深い愛着を抱いた登場人物が突然亡くなるショックは大河ドラマの宿命だが、その悲しさに泣いてしまったのはいつ以来だろう。
30年前、「翔ぶが如く」で名もない若き書生を演じた堤真一が、今は貫禄の演技力で徳川の重鎮を演じた素晴らしい存在感。史実だから仕方ないが、これほど悲しかったストーリーは久しぶり。
30年前に観劇に凝っていた頃、銀座の博品館劇場で観た堤真一を思い出す。盲目なのにポジティブでひたむきな、はっちゃけた青年の役だった。同時に、一緒に行った友人が観劇前に博品館のおもちゃ売り場で欲しいと言ったダチョウのぬいぐるみを後日プレゼントしたことも思い出した。
私たちの人生は、そんな出来事の積み重ねで成り立っている。思い出の累積が人生そのもの。些細な出来事を見て悲しんだり感動したり、それにまつわる思い出を思い返したり、そんな人生の厚みを、支援者と呼ばれる私たちが、利用者のみなさまにその体験の機会を提供できているだろうかと、いつも考える。考え続けなければならない。
重度障害のみなさまに、東京フィルハーモニーと一緒に第九を歌ったり、ホノルルマラソンを完走したり、伊豆の遠洋で野生のイルカと泳いだり、などの機会を次々と創出していった師匠には、今も遠く及ばない。それらの体験のひとつひとつが、その方たちにとって大切な思い出になっているに違いない。
自分はこれだけのことを成し遂げましたと師匠に誇れる日が、いつか来るだろうか。