ねがいのいえ理事長 藤本真二のブログ

障害を持つ方たちに寄り添い支援する日々の中で感じたこと、そのほか伝えたい話題などを、思いのまま日記風に綴ります。

お世話される人から役に立つ人へ

2008-09-30 01:12:54 | Weblog
 小さな頃から人のお世話をするのが大好きだった小5のもえちゃんが、その心を持ち続けたまま成長し、最近は、体の不自由な子に靴をはかせたり、お茶を飲ませたりする技術にますます磨きがかかってきました。水分を飲む時にむせることの多い涼ちゃんなのに、もえちゃんが飲ませると不思議とむせない。そんな様子を眺めるたびに、過去に勤めた施設での体験を思い出します。

 20年前、レスパイトという言葉もまだなかった時代に、全国で初めてレスパイトを事業として成功させた東京の「ゆきわりそう」で、修行を積んでいた頃。小さなアパートを改装した50坪の建物に、子どもからお年寄りまで、障害のタイプも様々な人がごった返すように集まって、活気に満ちた幸せな場所を作り上げていた。いろいろな人が集まったとき、知的な障害はあっても体は自由な人が、体の不自由な人のお世話をするという現象が自然に生まれ、体は不自由でも知的な遅れのない人が、知的障害の方に、いろいろなやり方を教えながら、互いに足りないところを補って、助け合って生きる様子が展開していた。

 代表は、いろいろな人が一緒に生きることで、お世話される人から役にたつ人へ成長することができる、というメッセージを発信していた。

 数年後、看護師になって勤めたある療育施設で、お世話好きな中学生の女の子が小さな子におやつを食べさせていた。翌日の申し送り簿で、「このような光景をご家族が見たらどう思うでしょうか?専門のスタッフが介護してくれると思って預けているのに、許されないことです」という注意が申し渡された。

 施設にはそれぞれの考え方がある。専門家ひとりひとりにもそれぞれの考えがある。だからどちらがいいとは評価できない。しかし。

 ねがいのいえは、ひとりひとりの心が大切にされる場所でありたいと思います。お世話好きな子が、人の役に立つことで豊かな成長を遂げていくことは素敵なことだし、年齢も障害のタイプも違う人たちが、互いの存在を意識し、言葉の会話はできなくても、「この子かわいい」「このお姉さん好きだ」という内面の思いを育てて成長しあうことは素晴らしいことです。

 ゆきわりそうやねがいのいえで展開している姿が、世の中を明るく照らし、豊かな世界を築く縮図であって欲しいと願います。

 

心のケア

2008-09-21 23:13:22 | Weblog
 心のケアの研修に参加してきました。濃密な内容で大変疲れましたが、今回もまた、深く感じ考えるすごい研修でした。

 日本抱っこ方協会が主催する研修で、障害を持つ人に限らず、すべての親と子の心をつなぐことを目的とする子育て支援の方法です。障害を持つ方たちを支援する技術として、ねがいのいえオープン以来、スタッフ全員が必修で取り組んでいる方法であり、みんなが一致して取り組んできたからこそ、今のねがいのいえの成功があると言って過言ではありません。

 最近うまくいかないケースが続いていることを相談すると、先生から、「思春期には長いトンネルに入るから、一度や二度のセッションで劇的に変わるとは思わずに、ねがいのいえの存在がみなさんにとって大きな支えとなっていることを感じてがんばってください」と言われました。

 また、「私たちは辛いことがあったとき、人に話を聞いてもらうことができる。何も言ってもらえなくても聞いてもらうだけで明日からまたがんばれる。でも言葉の話せない人はそんなことが出来ないから、暴れたりいろいろな行動を表します。セッションを通じて一緒にいる時間を過ごすことが、彼らにとっての、人に話を聞いてもらうということだから、言葉の話せない人たちにとっては、セッションに終わりは来ないのだと思って、長く付き合いましょう」と言われました。

 深く心に届く言葉です。

 国の政策では、行動障害への対応を学ぶために、行動援護の研修会というのをすすめていますが、それで本当に困っている人に対応できるのでしょうか?すべての施設職員に、この研修をすすめたいと、心から思います。

今日も感動

2008-09-20 00:03:13 | Weblog
 障害を持った方が働ける場作りを模索している折りに、見沼区で農作業をしているNPO法人さいたま自立就労支援センターの菅田さんに出会いました。

 今や全国至るところで問題になっている、跡継ぎのいない農家の耕作放棄地を借りて、荒地を開墾し畑を復活させるという地道な活動を続けてこられた方々です。そして素晴らしいのは、その仕事を、家を失い野宿の生活をされてきた人に提供し、住む場所を借りるお手伝いもして、自立生活を送れるように支援しているのです。すでに10数名の方が部屋を借りて毎日畑で汗を流していらっしゃいます。

 この作業を、次は障害を持つ方や、ひきこもりの方、ネットカフェ難民の方など、困難を抱えながら暮らしている人に提供していくのが目的なのだそうです。春にお会いしたときに、ねがいのいえが就労支援をおこなう際に、ぜひ一緒に作業をさせてくださいとお願いし、快諾していただきました。

 昨日、理事の鶴・永嶋の2名をつれて、再びお会いしました。

 ご自分は無報酬のまま数年間、わずかな助成金のみで少しづつ育てあげてきた大変な事業。ものすごいことをされているのに、世間話でもするかのように淡々と話される菅田さんのたたずまいが、私たちの心を震わせて、胸が温かさでいっぱいになりました。以前から障害者の方と仕事をするなら農業をしたいという思いを持っていましたが、実現させるのならぜひこの人と一緒にやりたい、と思いました。

 せっかく来たから持って行ってください、と言いながら、目の前の畑から切り集めてくれたいっぱいの茄子と、土から抜いてくださったねぎをいただき、帰ってきました。今日の食事でねぎのおいしさを味わい、今も一杯飲みながら焼き茄子をいただいています。実がしまり、かむと甘さが広がる、本当においしい茄子でした。

 世の中にはすごい人がいる。感動です。

東松山の曽根さん

2008-09-18 01:06:14 | Weblog
 キタフクオカソネゴローという、障害福祉界を引っ張ってきた有名人がいます。滋賀の北岡賢剛さん、長野の福岡寿さん、東松山の曽根直樹さん、元東久留米の根来正博さんの4人。日本の障害福祉政策がこの10年間で飛躍的に向上したのはこの4人の力が大きいというのは、この業界の誰もが認めるところです。

 その一角の曽根さんに、会いに行ってきました。

 上尾に「のっく」が誕生し、生活サポート事業が埼玉県の事業としてスタートした10数年前、埼玉が全国に名をとどろかすレスパイトの地として有名になった頃、「のっく」をはじめ数々の団体を見学に回ったときに、当時社会福祉法人昴でレスパイト事業をしていた曽根さんに初めてお会いしました。その後「ねがいのいえ」を始めましたが、ゆっくりお話しする機会はなく、正式にはおよそ10年ぶりの対面でした。

 東松山が、ノーマライゼーションの実現を掲げて当選した市長の後押しを受けこの数年で大きく成長した姿は、驚異的です。今日訪問したのは、その中でも特に、福祉計画を障害者に限定せずに、暮らしに不便を抱えるすべての市民に利用してもらえる「市民福祉プラン」として、一般の市民にも受け入れられる計画を進めてきたその内容を詳しくお聞きし、それをさいたま市の施策に提言できないかと考えたからでした。

 お話は大変興味深く、勉強になりました。やはり曽根さんはこの業界の巨人だと感じました。東松山とさいたま市では、市長の考えも違う、人口の規模も都市の成り立ちも違う、一概にまねから入ることはできませんが、現実に素晴らしい取り組みを実現している全国でも珍しい自治体がこんなにも近くに存在することは、私たちにもっともっとがんばらなければならないと励ましてくれます。

 現場に帰ってみると、本日は夏休みの打ち上げでみんなが集まっていました。ねがいのいえに集まる利用者のみなさんの魅力に魅かれ、仕事を楽しんでいるみんなの力を感じ、スタッフの素晴らしさを改めて感じました。

 困っている人が次々に訪ねてくる日々の中で、小さな団体ができることには限界があり、目指す頂上ははるか遠く感じますが、こんな素晴らしいスタッフに支えられていたら、頂上を目指して上っていける気がします。

最近の悩み

2008-09-17 01:47:06 | Weblog
 うなぎ様、さっそくのご投稿ありがとうございました。本当の思いをのせた言葉は深く心に届きます。障害という事実に向き合う当事者の体験を、私たちが軽々しくコメントすることはできません。私たちはあくまで、第3者という立場から支援する者です。そこのところを恐れずにあえてちょっと最近の悩みを語らせていただきます。

 最近ちょっと悩んでます。20年の経験の中から、ねがいのいえは、障害を持つ人の心のケアを一番大切にする場所にすることを目指してオープンしました。この5年間、スタッフは心のケアの研修を全員必修として、この道を究めることに取り組んできました。ここは単に生活支援や余暇支援をするだけの場所ではなく、障害を持って生きるみなさまのストレスや辛いところに寄り添い癒す場所となることを実践してきたから、利用者のみなさまの支持を受けてこられたのだと思っています。

 ところがこの夏、うまく癒しきれない方が数名続いています。

 はっきり言うと、他の場所、他の人の対応ではうまくいかない方たちも、ねがいのいえではうまく行動してくださっています。そしてそれは、私たちにとっては当たり前の仕事です。私たちが目指すのは、私たちと一緒にいるときの安定した行動が、他の場所や他の人、特にご家族といるときに出来るようになることが目標であり、そうなれるよう努めてきました。

 この夏休み、そこの部分がうまくいかない場面が続き、苦しんでいるみなさまの様子を見るのは私たちにとってもつらいことでした。私たちの責任を問う人はいませんが、自分たちが目指す頂上にまだまだ到達できない事実を感じています。

 私たちはあきらめません。言葉を話せないみなさまが、何に苦しみ、何を望んでいるのか本当の本心を知ることはできませんが、その様子から本音を推測し、当たらずとも遠くない、心の底で求めている願いに限りなく近づく支援ができると信じています。今のつらさを少しでも癒すことができたとき、うまくいかない行動も柔らかい空気に包まれて立派な個性と認められることができる。そう信じて、今日も明日も道を究められるよう努めます。

 うなぎ様、先日は急用ができてお会いできずに失礼いたしました。相談やお話などございましたら、またいらしてください。

素晴らしいつながり

2008-09-15 22:26:45 | Weblog
 さっそくながら、最近のエピソードを紹介します。先月の下旬に北海道に住む主婦の方から問い合わせがありました。ご主人が東京で手術をすることになり、5才で障害を持つお子さんと一緒に3人でさいたま市にある実家にしばらく滞在することになったとのこと。お子さんはふだん地元の療育に通われていますが、さいたま市の実家で過ごす間、母は病院で付き添わなければならず、かといって祖母だけでずっと世話をするのは大変なので、どこか預かって過ごしてくれるところを探しているという事情でした。

 さいたま市の方なら、日中一時支援か生活サポート事業で利用できるところですが、一時的な里帰りではさいたま市の制度は使えません。かと言って国の制度では、短期入所で施設に宿泊しなければなりません。この家族のニーズはあくまで日中の一時預かりであり、5才のお子さんが宿泊をする必要がありません。

 日中一時支援や移動支援などの本当に必要とされているサービスが、国の枠から外されて地域に投げられてしまった自立支援法の弊害は、こんな時にも国民を苦しめているのだと感じました。

 思案した結果、在住する北海道の市に事情を話し、緊急かつ特別な事情なので、ねがいのいえと市が取り急ぎ地域生活支援事業の契約を結んでいただけないかと相談しました。だめもとの交渉でした。すると。

 応対した市の担当者は、すぐに事情を理解され、すぐにメールで書類を送ってくださり、こちらが印鑑を押して速達で郵送するという方法で、なんと3日のうちに日中一時支援と移動支援の契約を結んでくれました。現在、緊急の支援を毎日実施しています。


 この話は感動的です。このような、市民への思いやりを持ち、迅速な対応をしてくださる役人が存在するという事実は、素晴らしいことです。私たちは今まで、困っている市民の方たちに替わって、いつも戦いとも言えるような折衝を繰り返してきましたが、そんな役人には本当に見習ってもらいたい話です。

 願わくば、他の事業所のかたも、同じように困ってる人が訪ねて来られたら、制度にないからではなく、ケースバイケースの対処を工夫して迅速に実行してくださることを望みます。ねがいのいえは決して一人勝ちをしたいわけではないので、みんなでがんばって、みんなで心地よい社会にしていきたいです。

 

ついに決意!

2008-09-15 12:58:21 | Weblog
 ITから縁遠い暮らしを送る自分が、ついに決意してブログを立ち上げました。世の中に言いたいことや、日々の感動など、人に伝えたいことを山ほど感じている毎日、どれだけ書けるかわかりませんが、力の限り書いてみたいと思います。読んでくださった方、何か感じたことがありましたら、遠慮なくご返信ください。