は悪だ」とはっきり言ってましたが。

 自民党の渡辺元大臣が、給付金は的外れだから撤回をし選挙によって民意を聞いてくださいという訴えを出しています。自民党にもこんなまともなことを言う人がいるのかと思いましたが、それについて他の議員や官房長官の言葉は、覚悟を決めて提言している人間に対しなんと誠意のない態度だと思いました。早く選挙をして結果に目を向けるべきだと思います。

 海外では戦争が激しさを増し犠牲者が増えています。武力を持たなければ国を守れないという人がたくさんいますが、アメリカは軍備を増やし続けたあげくに国家衰退に瀕しながら、結局テロも戦争もなくすことができませんでした。

 兵士と武器を送る代わりに、食料と薬とインフラを送ってあげたら、とっくに戦いは終わっていただろうと思います。

 そんなことは夢だという人がいるけれど、ひとりひとりがその夢を持ち続け、やがてみんなが夢を見られるようになったら、世界は平和になるだろうとジョン・レノンが言っていました。

 ガンジー、チャップリン、ジョン・レノンなど、自分の考えを信じて貫いた人が世界中にいます。

 夢を持って走り続ける、2009年はそんな年になると思います。